大限十年の禍福を論ず
〈論大限十年禍福何如〉
『紫微斗数全書』巻三・論命と行限・原文と現代語訳
はじめに
〈大限十年の禍福を論ず〉は、巻三で運限を語る中心の篇です。大限は十年ごとに一つの宮を進むもので、この篇はその十年の吉凶をどう判断するかを説明しています。
基本の原則は簡単です。大限のある宮の星が吉で、廟旺・得地にあり、擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星がなければ、十年は穏やかで、人も財もそろいます。六煞星や化忌が連れ立っていれば、成功も失敗もあって一定しません。星が落陥の地にあって六煞星と化忌に会い、さらに流年の悪煞や小限の凶煞が寄り集まれば、「官災死亡立見」とされます。
続いて十二支ごとに論じます。寅・申・巳・亥・子・午に巡って、紫微星・天府星・天同星・太陽星・太陰星・昌曲・禄存星に会えば、人も財も栄え、家族が増えます。辰・戌・丑・未・卯・酉に巡って、廉貞星・天使・六煞星・化忌に会えば、酒色におぼれ、貧しく、生死にかかわります。後半は「夾限」の話です。大限・小限と太歳は、天傷・天使、地空・地劫、擎羊・陀羅に挟まれることをもっとも恐れ、天傷が子、天使が寅にあって歳限が丑にある例が挙げられています。最後に、凶の限に当たったら寿星を見ること(紫微星・天同星・天梁星・貪狼星が命宮に座れば解ける)、さらに大限・小限・太歳・月・日・時を合わせて照らし合わせることを説いています。
星格の大限の起点は全書と一宮ずれています。第1段の説明を見てください。底本の「辰戍」の「戍」は「戌」の誤りです。
1如宮分星纏全吉廟旺得地,無擎羊陀羅火鈴空劫者,主十年安靜,人財全美。若限內有擎羊陀羅火鈴空劫忌星為伴,成敗不一。如宮分星纏陷地,值擎羊陀羅火鈴空劫忌,又加流年惡殺湊合,及小限巡逢凶殺,則官災死亡立見。
書き下し如し宮分の星纏全く吉にして廟旺得地、擎羊陀羅火鈴空劫無き者は、十年安静、人財全く美なるを主る。若し限内に擎羊陀羅火鈴空劫忌星の伴と為る有れば、成敗一ならず。如し宮分の星纏陥地にして、擎羊陀羅火鈴空劫忌に値い、又流年の悪殺の湊合を加え、及び小限巡りて凶殺に逢えば、則ち官災死亡立ちどころに見わる。
現代語訳大限のある宮の星がすべて吉で、廟旺・得地にあり、擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星がなければ、この十年は穏やかで、人も財もすべてそろうことをつかさどります。もし限の中に擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・化忌が連れ立っていれば、成功も失敗もあって一定しません。もし宮の星が落陥の地にあり、擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・化忌に当たり、さらに流年の悪煞が寄り集まり、小限も巡って凶煞に会えば、訴訟や災いと死がたちまち現れます。
- 宮分
- 大限のある宮。
- 星纏
- 星躔。宮に座っている星。
- 得地
- 星が力を出せる位置。明るさは廟旺に次ぎます。
星格のやり方大限の起点について。全書は最初の大限を命宮の次の宮から起こします(陽男・陰女は順行、陰男・陽女は逆行)。星格は最初の大限を命宮そのものから数えます。そのため、同じ年齢で巡ってくる大限の宮は、星格のほうが全書の立て方より一宮手前になります。
この段は大限の吉凶を三段階で判断する基準を示しています。宮の星が吉で廟旺・得地、六煞星がなければ十年は穏やか。六煞星や化忌が連れ立っていれば成敗が一定しない。星が落陥のうえ六煞星と化忌に会い、さらに流年の悪煞と小限の凶煞が加わって、はじめて「官災死亡立見」に至る、というものです。要は、最後の段階が三つの層が同時に寄り集まることで、大限の宮だけが悪いからといってこう判断するのではない、という点です。星格の盤では、いま巡っている大限の宮が示されるので、その宮の主星の明るさと六煞星の有無を確かめます。くわしい盤には別に大限四化(大限の宮の十干による)もありますが、これは後世によく使われるようになった技法で、全書のこの段の化忌は生まれ年の化忌を指しています。星格の大限の起点が全書と一宮ずれていることは、上の「星格のやり方」のとおりです。全書の数え方で見たいときは、進む方向にもう一宮先へ進めてください。
