太微賦

『紫微斗数全書』巻一・賦文・諸星問答と格局・原文と現代語訳

はじめに

〈太微賦〉は『紫微斗数全書』巻一の最初の篇で、対句で書かれた、書物全体の総論です。全篇は大きく二つに分けられます。

  • 前半(第1〜7段)は、命盤を読むときの心構えと順序です。まず斗数は「至玄至微」で語り尽くせないと認め、次に命宮と身宮を「福德之本」とし、星が入廟しているか度を失っているか、相生か相剋かを見るよう説きます。最後に「不察其機,更忘其變」なら読み解けないと戒めます。
  • 後半は「例曰」から始まる、経験則の長い列挙です。禄馬、日月、輔弼、魁鉞と続き、その多くが後に格局の名前になりました。君臣慶会、善蔭朝綱、日麗中天、水澄桂萼、馬頭帯剣などです。巻三もこのうちの多くの句を取り上げて注を付けていて、このページの注でもあわせて引いています。

読むときに気をつけたい点が二つあります。一つ目は、賦の文はとても簡潔で、同じ字にいくつもの読み方があることです(「刑」「耗」「暗」「善福」はどれも星の化気による呼び名です)。一般的な読み方と説の分かれ目は注で説明します。二つ目は、後半にとても重い断定が多いことです。たとえば「路上埋屍」「終身鼠竊」「必定死亡」で、現代語訳は原文どおりに直訳し、飾りません。これらは昔の人が一つの組み合わせについて下した断定なので、読むときは命盤全体の中に戻して見る必要があります。

1斗數至玄至微,理旨難明,雖設問於百篇之中,猶有言而未盡,至如星之分野,各有所屬,壽夭賢愚,富貴貧賤,不可一概論議。

書き下し斗数は至玄至微にして、理旨明らかにし難し。問いを百篇の中に設くといえども、なお言いて未だ尽くさざる有り。星の分野の如きに至りては、各属する所有り。寿夭賢愚、富貴貧賤、一概に論議すべからず。

現代語訳斗数はこのうえなく奥深く精妙で、その道理ははっきり説明しにくいものです。百篇にわたって問答を設けても、なお言い尽くせないところがあります。星がそれぞれ受け持つ範囲については、どの星にも属するところがあります。人の寿命の長短、賢いか愚かか、富貴か貧賤かは、一概に論じることはできません。

斗數
紫微斗数のこと。生まれた年・月・日・時から星を配置して命を論じる術数です。
分野
古代の天文学で、天の星の区域を地上の州や国に対応させたこと。ここでは各星が受け持つ範囲のたとえです。
解説

巻頭の一句は、まず限界から語ります。斗数は語り尽くせず、寿夭賢愚、富貴貧賤は「不可一概論議」とします。この句は書物全体の読み方の説明でもあります。この後の賦の文の多くは一つの組み合わせについての断定で、たとえば「七殺廉貞同位,路上埋屍」がそうです。作者は最初に、一句で一人の人を決めつけてはいけないと念を押しているのです。「星之分野」は天文の言い方を借りたもので、天の星の区域が地上の州や国に対応するように、斗数では星がそれぞれ人生の一部分を受け持ちます。だから星は必ず、それが座る宮と一緒に読みます。命盤を学ぶ人はこの句を総則にするとよいでしょう。重い言葉を見たら、まずその星がどの宮にあり、隣に誰がいて、運限がどこに来ているかを確かめてから判断します。命盤全体を一緒に読むの課がまさにこの話です。

✎ メモ

2其星分布一十二垣,數定乎三十六位,入廟為奇,失度為虛,大抵以身命為福德之本,加以根源為窮通之資。

書き下しその星は一十二垣に分布し、数は三十六位に定まる。入廟を奇と為し、失度を虚と為す。大抵、身命をもって福徳の本と為し、加うるに根源をもって窮通の資と為す。

現代語訳これらの星は十二の垣に分布し、数の理は三十六の位に定まっています。星が入廟すれば際立ち、あるべき度を失えば虚ろになります。おおむね命宮と身宮を福の根本とし、そのうえに根源(生まれつきの土台)を加えて、一生の順逆を判断する拠りどころとします。

垣
星のある宮。昔の人は十二宮を十二の城壁にたとえました。
失度
星があるべき、力を出せる位置にないこと。「入廟」の反対で、後にいう落陥に近い意味です。
根源
一般には生まれつきの土台、たとえば生まれ年の干支と解します。
窮通
窮は行き詰まって志を得ないこと、通は順調に開けること。
解説

この段は三つのことを述べています。一つ目は全体の枠組みで、星は十二宮に分布しています。「三十六位」は一般に、十二宮をそれぞれ上中下の三等に分けたもの、あるいは星の位置の総数を漠然と指すと解されていて、説が分かれます。二つ目は星の強弱で、入廟なら際立ち、失度なら虚ろです。これが後に輝度の等級に発展しました。星格の盤で主星の横に付いている小さな字(廟・旺・得・利・平・不・陥)がそれです。三つ目は主と従で、命宮と身宮を本とし、そのうえで「根源」を見ます。実際に盤を読む順序もこの句に沿えます。まず命宮と身宮がどの二つの宮にあるかを探し、どの星が座り、輝度はどうかを見ます。それから生まれ年の干がもたらす生年四化に戻ります。これが昔の人の言う生まれつきの土台です。

✎ メモ

3星有同躔,數有分定,須明其生剋之要,必詳乎得垣失度之分。

書き下し星に同躔有り、数に分定有り。須らくその生剋の要を明らかにし、必ず得垣失度の分を詳らかにすべし。

現代語訳星には同じ所に並ぶことがあり、命数にはそれぞれ定まった分があります。星どうしの相生・相剋の要点を必ずはっきりさせ、星が得垣か失度かもきちんと見分けなければなりません。

躔
日・月・星が運行して位置する所。「同躔」はいくつかの星が同じ宮にあることです。
生剋
五行どうしの相生と相剋。
得垣
星が自分に合った宮にあること。「失度」の反対です。
解説

「同躔」はいくつかの星が同じ宮にあること、「生剋」は星と宮の五行の関係です。この句は、盤を読むときに二つのことを同時に見るよう求めています。星と星の相性がよいか、星の落ちた場所が合っているか、です。たとえば天機星は木に属し、水の宮である亥・子にあれば、水が木を生むので生を得たことになります。武曲星は金に属し、木の宮である寅・卯にあれば、金が木を剋すので剋出と言われ、力が割り引かれます。星格は五行の生剋を別に表示していませんが、輝度の表そのものがこうした考慮をおおむね織り込んでいます。実際に盤を読むときは、同宮する星をそれぞれの輝度で見て、五行が剋し合う組み合わせ(たとえば火性の廉貞星と金性の七殺星)には特に注意します。全書の後半に出てくる凶の断定の多くは、こうした組み合わせから来ています。

