先に貧しく後に富む命を論ず
〈論命先貧後富〉
『紫微斗数全書』巻三・論命と行限・原文と現代語訳
はじめに
〈先に貧しく後に富む命を論ず〉は、一生の途中で起こる転換を、二種類の人をくらべて語っています。
一人目は富貴の家に生まれ、財も官も栄え、妻は誉れ高く子は貴いのに、途中で「人離財散,官非火盜,身喪家亡」となる人です。全書は、これは本命の問題ではなく、限が大限・小限と太歳の沖照する位置に来て、さらに凶煞が守っているために破れるのだとし、「不貧即損壽」、これを先に成って後に敗れる、先に大きく後に小さいと呼んでいます。
二人目は低い生まれで、手仕事や医術、農業で暮らし、若いころは苦労しますが、中年から晩年に平地から一気に上がり、郷里を驚かすほど財を成す人です。理由は、本命が中ほどの局で、のちに限が助け、星も吉曜に会って廟旺だったので、急に栄えたのだとし、これを先に貧しく後に富む、先に小さく後に大きいと呼んでいます。
この篇の要は「限」です。本命が格局を決め、運限が浮き沈みを決めるのです。
1人生於富貴之家,一生快樂享福,財官顯達,妻榮子貴,奴僕成行,聲名昭著。其間有半途遭傷,人離財散,官非火盜,身喪家亡,此等之命非命也。是限步逢大小二限及太歲相沖照,又加凶殺守臨,故此破敗,不貧即損壽也。所謂先成後敗,先大後小也。
書き下し人富貴の家に生まれ、一生快楽にして福を享け、財官顕達し、妻栄え子貴く、奴僕行を成し、声名昭著なり。其の間に半途にして傷に遭い、人離れ財散じ、官非火盗あり、身喪われ家亡ぶる有り、此等の命は命に非ざるなり。是れ限歩大小二限及び太歳の相沖照するに逢い、又凶殺の守臨を加う、故に此に破敗す、貧しからざれば即ち寿を損なうなり。所謂先に成りて後に敗れ、先に大にして後に小なり。
現代語訳富貴の家に生まれ、一生楽しく福を享け、財も官も栄え、妻は誉れ高く子は貴く、召使いが列をなし、名声も広く知られる人がいます。その中には、途中で痛手を受け、家族は離れ散り、財は散じ、訴訟や火事や盗難に遭い、自分は命を落とし、家は滅びる人もいます。こうした命は、本命のせいではありません。限が大限・小限の二つの限と太歳が互いに沖照する位置に来て、さらに凶煞が守り臨んでいるので、こうして破れるのです。貧しくならなければ、寿命を損ないます。いわゆる先に成って後に敗れ、先に大きく後に小さい、というものです。
- 限步
- 運限が巡ってきた宮。
- 大小二限
- 大限と小限。
- 太歲
- 流年。
この段は一つの実際的な問いに答えています。同じようによい命盤なのに、なぜ途中で落ちぶれる人がいるのか。全書の答えは「此等之命非命也」で、本命が悪いのではなく、運限に問題がある、つまり大限・小限と太歳が互いに沖照し、さらに凶煞が守っている、というものです。これは斗数の、「命」と「運」を分けて見るという基本の考え方です。本命は土台を決め、運限はいつ何に出会うかを決めます。星格の盤では、各宮の大限の年齢と、いま巡っている十年の大限が示されます。流年まで重ねれば、その年の流年四化や流年の擎羊・陀羅がどこに落ちるかも見られます。全書の〈二限と太歳の吉凶を論ず〉は、まさにこれらの層をどう重ねて見るかを語っています。
2又有人命出身微賤,營活生計,百工巧藝,九流醫術,又為農圃等輩,初歷艱辛度日。卻仍中末平地升騰,發財驚駭鄉邦,因生在中庸之局,後因限步相扶,星辰逢吉曜兼廟旺,以此突然發達進祿。所謂先貧後富,先小後大是也。
書き下し又人の命出身微賤にして、生計を営活し、百工巧芸、九流医術、又農圃等の輩と為り、初め艱辛を歴て日を度る有り。却って仍お中末に平地より升騰し、財を発して郷邦を驚駭す、中庸の局に生まるるに因り、後に限歩相扶くるに因り、星辰吉曜に逢い兼ねて廟旺なり、此を以て突然発達して禄を進む。所謂先に貧しく後に富み、先に小にして後に大なるは是れなり。
現代語訳また、生まれが低く、暮らしを立てるために、さまざまな手仕事や技芸、九流の医術などをし、あるいは農作や畑仕事をする人たちのように、はじめは苦労して日々を過ごす人もいます。それでも中年・晩年になると平地から一気に上がり、財を成して郷里を驚かせます。それは本命が中ほどの局に生まれ、のちに限が助け、星が吉曜に会い、しかも廟旺だったからで、そのために急に栄えて禄が入るのです。いわゆる先に貧しく後に富む、先に小さく後に大きい、というのがこれです。
- 百工巧藝
- さまざまな手仕事の技芸。
- 九流
- 広くさまざまな職業や方術を指します。
- 農圃
- 田畑を耕し、野菜を作ること。
前の段と逆の話です。生まれが低く、手仕事や医術・卜占、農業で暮らし、若いころは苦労したのに、中年から晩年に平地から一気に上がる人です。条件は二つあります。本命が「中庸之局」で、よくも悪くもないこと。のちに「限步相扶」、大限が吉曜で廟旺の宮に巡ってくることです。全書が、命が低ければ一生低いままだとは考えておらず、運限の働きはとても大きくなりうると見ていることがわかります。実際には、星格の盤で大限の年齢を順に追っていけば、どの十年の宮の主星が明るく、吉星や化禄があるかがわかり、それが身を起こせるかもしれない時期です。これは学堂の大限の課でも強調していることで、命盤は地図、大限はその人が地図のどの区域にいるかを示します。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
紫微斗数では、先に貧しく後に富む命をどう見ますか?
〈先に貧しく後に富む命を論ず〉は、本命が中ほどの局の人は若いころ苦労しても、のちに限が助け、星が吉曜に会って廟旺なら、中年以降に急に栄えるとし、これを「先貧後富,先小後大」と呼んでいます。
命のよい人が途中で破れるのはなぜですか?
全書はそれを「非命也」、つまり本命のせいではないとし、限が大限・小限と太歳の沖照する位置に来て、さらに凶煞が守っているために破れるのだと言います。貧しくならなければ寿命を損ない、これを「先成後敗」と呼んでいます。