2大限將出,有吉眾者無災悔,少者災多,損人破財不利。凡行至寅申巳亥子午宮,遇紫微天府天同太陽太陰昌曲祿存祿主吉星,主人財興旺,添丁進口之慶。
書き下し大限将に出でんとするに、吉衆き者は災悔無く、少なき者は災多く、人を損ない財を破り利あらず。凡そ行きて寅申巳亥子午宮に至り、紫微天府天同太陽太陰昌曲禄存禄主の吉星に遇えば、人財興旺、添丁進口の慶を主る。
現代語訳大限が終わりに近づくとき、吉星が多ければ災いも悔いもなく、少なければ災いが多く、人を損ない財を失い、不利です。寅・申・巳・亥・子・午の宮に巡って、紫微星・天府星・天同星・太陽星・太陰星・文昌星と文曲星・禄存星・化禄といった吉星に会えば、人も財も栄え、子が生まれ家族が増えるという慶びをつかさどります。
- 災悔
- 災いと悔い。
- 祿主
- ふつう化禄を指します。
- 添丁進口
- 家に子が生まれ、人数が増えること。
「大限將出」は十年が終わりに近づいた数年のことです。全書は、吉星が多ければ無事に次へ移れ、少なければ災いが多く、人を損ない財を失うとしていて、限の変わり目の前後は気をつけたい時期だということになります。後半は宮を十二支で組に分けています。寅・申・巳・亥と子・午の六宮で紫微星・天府星・天同星・太陽星・太陰星・昌曲・禄存星・化禄に会えば、人も財も栄えます。この組分けは変わっていて、卯・酉は子・午と同じ組ではなく、次の段で辰・戌・丑・未といっしょに挙げられています。星格の盤では各宮に大限の年齢の範囲が示されるので、二つの範囲の境目の年が限の変わり目です。たとえば一つの宮が25〜34歳、次の宮が35〜44歳なら、34歳から35歳にかけてが「將出」と「將入」の時期です。
3行至辰戍丑未卯酉,遇惡殺廉貞天使羊陀火鈴空劫忌星,主人酒色荒迷,貧乏死生。遇左右昌曲,仕宦遷官加職,士民生子發財,婦人喜事,僧道亦利,商賈得益。
書き下し行きて辰戍丑未卯酉に至り、悪殺廉貞天使羊陀火鈴空劫忌星に遇えば、人酒色に荒迷し、貧乏死生を主る。左右昌曲に遇えば、仕宦は遷官加職、士民は子を生み財を発し、婦人は喜事、僧道もまた利あり、商賈は益を得。
現代語訳辰・戌・丑・未・卯・酉の宮に巡って、悪煞・廉貞星・天使・擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・化忌に会えば、酒色におぼれてすさみ、貧しく乏しく、生死にかかわることをつかさどります。左輔星・右弼星・文昌星・文曲星に会えば、官に仕える人は昇進して職が加わり、士人や庶民は子が生まれて財を成し、女性には喜びごとがあり、出家した人にも利があり、商人は利益を得ます。
- 天使
- 雑曜。疾厄宮に固定して置かれ、古書では凶星とされます。
- 荒迷
- おぼれて、すさむこと。
校勘 「辰戍丑未」の「戍」は十二支の「戌」とすべきところです。
辰・戌・丑・未・卯・酉に巡って廉貞星・天使や六煞星・化忌に会えば、酒色におぼれ、貧しく、生死にかかわるとされ、もとの意味どおりならとても重い言葉です。けれども同じ段は、これらの宮でも左輔星・右弼星・文昌星・文曲星に会えば、かえって昇進し、子が生まれ、どの職業の人も利を得るとも言っています。十二支の組分けは背景にすぎず、吉凶を本当に決めるのはやはり星だということがわかります。天使は疾厄宮に固定された星なので、「大限が天使に会う」とは、大限が本命の疾厄宮に巡ることと同じです。星格の盤でも、天使は雑曜として表示されます。この段が廉貞星を六煞星と並べているのは、廉貞星を囚の星、次の桃花とみる全書の一貫した見方で、〈諸星同垣:廉貞星〉を見てください。
4凡大小二限及太歲,怕行天傷天使夾地,怕行天空地劫之地,怕行擎羊陀羅之地,及羊陀沖照,怕脫凶限,怕逢凶限,又怕傷使劫空羊陀並夾歲限。如天傷在子,天使在寅,歲限在丑宮,乃並夾也。