✎ メモ

4觀乎紫微舍躔,司一天儀之象,率列宿而成垣,土星苟居其垣,若可移動,金星專司財庫,最怕空亡。

書き下し紫微の舎躔を観るに、一天儀の象を司り、列宿を率いて垣を成す。土星苟もその垣に居れば、移動すべきが若し。金星は専ら財庫を司り、最も空亡を怕る。

現代語訳紫微星の位置を見ると、天の姿全体を司り、多くの星を率いて垣をなしています。土星がもし自分の垣に座れば、まるで(星々を)動かせるかのようです。金星はもっぱら財の蔵を司り、空亡に落ちるのをいちばん恐れます。

舍躔
星がとどまり、位置する所。
土星
紫微星は五行が土なので、一般に紫微星そのものと解します。「若可移動」は言葉が簡略で、ここでは次の句「帝星動則列宿奔馳」に沿って理解していますが、説は分かれます。
金星
五行が金の星。一般に武曲星と解します(武曲星は金に属し、化気は財です)。
空亡
旬空・截空のような「空」の位置。星がここに落ちると力が浮つき、形になりにくいとされます。
解説

この段の「土星」「金星」は天文学の惑星ではなく、五行で斗数の星を呼んだものです。紫微星は土、武曲星は金に属します。紫微星が「率列宿而成垣」というのは、帝王の星はついてくる星があってはじめて局をなすということで、後に出てくる「紫微天府全依輔弼之功」の伏線にもなっています。武曲星は化気が財で、財の蔵を司り、空亡をいちばん恐れます。財の星が空に落ちると、財があっても蓄えられないからです。星格の盤では、武曲星の宮に旬空・截路・空亡といった雑曜があるか、地空星・地劫星が同宮しているかで「空亡」を見られます。〈太微賦〉のこの句は、後の〈形性賦〉にも響いていて、「財源かえって空亡に逢うを怕る」と書かれています。

✎ メモ

5帝星動則列宿奔馳,貪守空而財源不聚。

書き下し帝星動けばすなわち列宿奔馳し、貪、空を守れば財源聚まらず。

現代語訳帝王の星が動けば、多くの星がそろって駆け回ります。貪狼星が空亡の地を守っていると、財源が集まりません。

列宿
多くの星。
解説

前半は紫微星の影響力を言っています。帝王の星のある宮に動きがあると(たとえば運限が巡ってくる、四化が引き動かす)、盤全体の星がそろって反応するので、盤を読むときはよく紫微星の位置を軸にします。後半の「貪守空」は、化気が桃花で、欲望と交際もつかさどる貪狼星が空亡に入ると、つかもうとするものがつかめず、昔の人はこれを財源が集まらないと言いました。「あなたの命盤」の照合では、空亡を地空・旬空・截路・空亡のどれか一つまで広げていて、盤上でそのどれかが同宮すれば該当とします。現代の読み方では、チャンスも考えも多いけれど形にしにくいので、お金の管理には特に規律が要る、ということになります。全書巻三の〈貪狼星の同垣〉にも、貪狼星が空や煞に会う断定がいくつもあるので、あわせて読むとよいでしょう。

✎ メモ

6各司其職,不可參差。

書き下し各その職を司り、参差すべからず。

現代語訳星はそれぞれ自分の職務を司り、乱れてはなりません。

解説

わずか八文字ですが、星を読むときの基本の姿勢です。どの星にも自分の受け持ちがあり、ある星の性質で別の星を読んではいけません。紫微星は尊さ、天府星は財の蔵、天機星は策略、太陽星は名声を受け持ち、それぞれ別々です。四化も同じで、化禄は財、化権は権力、化科は名声、化忌は妨げを受け持ちます。初心者に多い間違いは、吉星を見れば何もかもよく、煞星を見れば何もかも悪いと読むことです。この句の考え方に沿えば、問うべきなのは、この星がこの宮で何を受け持っているかです。たとえば武曲星が夫妻宮にあれば、そこで語られるのは付き合い方であって、金運ではありません。

✎ メモ

7苟或不察其機,更忘其變,則數之造化遠矣。

書き下し苟も或いはその機を察せず、更にその変を忘るれば、すなわち数の造化遠し。

現代語訳もし要となるところを見抜けず、そのうえ変化することを忘れてしまえば、斗数の造化の理からは遠く離れてしまいます。

機
要、かなめ。
解説

「機」は要、「変」は変化です。前半は動かない命盤のこと、後半は動いていく運のことを言っています。同じ組み合わせでも、四化や運限に出会えば結果が変わります。これは全書が繰り返し念を押している点で、〈斗数発微論〉の「行限弱地に逢うも未だ必ずしも災いと為さず」も同じ道理です。静かな盤の弱さが、そのまま動いたときの凶になるわけではありません。星格では本命盤は土台にすぎず、「変」を見るには大限や流年を重ねた盤を開いて、どの年にどの宮が化忌に衝かれ、どの宮が化禄に引き上げられるかを見る必要があります。本命盤だけで結論を出すことこそ、この句の言う「數之造化遠矣」です。

✎ メモ

例曰

9祿逢沖破,吉處藏凶。馬遇空亡,終身奔走。

書き下し禄、沖破に逢えば、吉処に凶を蔵す。馬、空亡に遇えば、終身奔走す。

現代語訳禄の星が沖破に会うと、吉の中に凶が潜みます。天馬星が空亡に会うと、一生走り回って苦労します。

祿
禄存星のこと。化禄を指すこともあります。
沖破
対宮や三方から煞星や化忌が衝いてきて、もともとの恵みを壊すこと。
馬
天馬星。移動と変動をつかさどります。
解説

二句とも「よいものが割り引かれる」話です。禄(禄存星または化禄)は福分で、対宮や三方から化忌・擎羊星・陀羅星に衝かれるのをいちばん嫌うので、吉の中に凶が潜むと言います。財やチャンスはあっても、損失やもめごとがついてくるということです。天馬星は移動をつかさどり、旬空・截空のような空亡に入ると「死馬(しば)」と呼ばれ、動いても空振りに終わるので、一生走り回ることになります。星格の禄逢沖破格はどの宮でも判定しますが、見るのは化禄が化忌に会う場合(同宮、または対宮から衝く)だけで、擎羊星・陀羅星による沖破や禄存星は含めません。この句が言っているのは命宮のことで、財帛宮や官禄宮の禄の星も同じ目で見る必要があります。現代の読み方では、前の句は稼げても手元に残らない、あるいは利益と一緒に面倒が来ること、後の句はよく環境を変えるのに望んだ結果にたどり着けないことです。