書き下し凡そ大小二限及び太歳、天傷天使の夾む地を行くを怕れ、天空地劫の地を行くを怕れ、擎羊陀羅の地を行くを怕れ、及び羊陀の沖照、凶限を脱するを怕れ、凶限に逢うを怕れ、又傷使劫空羊陀の並びて歳限を夾むを怕る。天傷子に在り、天使寅に在り、歳限丑宮に在るが如きは、乃ち並夾なり。
現代語訳大限・小限と太歳は、天傷・天使に挟まれた宮を行くことを恐れ、天空(地空星)・地劫星の宮を行くことを恐れ、擎羊星・陀羅星の宮を行くこと、擎羊星・陀羅星に沖照されることを恐れます。凶の限を抜けたばかりのときを恐れ、凶の限に会うことを恐れ、さらに天傷・天使、地劫・地空、擎羊・陀羅がそろって歳限を挟むことを恐れます。たとえば天傷が子に、天使が寅にあり、歳限が丑の宮にあれば、これが「並夾」です。
- 天傷
- 雑曜。奴僕宮に固定して置かれ、むなしい消耗をつかさどります。
- 歲限
- 太歳(流年)と限(大限・小限)。
- 並夾
- 二つの凶星が左右から同時に限の宮を挟むこと。
- 天空
- ここでは時系の地空星のこと。全書の「天空」は地空星を指し、盤上で生まれ年の十二支から置く雑曜の天空とは別の星です。
この段は歳限がもっとも恐れる状況を並べています。天傷・天使に挟まれる、地空・地劫の宮に行く、擎羊・陀羅の宮に行くか擎羊・陀羅に沖される、凶の限を抜けたばかりでまた凶の限に会う、などです。天傷・天使による夾には盤の立て方の上での決まりがあります。天傷は奴僕宮に、天使は疾厄宮に固定されていて、この二つの宮はちょうど遷移宮の両側にあるので、傷使が挟むのはいつも本命の遷移宮です。原文の例、天傷が子、天使が寅で丑を挟むのは、命宮が未、遷移宮が丑の盤です。言いかえれば、大限・小限・流年が本命の遷移宮に巡れば、それが傷使夾限です。〈空劫・傷使・博士十二神と雑曜の置き方〉も、身と歳限が傷使の間に挟まれるのを加夾地と呼んでいます。星格の盤でも、天傷・天使は雑曜として表示されます。
5羊陀守命尚且無用,況夾限乎,若逃得過須看壽星,紫微天同天梁貪狼坐命可解。更須看月值惡殺,日值惡殺,加湊大小歲月日時五者參詳吉凶推斷。
書き下し羊陀命を守るすら尚且つ用無し、況や限を夾むをや、若し逃れ過ぐるを得ば須らく寿星を看るべし、紫微天同天梁貪狼命に坐すれば解くべし。更に須らく月に悪殺に値い、日に悪殺に値うを看、大小歳月日時の五者を加湊して吉凶を参詳し推断すべし。
現代語訳擎羊星・陀羅星が命宮を守ることさえよくないのに、まして限の宮を挟むならなおさらです。もし逃れることができるとすれば、寿星を見なければなりません。紫微星・天同星・天梁星・貪狼星が命宮に座っていれば、解くことができます。さらに、月が悪煞に当たるか、日が悪煞に当たるかを見て、大限・小限・太歳・月・日・時の五つを寄せ合わせて吉凶を照らし合わせ、推し量って判断しなければなりません。
- 壽星
- 寿命を延ばすとされる星。ここでは紫微星・天同星・天梁星・貪狼星を指します。
擎羊星・陀羅星が限を挟むのは命宮を守るよりさらに凶だ、というのが全書の判断で、救いは「壽星」を見ることです。紫微星・天同星・天梁星・貪狼星が命宮に座っていれば解けます。この四つが選ばれた理由はこう理解できます。紫微星は帝王の星で煞を制し、天梁星は寿をつかさどって化気は蔭、天同星は化気が福です。貪狼星についても全書には「加吉坐長生,壽考永如彭租」(「彭租」は〈彭祖〉の誤り)という言い方があります(〈諸星同垣:貪狼星〉)。〈太微賦〉の「貪坐生鄉,壽考永如彭祖」も同じ考えです。条件は本命の命宮に座ることで、限の宮に座ることではありません。最後の句は、大小の限・太歳・月・日・時の五つを合わせて見よと言っていて、全書でもっとも細かい応期の見方です。星格では現在、大限・流年・流月の三層と小限を見ることができ、流日は毎日の運勢でだけ使っています。
6太歲行至奏書將軍直符天使天傷羊陀火鈴空劫忌星,逢一二位,主人離財散,疾病哭泣之兆。若歲限犯重月日一二位,又逢忌星合者,官吏遭謫,常人遭橫事,婦人損胎,病者死亡。若惡殺在不得地,如風雨暴過。
書き下し太歳行きて奏書将軍直符天使天傷羊陀火鈴空劫忌星に至り、一二位に逢えば、人離れ財散じ、疾病哭泣の兆しを主る。若し歳限重きを犯し、月日も一二位、又忌星の合するに逢う者は、官吏は謫に遭い、常人は横事に遭い、婦人は胎を損ない、病者は死亡す。若し悪殺不得地に在れば、風雨の暴かに過ぐるが如し。