✎ メモ

10生逢敗地,發也虛花。絕處逢生,生花不敗。

書き下し生まれて敗地に逢えば、発するも虚花なり。絶処に生に逢えば、生花敗れず。

現代語訳敗地に生まれると、たとえ栄えても、実を結ばない仇花にすぎません。絶地で生気に出会えば、咲いた花はしおれません。

敗地
一般に長生十二位の沐浴(「敗」とも呼びます)と解します。気がここで散って集まりません。
絕處
長生十二位の「絶」。気がいちばん弱い所です。

星格のやり方長生十二位の進む向きについて、全書は男命は順に、女命は逆に数えるとしています。星格は陰陽と男女で順逆を決める(陽男・陰女は順、陰男・陽女は逆)ので、盤上の敗地・絶地は全書どおりに並べた場合と違うことがあります。

解説

この対句が使っているのは長生十二神です。長生・沐浴・冠帯・臨官・帝旺・衰・病・死・墓・絶・胎・養の十二で、「敗地」は沐浴(「敗」とも言います)、「絶」は気がいちばん弱い所です。前の句は、命宮や主星が沐浴にあると、栄えることはできても長続きしないということ、後の句は、絶地にあっても生かし支えるもの(たとえば吉星や化禄)に出会えば、かえって根が固まるということです。星格の盤では各宮の下に長生十二神が示されているので、そのまま探せます。この対句の道理は「出発点が低くても支えがある人は、出発点が浮ついた人より安定する」というもので、人生の浮き沈みを考えるうえで興味深いものですが、主星や四化ほどの重みはないので、これだけで物事を判断するのは控えたほうがよいでしょう。

✎ メモ

11星臨廟旺,再觀生剋之機。命坐強宮,細察制化之理。

書き下し星、廟旺に臨むも、再び生剋の機を観よ。命、強宮に坐するも、細かに制化の理を察せよ。

現代語訳星が廟旺の地にあっても、さらに相生・相剋の要を見なければなりません。命宮が強宮にあっても、牽制と化解の理を細かく調べなければなりません。

強宮
力のある宮。賦の文にはどの宮かが書かれていません。〈諸星問答論〉は遷移宮を強宮としています。
制化
制は押さえること、化は和らげて解くこと。星と星の間の牽制と調和です。
解説

この句は第3段を受けて、「廟旺は結論ではない」ともう一度言っています。星が廟旺なのはよい出発点ですが、同宮や対宮の星と五行が剋し合ったり、化忌や煞星がついたりすれば、その良さは打ち消されます。命宮が「強宮」にあっても、牽制したり和らげたりする星が来ているかを見る必要があります。どの宮が強宮かについて、全書の〈命主身主と起例雑説〉は、男命では財帛・官禄・福徳・遷移・田宅を強宮とし、〈問紫微〉は遷移だけを強宮としています。現代の読み方では、条件のよい人にも死角があり、条件の悪い人も支えられて立ち上がることがある、ということです。盤を読む順序としては、まず輝度、次に四化、次に六煞星、最後に和らげる吉星があるかを見て、第一歩で止まらないようにします。

✎ メモ

12日月最嫌反背,祿馬最喜交馳。

書き下し日月は最も反背を嫌い、禄馬は最も交馳を喜ぶ。

現代語訳太陽星と太陰星は反背をいちばん嫌い、禄存星と天馬星は交馳をいちばん喜びます。

反背
太陽星と太陰星がどちらも光を失う位置にあること。太陽星が夜の宮に、太陰星が昼の宮にある状態です。
交馳
禄と馬が互いに出会うこと。昔の人は動く中で財を得ると読みました。
解説

日月反背は、太陽星が夜の宮(おおよそ戌・亥・子・丑)に、太陰星が昼の宮(おおよそ辰・巳・午・未)にあり、どちらも光を失っている状態です。昔の人は太陽と月を一つの盤の明暗の軸と考え、二つそろって落陥すると、苦労が多く、親との縁が薄く、名声も利益も表に出にくいとしました。禄馬交馳は、禄存星(または化禄)と天馬星が出会い、動く中で財を生むことです。星格の日月反背は命宮だけで判定し(太陽星・太陰星がどちらも光を失い、しかもどちらも命宮の三方四正にある場合)、禄馬交馳はどの宮でも見ます。ただし巻三の〈太陰星の同垣〉は自ら「若し外に出でて宗を離れ家を成さばまた吉、概して反背をもって論ずるなかれ」と補い、さらに昼生まれか夜生まれかも見るよう言っています。反背を見たらすぐ凶と決めつけないようにしましょう。

✎ メモ

13倘居空亡,得失最為要緊。若逢敗地,扶持大有奇功。

書き下し倘し空亡に居れば、得失最も要緊と為す。若し敗地に逢えば、扶持大いに奇功有り。

現代語訳もし空亡にあるなら、得るか失うかがいちばんの要です。もし敗地に会うなら、支える星があれば思いがけない大きな効果があります。

解説

この句は、前に出てきた「空亡」と「敗地」という二つの考え方を一歩進めています。空亡にあるときは、得るか失うかの間でどう取捨するかが要になり、敗地にあるときは、支えがあるかどうかが要になります。言い換えれば、空亡も敗地もそれ自体は結論ではなく、ほかの星が局面を変えるかどうかを見る必要があるということです。盤を読むときは、ある宮に旬空や截空があれば、三方四正から化禄・化権、あるいは左輔・右弼、天魁・天鉞が照らしているかを見ます。長生十二神が沐浴にあるときも同じことを見ます。いまの目で読むととても実際的で、環境が不利なときほど、助けてくれる人と資源の働きが大きい、ということです。

✎ メモ

14紫微天府全依輔弼之功,七殺破軍專依羊鈴之虐。

書き下し紫微天府は全く輔弼の功に依り、七殺破軍は専ら羊鈴の虐に依る。

現代語訳紫微星と天府星は、まったく左輔星・右弼星の補佐に頼って事を成します。七殺星と破軍星は、もっぱら擎羊星・鈴星に頼って凶暴さをふるいます。

輔弼
左輔星と右弼星。二つの助けの星です。
羊鈴
擎羊星と鈴星。煞星です。
解説

この句は〈太微賦〉の中でもとりわけよく引かれる原則の一つです。紫微星と天府星は北斗・南斗の主星で地位が高いのですが、「臣のいない帝王」では孤立した君主になってしまうので、左輔星・右弼星が三方四正や同宮から助ける必要があります。七殺星と破軍星は先陣を切る星で、擎羊星や鈴星のような煞星に会うと勢いが凶暴さに変わり、事故を起こしやすくなります。盤を読むときは、紫微星や天府星が命宮にあればまず左輔・右弼が三方四正にあるかを数え、七殺星や破軍星が命宮にあればまず擎羊星・鈴星が同宮や会照していないかを見ます。星格の殺破狼や孤君格もこの句と照らし合わせて読めます。

✎ メモ

15諸星吉,逢凶也吉。諸星凶,逢凶也凶。

書き下し諸星吉なれば、凶に逢うも吉。諸星凶なれば、凶に逢うもまた凶。

現代語訳全体の星が吉なら、凶星に会ってもやはり吉です。全体の星が凶なら、凶星に会えばやはり凶です。

解説

これは全書のとても大事な「全体を見る」原則です。吉星が多い盤なら、ときどきの煞星は小さなつまずきで済み、凶星が多い盤なら、凶星がもう一つ来ると泣きっ面に蜂になります。これは現代の考え方にとても近く、全体の条件がよい人は困難にぶつかっても対応する余力があり、全体の条件が悪い人は一度の打撃で崩れることがある、ということです。盤を読むときは、まず命宮と三方四正の吉星(左輔・右弼、文昌・文曲、天魁・天鉞、禄存、化禄・化権・化科)と煞星(擎羊・陀羅・火星・鈴星・地空・地劫、化忌)をそれぞれ数え、全体がどちらに傾いているかを見てから、一つ一つの星を読みます。

✎ メモ

16輔弼夾帝為上品,桃花犯主為至淫。

書き下し輔弼、帝を夾むを上品と為し、桃花、主を犯すを至淫と為す。

現代語訳左輔星と右弼星が紫微星を挟むのは上等の格局です。桃花の星が帝王の星を犯すのは、このうえなく淫らな組み合わせです。

夾
ある宮の左右の隣の宮にそれぞれ星があり、その宮を間に挟むこと。
帝
帝王の星、つまり紫微星。
桃花犯主
桃花は貪狼星(化気が桃花)、主は帝王の星である紫微星のこと。一般に紫微星と貪狼星の同宮と解します。
解説

前の句の「輔弼夾帝」は、左輔星と右弼星が紫微星のある宮の両隣にそれぞれあって帝王の星を挟むことで、最もよい補佐の格局の一つです。星格の左右夾格と照らし合わせられます。後の句の「桃花犯主」は、化気が桃花の貪狼星が紫微星と同宮することで、これは卯・酉の二宮でしか起こりません。全書は紫微星と貪狼星の同宮をとても低く評価していて、〈紫微の主るところを問う〉でも紫微星について「若し桃花と会すれば、飄蕩して風塵に落つ」と言っています。この組み合わせは感覚と楽しみを重んじ、異性との縁が強いということです。本当に放埒に流れるかどうかは、化忌・擎羊星・陀羅星が会しているかを見る必要があり、化科や文昌星・文曲星に会えば、芸術や社交の才能に転じることが多くなります。

✎ メモ

17君臣慶會,材善經邦。

書き下し君臣慶会すれば、材、善く邦を経む。

現代語訳君臣慶会の人は、国を治められるだけの才能があります。

君臣慶會
巻一〈定貴局〉の定義は「紫微と左右と同じく命を守る」で、紫微星と左輔星・右弼星がそろって命宮にあることです。
經邦
国を治めること。

星格のやり方星格の君臣慶会はゆるめに判定します。紫微星が命宮にあり、左輔星・右弼星がどちらも命宮の三方四正に入っていれば該当とします。全書〈定貴局〉は左輔・右弼がそろって命宮にあることを求めていて、条件はより厳しくなっています。

解説

「君臣慶會」は紫微星が左輔星・右弼星の補佐を得る格局で、紫微星が君、左右が臣です。全書〈定貴局〉の定義は左右が一緒に命宮を守ることで、さらに「更に相武陰に会すれば妙上」とも言っていて、星格のゆるい判定よりずっと厳しい条件です。巻三〈天府星の同垣〉では、天府・天相・天梁が同じくする場合も君臣慶会と呼んでいて、名前が二通りに使われています。現代に引き直すと、経営ができ、人を率いることができ、事業の規模が大きく、管理職や公職に向いているということです。ただし注意点があります。紫微星そのものが擎羊星・陀羅星・化忌に会っている場合や、左右が三方にあるだけで同宮していない場合は、重みを下げて読む必要があります。

✎ メモ

18魁鉞同行,位居臺輔。

書き下し魁鉞同行すれば、位、台輔に居る。

現代語訳天魁星と天鉞星がそろって命宮を照らすと、地位は宰相や君主を補佐する大臣の位にまで上ります。

魁鉞
天魁星と天鉞星。二つの貴人の星です。
臺輔
宰相や三公のような、君主を補佐する大臣。
解説

天魁星と天鉞星は一対の貴人の星で、どちらも生まれ年の十干で配置され(たとえば甲・戊・庚年なら天魁は丑、天鉞は未)、決して同宮しません。だから「同行」は、一つが命宮に座り、もう一つが三方四正から照らす形しかありえません。昔の人は「位居臺輔」、つまり地位が宰相・補佐大臣の位にまで上ると言いました。引き立て、チャンス、試験運、力のある目上や上司との出会いです。全書には〈天魁天鉞を問う〉という専門の篇もあります。盤を読むときは、魁鉞が照らしている命宮に主星があるかを見ます。命宮が空宮で魁鉞だけに頼っているなら、力は限られます。

✎ メモ

19祿文拱命,貴而且賢。

書き下し禄文、命を拱すれば、貴にしてかつ賢なり。

現代語訳禄の星と文の星が三方から命宮を拱照すれば、地位が高く、しかも賢明です。

祿文
禄は禄存星または化禄、文は文昌星・文曲星。
拱
三合の宮から照らしてくること。
解説

「祿文拱命」は、禄存星または化禄と、文昌星または文曲星が、三方(財帛宮・官禄宮・遷移宮)から命宮を照らすことです。禄は財と福を、文は学問と名声をつかさどり、両方がそろって命宮を照らすので、地位が高く、しかも賢明、つまり地位と教養をあわせ持つと言います。この句の条件はゆるいので、読むときは軽重を分けます。禄と文が三方の同じ一宮にあって照らすほうが、別々の宮に散らばっているより力があります。さらに化科に会えば、名声がいっそう表に出ます。ご自分の盤で命宮の三方四正にあたる四つの宮を拾えば、これらの星がどの宮にあるかをそのまま数えられます。

✎ メモ

20日月夾財,不權則富。

書き下し日月、財を夾めば、権ならざればすなわち富む。

現代語訳太陽星と太陰星が財を挟めば、権力を握るのでなければ、富を得ます。

日月夾財
巻三の注は「財帛宮未に在りて天府星守り、日は午に在り月は申に在りて財を夾むが如き是れなり」とし、巻一〈定富局〉は「武、命を守り日月来たりて夾む是れなり、財帛宮もまた然り」としていて、財は武曲星を指すこともあります。
解説