現代語訳太歳が奏書・将軍・直符・天使・天傷・擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・化忌のある宮に巡り、その一つ二つにでも会えば、家族が離れ散り、財が散じ、病気や泣き悲しむことの兆しをつかさどります。もし歳限が重く犯され、月や日にも一つ二つ当たり、さらに化忌が会合すれば、官吏は左遷され、ふつうの人は思いがけない災難に遭い、女性は流産し、病人は死にます。もし悪煞が不得地にあれば、嵐がさっと通り過ぎるようなものです。
- 奏書將軍
- ここでは直符と並べられていて、巻二〈安流年神煞〉の「飛天三殺」(奏書・将軍・直符)を指します。博士十二神にも奏書・将軍がありますが、名前が同じでも使い方は別です。
- 直符
- 流年の神煞の名。
- 遭謫
- 官位を下げられ、遠方へ出されること。
- 損胎
- 流産。
この段は、太歳(流年)が凶神のある宮に巡る場合を語っています。奏書・将軍・直符の三つは全書が別に挙げる流年の三殺星で(〈流年神煞・斗君・空亡の置き方〉の飛天三殺の訣)、流年の十二支によって三合の宮に飛び入るもので、博士十二神の中の同じ名前の奏書・将軍とは別の体系です。星格の盤には飛天三殺は置いていないので、くわしい盤に見える奏書・将軍は博士十二神のほうで、そのまま当てはめないでください。後半の「惡殺在不得地,如風雨暴過」は目を留めたい句で、凶星が力の出ない位置にあれば凶事は来るのも去るのも速い、つまり軽くなる条件を示しているのです。女性の流産、病人の死といった判断はもとの意味のまま残しています。全書のこうした言い方は、極端な場合を並べたものです。
7若歲限臨無吉星,命中無救,其年難過必死。
書き下し若し歳限の臨むところに吉星無く、命中に救い無ければ、其の年過ぎ難く必ず死す。
現代語訳もし歳限の巡る宮に吉星がなく、命の中にも救いがなければ、その年は越えがたく、必ず死にます。
全書の運限の章の最後の一句で、歳限の宮に吉星がなく、本命にも救いの星がなければ、その年は越えがたく必ず死ぬ、とします。これはもとの意味どおりの判断で、条件は両方ともないことです。限の宮に吉がなく、命の中にも前の段の寿星やほかの化解がない、という場合です。全書には別に〈陰騭による延寿を論ず〉もあり、善行を積めば凶の限を延びて越えられると言っているので、二つは合わせて読む必要があります。今の盤の読み方として責任あるのは、運限からわかるのは、どの年に重圧がとくに大きく、体や安全にとくに気をつけるべきかということで、生死を判断するためのものではない、という態度です。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
紫微斗数で大限の吉凶はどう見ますか?
〈大限十年の禍福を論ず〉は、大限の宮の星が吉で、廟旺・得地にあり、六煞星がなければ、十年は穏やかで人も財もそろい、六煞星や化忌が連れ立っていれば成功と失敗が一定せず、星が落陥の地で六煞星と化忌に会い、さらに流年・小限の凶煞が寄り集まれば、官災、ひいては死があるとしています。
大限がどの宮に巡るとよいのですか?
全書は、寅・申・巳・亥・子・午の宮に巡って、紫微星・天府星・天同星・太陽星・太陰星・文昌星と文曲星・禄存星などの吉星に会えば、人も財も栄え、家族が増えるとしています。辰・戌・丑・未・卯・酉に巡って廉貞星・天使・六煞星・化忌に会えば、酒色におぼれ、貧しくなるとしています。
天傷・天使の夾限とは何ですか?
大限・小限・太歳のある宮の両隣が、それぞれ天傷と天使であることを夾限といいます。全書は、天傷が子、天使が寅にあり、歳限が丑の宮にあれば「並夾」で、もっとも恐れる形の一つだという例を挙げています。
凶の限に当たったら、救いはありますか?
全書は寿星を見るべきだと言っています。紫微星・天同星・天梁星・貪狼星が命宮に座っていれば、解くことができます。さらに大限・小限・太歳・月・日・時の五つをいっしょに照らし合わせるべきで、一つの限だけを見てはいけない、としています。
この篇に出てくる主星