「日月夾財」には二つの解釈があり、全書自身が両方を示しています。巻三は財帛宮が太陽星と太陰星に前後から挟まれることとし、〈定富局〉は武曲星(財の星)が命宮を守り、太陽と太陰が挟みに来ることとしています。実際の配置では、太陽星と太陰星が一つの宮を両隣から挟めるのは丑と未の二宮だけで、その宮に座るのは天府星か、武曲星と貪狼星のどちらかです。だから二つの解釈はどちらも盤上で成り立ちます。「不權則富」は、太陽と月の光が財を照らすので、権力か富の少なくとも一つは手に入るということです。盤を読むときは太陽星・太陰星それぞれの輝度に注意します。挟む太陽星と太陰星がどちらも落陥なら、挟む力は弱くなります。

✎ メモ

21馬頭帶劍,鎮衛邊疆。

書き下し馬頭に剣を帯ぶれば、辺疆を鎮衛す。

現代語訳馬頭帯剣の人は、辺境を鎮め守ることができます。

馬頭帶劍
午は十二支で馬にあたり、擎羊星は羊刃とも呼ばれます。擎羊星が午にあるのを、馬の頭に刀剣を帯びている姿に見立てています。星格の格局ページでは馬頭帯箭と書いています。
邊疆
国境の辺地。辺境を鎮め守るとは、危険な地で手柄を立てる武将のことです。

星格のやり方全書自身に二つの定義があります。巻一〈定貴局〉は「馬に刃有るを謂うなり、午に居る格にあらず」と言い、巻三は擎羊星が午にあることを馬頭帯剣としています。星格は巻三に従い、擎羊星が天同星または貪狼星と一緒に午宮で命宮に座る場合にだけ示します。

解説

「馬頭帶劍」には全書に二つの定義があり、それは上の「星格のやり方」で説明しました。ここでは昔の人の理屈を補います。擎羊星は刑の星で金に属し、午宮は火に属します。火が金を剋すので、擎羊星は午で押さえられて落陥し、凶の性質が抑えられて武勇に転じます。だから辺境を鎮め守れる、危険な地で手柄を立てる格局とされるのです。同じ句が〈斗数骨髄賦〉では「夭折にあらざればすなわち刑傷を主る」と書かれていて、良し悪しは吉星に会うかどうかで分かれます。いまの暮らしに置き換えると、高いリスクや強いプレッシャーのある職業、たとえば軍や警察、外科、危機対応に向いています。吉星が少なく煞星が多いときは、事故やけがに注意が必要です。

✎ メモ

22刑囚夾印,刑杖惟司。

書き下し刑囚、印を夾めば、惟だ刑杖を司る。

現代語訳刑囚夾印の人は、もっぱら刑罰のことを司ります。

刑囚夾印
刑は擎羊星(化気が刑)、囚は廉貞星(化気が囚)、印は天相星(化気が印)。巻一〈定貴局〉は別に「天刑廉貞同じく身命に臨めば武勇の人を主る」と言っています。
刑杖
昔の、杖で人を打つ刑罰。ここでは刑罰一般を指します。

星格のやり方星格は刑囚夾印を、廉貞星・天相星・擎羊星が同じ宮にあるかで判定します。全書〈定貴局〉の定義は天刑と廉貞が一緒に身命に臨むことで、両者は異なります。

解説

刑は擎羊星、囚は廉貞星、印は天相星です。名前は「夾印」ですが、二通りの読み方があります。一つは廉貞星と天相星が同宮し(子・午の二宮だけ)、擎羊星が同宮するか隣にある形、もう一つは擎羊星と廉貞星が天相星の両側に分かれて挟む形です。星格は同宮で判定しています。全書〈定貴局〉は「天刑廉貞同じく身命に臨む」を使い、さらに「武勇の人」をつかさどるとしていて、ここでの刑罰の意味とは方向が違います。「刑杖惟司」は二通りに読めます。昔なら刑罰を司る役人でもあり、刑を受ける人でもあります。法律・規律・懲戒にかかわる職業、あるいは一生のうちに訴訟やもめごとに巻き込まれやすいことで、どちらの面になるかはほかの星で決まります。

✎ メモ

23善蔭朝綱,仁慈之長。

書き下し善蔭朝綱は、仁慈の長なり。

現代語訳善蔭朝綱の人は、慈しみ深い年長者です。

善蔭
善は天機星の化気、蔭は天梁星の化気。天機星と天梁星の同宮を指します。
朝綱
朝廷の綱紀。
解説

天機星は化気が善、天梁星は化気が蔭で、二つの星が同宮するのは辰・戌の二宮だけです。これが善蔭朝綱です。天機星は知恵と策略、天梁星は庇護と原則をつかさどり、合わせると知恵があって人の面倒もよく見る年長者の姿になるので、「仁慈之長」と言います。巻三〈天機星の同垣〉は「機梁会合すれば善く兵を談ず」と言っていて、聡明なうえに議論好きで、口を出したがる面もあります。いまの言葉で言えば、顧問・教育・宗教・社会福祉のような「知恵を出し、人の世話をする」仕事に向いています。辰・戌の天機星は星格の輝度で利益、天梁星は廟なので、条件がよいのは天梁星の側です。

✎ メモ

24貴入貴鄉,逢之富貴。

書き下し貴、貴郷に入る、これに逢えば富貴なり。

現代語訳貴の星が貴の郷に入ると、これに会う人は富んでいて身分も高くなります。

貴入貴鄉
原文はどの星がどの宮に入るのかを説明していません。よくある解釈は、天魁星・天鉞星のような貴人の星が力を出せる位置にあることです。
解説

この句は「貴入貴鄉」と言うだけで、どの星がどの宮に入るのかを書いていません。これは注でも触れたとおりです。後世によくある読み方はいくつかあります。天魁星・天鉞星が命宮に座ること、化科・化権のような貴をつかさどる四化が命宮や官禄宮にあること、あるいは主星がいちばん旺じる宮にあることです。三つの読み方は方向が一致していて、貴をつかさどる星が合った場所にある、ということです。こうした句は一つの条件に無理に当てはめず、盤を読むときの原則として使うのがよいでしょう。貴をつかさどる星(紫微星・太陽星・天梁星、化権・化科、魁鉞)が廟旺の輝度で、しかも命宮か官禄宮にあるとき、貴の気配がいちばん表れます。

✎ メモ

25財居財位,遇者富奢。

書き下し財、財位に居れば、遇う者は富奢なり。

現代語訳財の星が財の位にあれば、これに会う人は裕福で贅沢です。

財居財位
原文ははっきり言っていません。よくある解釈は、財の星(武曲星など)が財帛宮にある、または廟旺の地に座ることです。
解説

前の句と対になっていて、やはり条件をはっきり書いていません。「財の星」は一般に武曲星(化気が財)、太陰星(化気が富)を指し、禄存星や化禄も含みます。「財の位」は財帛宮・田宅宮、あるいは星の廟旺の地と解せます。お金を扱う星がお金を扱う宮にあり、しかも輝度があれば、お金の管理の力も収入の水準も比較的よいということです。「富奢」の「奢」の字は、財が多ければ出ていくお金も多くなりやすい、という注意でもあります。盤を読むときは、財帛宮にどの星が座り、輝度がどうかを見て、さらに化禄・化権や禄存星が同宮または会照しているかを見れば、この句がその盤で成り立つかどうか判断できます。

✎ メモ

26太陽居午,謂之日麗中天,有專權之貴,敵國之富。

書き下し太陽、午に居る、これを日麗中天と謂う。専権の貴、敵国の富有り。

現代語訳太陽星が午宮にあるのを「日麗中天」と言います。大権を一手に握る貴さがあり、一国に匹敵するほどの富があります。

日麗中天
正午の太陽が空高く輝くこと。巻一〈定富局〉は太陽星が単独で午宮の命宮を守るのを金燦光輝と呼んでいます。
敵國之富
一国に匹敵するほどの富。
解説

午の太陽星は正午の太陽で、光がいちばん盛んです。星格の輝度は旺です。全書の金燦光輝格は、太陽星が単独で午宮の命宮を守る形です。昔の人の理屈では、太陽星は貴さと名声をつかさどり、それがいちばん明るい位置にあるので、大権を握る貴さがあるとされます。「敵國之富」は誇張した言い方で、富と貴の両方を得ることを強調しています。注意したいのは、太陽星が午にあるとき、対宮の子には天梁星、戌宮には巨門星があり、寅宮には主星がなく対宮の申の天機星・太陰星を借りることです。太陽星自身の光が強すぎるので、気力を消耗しやすく、名声を好み、人に尽くしすぎる面もあります。〈太陽を問う〉で玉蟾先生が「午に在るを日麗中天と為し、大富貴を主る」と言っているのも、この句と一致します。

✎ メモ

27太陰居子,號曰水澄桂萼,得清要之職,忠諫之材。

書き下し太陰、子に居る、号して水澄桂萼と曰う。清要の職、忠諫の材を得。

現代語訳太陰星が子宮にあるのを「水澄桂萼」と呼びます。清らかで重要な職に就き、忠言をはばからず諫める人材です。

水澄桂萼
子宮は水に属します。月が澄んだ水面を照らし、その影の中に月の桂の花が見えることです。
清要
地位が清らかで尊く、職務が重要であること。
解説

子宮は水に属し、子の太陰星は真夜中の月です。星格の輝度は廟で、太陰星にとって最もよい位置の一つです。これが水澄桂萼です。「清要之職」は昔の翰林や監察官のような清らかで尊い職、「忠諫之材」は性格がまっすぐで本当のことを言える人だということです。現代に引き直すと、専門的な判断と節度が求められる仕事、たとえば研究・監査・編集・公務に向いています。子宮の太陰星は必ず天同星と同宮し、天同星のおだやかさと太陰星のこまやかさが合わさって、すっきりと品のある雰囲気になります。化忌や擎羊星に会うと、清らかさが憂鬱に変わりやすいので、盤を読むときは生年四化を見ます。

✎ メモ

28紫微輔弼同宮,一呼百諾居上品。文耗居寅卯,謂之眾水朝東。

書き下し紫微輔弼同宮すれば、一呼百諾して上品に居る。文耗、寅卯に居る、これを衆水朝東と謂う。

現代語訳紫微星と左輔星・右弼星が同じ宮にあれば、一声かければ百人が応じる、上等の格です。文の星と破軍星が寅・卯にあるのを「眾水朝東」と言います。

一呼百諾
一声命じれば大勢が応じて従うこと。巻三の注は「或いは三方と作すは次吉と為し、財帛宮に在ればすなわち財賦の官と為す」と言っています。
文耗
文は文曲星(文昌星もあわせて指すとする人もいます)、耗は破軍星(化気が耗)。
眾水朝東
文曲星と破軍星は五行が水で、寅・卯は東の方角にあたります。多くの川が東へ流れていく姿です。
解説

前の句は紫微星が左輔星・右弼星と同宮することで、第17段の君臣慶会より具体的です。三つの星が一つの宮にそろうのが条件なので、盤上ではあまり多くありません。巻三の注が「三方は次吉」とするのは、左右が三方から会照するだけなら一段重みが下がるということです。後の句の「眾水朝東」は、文曲星と破軍星がどちらも水に属し、寅・卯が東にあることから来ています。注意したいのは、盤上で卯の破軍星は必ず廉貞星と同宮して落陥し、寅では単独で座るので、「文耗居寅卯」は実際には二つの違う盤だということです。賦の文は名前を挙げるだけで吉凶を言っていないので、後世ではこの格の吉凶について説が分かれています。廉貞星と破軍星が同宮して落陥する方は、特に四化と煞星を見てから論じる必要があります。

✎ メモ

29日月守不如照合,蔭福聚不怕凶危。

書き下し日月は守るは照合に如かず、蔭福聚まれば凶危を怕れず。

現代語訳太陽星と太陰星は、命宮に座って守るより、三方から照らし合うほうがよいとされます。天梁星(蔭)と天同星(福)が集まれば、凶事も危難も恐れません。

照合
対宮や三合の宮から照らしてくること。巻三の注「日月命を守るは照合して並び明らかなるに如かず」には「命を守るに吉多ければ吉を主り、凶多ければ凶を主る」とあります。
蔭福
蔭は天梁星の化気、福は天同星の化気。
解説

前の句は、太陽星・太陰星が命宮に座るより、三方から照らすほうがよいということです。理屈はこうです。太陽と月が一つの宮に単独で座ると、輝度が悪ければ命宮全体が光を失いますが、三方から照らすなら命宮はその光を借りるだけなので、恵みが安定します。巻三も「命を守るに吉多ければ吉を主り、凶多ければ凶を主る」と言っています。後の句の「蔭福」は天梁星と天同星で、二つが同宮するのは寅・申の二宮だけです。天同星は福を、天梁星は災いを解くことをつかさどり、合わさると、昔の人は凶を吉に変える力があると考えました。困ったときによく誰かが助けてくれ、逃げ道もある一方で、そのぶん粘り強さに欠けることもある、ということです。全体の格局は機月同梁も参照してください。

✎ メモ

30貪居亥子,名為犯水桃花。刑遇貪狼,號曰風流彩杖。

書き下し貪、亥子に居る、名づけて犯水桃花と為す。刑、貪狼に遇う、号して風流彩杖と曰う。

現代語訳貪狼星が亥・子にあるのを「犯水桃花」と名づけます。擎羊星が貪狼星に会うのを「風流彩杖」と呼びます。

犯水桃花
亥・子は水に属し、貪狼星は化気が桃花です。巻三は「貪、羊陀に遇いて亥子に居るを名づけて泛水桃花と為す」としていて、擎羊星・陀羅星に会うという条件が加わっています。
刑
擎羊星。擎羊星は化気が刑です。
風流彩杖
字義は、色恋のために杖で打たれること。男女のことで刑罰を受けることです。

星格のやり方巻三は「貪狼陀羅寅宮に在るを号して風流彩杖と曰う」としていて、陀羅星を使い、しかも寅宮に限っています。ここの「刑遇貪狼」(擎羊星)とは異なり、全書の二か所で言うことが食い違っています。

解説

前の句の「犯水桃花」(巻三では泛水桃花)は、貪狼星が亥・子という二つの水の宮にあることです。貪狼星は水と木に属し、化気も桃花なので、水の地では桃花の気がいちばん濃くなります。星格の輝度では、子の貪狼星は旺、亥では落陥です。巻三の版は擎羊星・陀羅星に会うという条件が加わっていて、ここより厳しくなっています。後の句の「刑遇貪狼」は、擎羊星と貪狼星が同宮し、色恋のために打たれることです。昔の「杖」は役所の刑罰でした。全書の二か所で言うことが違う点は、上の「星格のやり方」で説明したとおりです。いまの暮らしに置き換えると、恋愛や欲望が面倒を招きやすく、法的なもめごとにまでなることもあるので、この組み合わせを見たら特に夫妻宮と化忌の位置を見ます。

✎ メモ

31七殺廉貞同位,路上埋屍。破軍暗曜同鄉,水中作塚。

書き下し七殺廉貞同位すれば、路上に屍を埋む。破軍暗曜同郷すれば、水中に塚を作る。

現代語訳七殺星と廉貞星が同じ宮にあると、路上で死んで、道端に屍を埋められます。破軍星と巨門星(暗曜)が同じ所にあると、水の中に墓を作ることになります。

七殺廉貞同位
巻三の注に「廉貞の内注を観るに、耗に遷移に会するもまた然り、若し陥地にして化忌を加うれば尤も凶」とあります。
暗曜
巨門星。巨門星は化気が暗です。
同鄉
同じ所にあること。巻三の注「破と巨とは垣を同じくせず、恐らくは命宮を照らし或いは遷移を犯す」は、破軍星と巨門星は同宮しないので、互いに命宮や遷移宮を照らすことを指すとしています。
解説

〈太微賦〉の中でもとりわけ重い断定の一つです。七殺星と廉貞星が同宮するのは丑・未の二宮だけで、七殺星は将の星、廉貞星は化気が囚、一方は剛く一方は激しいので、昔の人はよその土地の路上で死ぬと言いました。巻三〈七殺星の同垣〉は条件を補っていて、落陥でさらに化忌が加わると特に凶であり、破軍星が遷移宮にある場合も含むとしています。後の句の破軍星と巨門星は同宮できないので、巻三は互いに命宮や遷移宮を照らすことだとしています。どちらの組み合わせも事故や外出先でのリスクを表すので、交通・旅行・水辺のレジャーに気をつけるとよいでしょう。全書自身にも反対の説があり、〈斗数骨髄賦〉は「廉貞七殺はかえって積富の人と為す」と言い、巻三は「廟旺に居る」ことを条件として補っています。同じ組み合わせが、ある所では死を論じ、ある所では富を論じていて、その違いは輝度と化忌にあります。だから主星の同宮だけを見て死を論じることはできません。

✎ メモ

32祿居奴僕縱有官也奔馳,帝遇凶徒雖獲吉而無道。

書き下し禄、奴僕に居れば、縦い官有るも奔馳す。帝、凶徒に遇えば、吉を獲るといえども無道なり。

現代語訳禄の星が奴僕宮にあると、たとえ官職があっても奔走し苦労します。帝王の星が凶星に会うと、吉を得ても、正しい道に外れています。

奴僕
奴僕宮(交友)のこと。部下や友人を見ます。巻三は「権禄吉星奴僕の位にあれば、縦然官貴なるもまた奔波す」としています。
凶徒
凶星、煞星。
解説

前の句の「祿居奴僕」は、禄存星(巻三では権禄吉星)が奴僕宮にあることです。禄が他人の宮にあるのは、恵みを人に渡すのと同じなので、官位があっても奔走して苦労すると言います。現代なら、人のために骨を折る、チームのほうが自分より得をする、と読めます。後の句の「帝遇凶徒」は、紫微星が擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星と同宮することで、帝王の星に吉はあっても手段が正しくない、それを昔の人は「無道」と言いました。〈紫微の主るところを問う〉の歌も、紫微星に輔弼がなく諸悪がそろって侵すと「帝は無道の主と為る」と言っています。盤を読むときは、煞星が同宮か三方からの会照かを見ます。同宮のほうが影響は重くなります。

✎ メモ

33帝坐金車則曰金輿捧櫛,福安文曜謂之玉袖天香。

書き下し帝、金車に坐するを金輿捧櫛と曰い、福に文曜安んずる、これを玉袖天香と謂う。

現代語訳帝王の星が金の車に座るのを「金輿捧櫛」と言います。福徳宮に文昌星・文曲星が落ち着いているのを「玉袖天香」と言います。

金車
何を指すかは説が分かれます。巻一〈重補斗数彀率〉は「紫微命庫に坐するを金輿捧櫛輦と曰う」とし、〈定貴局〉の金輿扶駕は紫微星が命宮を守り、太陽星・太陰星が前後から挟むことです。
金輿捧櫛
帝王の乗る車のそばで、くしを捧げ持って仕える人がいること。尊い身分のたとえです。
玉袖天香
袖は玉のよう、天上の香りをまとうこと。清らかで文才があることのたとえです。巻三の注に「昌曲吉星福徳に居る、これを玉袖天香と謂う、更に紫微を得て午宮に居れば妙」とあります。
解説

「帝坐金車」は説が分かれ、それは注に挙げたとおりです。注目したいのは、〈重補斗数彀率〉が同じ格を紫微星が命庫に座ることとし、次の句を「臨官に文曜安んずるを号して衣錦惹天香と為す」と変えていて、ここの福徳宮とは違うことです。同じ一組の賦の句の、二つの伝本です。後の句の「玉袖天香」は、文昌星・文曲星が福徳宮にあることで、巻三〈文昌文曲の同垣〉は、さらに紫微星を得て午宮にあれば妙だとしています。福徳宮は精神生活と楽しみをつかさどり、昌曲がここにあると、いまの暮らしでは、趣味がよく、文芸を好み、内面の暮らしが豊かだということになります。

✎ メモ

34太陽會文昌於官祿,皇殿朝班,富貴全美。

書き下し太陽、官禄にて文昌に会すれば、皇殿朝班にして、富貴全美なり。

現代語訳太陽星と文昌星が官禄宮にそろうのを「皇殿朝班」と言い、富も貴もそろって申し分ありません。

朝班
朝廷で官位の順に並ぶ列。朝廷に仕えて官に就くことを指します。
解説

太陽星は貴さと名声を、文昌星は科挙と文書をつかさどり、二つが官禄宮にそろうと、昔の人は朝廷に仕えて官に就き、富と貴の両方を得るとしました。巻三〈太陽星の同垣〉は、文昌星を文曲星に替えても同じだと言っています。この句には太陽星に輝度があることが暗に含まれています。太陽星が官禄宮で落陥していれば光が足りず、名前ばかりで中身が伴いません。公職や専門資格、試験と文書が必要な仕事に向き、仕事で名を上げられるということです。盤を読むときは官禄宮を開き、太陽星の輝度の小さな字と、文昌星・文曲星があるかを見ます。陽梁昌禄の条件に近いかどうかも見られます。

✎ メモ

35太陰會文曲於妻宮,蟾宮折桂,文章全盛。

書き下し太陰、妻宮にて文曲に会すれば、蟾宮折桂、文章全盛なり。

現代語訳太陰星と文曲星が夫妻宮にそろうのを「蟾宮折桂」と言い、文章の才がこのうえなく盛んです。

妻宮
夫妻宮のこと。
蟾宮折桂
蟾宮は月の宮殿。月の中で桂の枝を折ることを、昔の人は科挙に合格することにたとえました。巻三の注に「文昌同じきもまた然り、身命に在れば巧芸の人」とあります。
解説

太陰星は柔らかさと雅やかさを、文曲星は才芸をつかさどり、二つが夫妻宮にそろうと、昔の人は「蟾宮折桂」、文章が大いに栄えると言いました。巻三〈太陰星の同垣〉は、文昌星に替えても同じで、身命にあれば巧みな芸を持つ人だと補っています。注目したいのは、この組み合わせが夫妻宮にあることです。昔の人が読んでいたのは、妻のおかげで力を得る、配偶者に才能がある、あるいは本人の才能が結婚と結びついている、ということだったかもしれず、本人のことだけを言っているわけではありません。現代に引き直すと、パートナーに文芸や専門の才能がある、あるいは恋愛や結婚生活が学問や創作と深く結びついている、ということです。太陰星が落陥していれば効果は割り引かれます。

✎ メモ

36祿存守於田財,堆金積玉。財蔭坐於遷移,巨商高賈。

書き下し禄存、田財を守れば、金を堆み玉を積む。財蔭、遷移に坐すれば、巨商高賈なり。

現代語訳禄存星が田宅宮か財帛宮を守れば、金や玉が積み上がります。財の星(武曲星)と蔭の星(天梁星)が遷移宮に座れば、大商人になります。

田財
田宅宮と財帛宮。
財蔭
財は武曲星(化気が財)、蔭は天梁星。二つの星は同宮しないので、巻三は「武曲遷移なれば巨商高賈」「天梁吉を加えて遷移に坐すれば巨商高賈」と別々に注しています。
巨商高賈
大商人。行商する者を商、店を構える者を賈と言います。
解説

前の句は、禄存星が田宅宮か財帛宮にあることです。禄存星は財を守ることをつかさどり、お金や不動産を扱う宮でいちばん生きるので、金や玉が積み上がるとされます。後の句の「財蔭」は分けて読む必要があります。武曲星と天梁星は同宮しないので、巻三は二句に分けていて、〈武曲星の同垣〉は武曲星が遷移宮にあるときについて「吉多くして方に論ず」と注を加えています。昔の人は遷移宮で外での発展を見たので、財の星や蔭の星が外にあれば、よその土地で商売をして利益を得ることになります。海外赴任、国をまたぐ取引、営業の開拓です。「吉多くして方に論ず」という点に注意してください。遷移宮に煞星や化忌があれば、そのまま大商人と判断することはできません。

✎ メモ

37耗居祿位,沿途乞食。貪會旺宮,終身鼠竊。

書き下し耗、禄位に居れば、沿途に乞食す。貪、旺宮に会すれば、終身鼠窃す。

現代語訳破軍星が禄の位にあると、道々物乞いをして暮らします。貪狼星が旺の宮にあると、一生こそ泥です。

耗
破軍星。破軍星は化気が耗です。
祿位
何を指すかは説が分かれ、官禄宮とも、禄存星のある位置とも解せます。巻一〈重補斗数彀率〉の同じ句は「耗、敗地に居れば沿途に丐求す」となっています。
旺宮
巻三の注は「貪狠、子午卯酉なれば鼠窃狗偸の輩」で、貪狼星が子・午・卯・酉にあることです。
解説

全書でもとりわけ聞きづらい断定の一つで、原文どおりに訳しています。前の句の「耗居祿位」は、化気が耗の破軍星のいる所が禄の位(禄存星の位置または官禄宮)であれば、あるべき禄を使い果たしてしまうので、物乞いをするということです。〈重補斗数彀率〉は「耗、敗地に居れば」としていて、条件が違います。後の句について、巻三〈貪狼星の同垣〉は「旺宮」を貪狼星が子午卯酉にある場合に限り、さらに生まれ年の十二支で細かく分けていて、もとの句より狭くなっています。いまの暮らしに置き換えると、前の句は出費や浪費が大きすぎること、後の句は欲が強く近道に走りやすいことです。どちらも、煞星や化忌が同宮しているかを見てから重く論じるべきです。

✎ メモ

38殺居絕地,天年夭似顏回。貪坐生鄉,壽考永如彭祖。

書き下し殺、絶地に居れば、天年夭すること顔回に似たり。貪、生郷に坐すれば、寿考永きこと彭祖の如し。

現代語訳七殺星が絶地にあると、寿命が短く、顔回のように若くして死にます。貪狼星が長生の地に座れば、彭祖のように長生きします。

絕地
長生十二位の絶。次の句の「生鄉」は長生のことです。巻三の同じ句は「殺、絶地に臨みて羊陀に会す」で、擎羊星・陀羅星に会う条件が加わっています。
顏回
孔子の最も優れた弟子。三十歳を過ぎたばかりで亡くなりました。
彭祖
八百歳まで生きたと伝えられる長寿の人。

星格のやり方長生十二位の進む向きについて、全書は男命は順に、女命は逆に数えるとしています。星格は陰陽と男女で順逆を決めるので、盤上の絶地・長生の位置は全書どおりに並べた場合と違うことがあります。

解説

二句とも長生十二神を使っていて、七殺星は「絶」、貪狼星は長生にあります。巻三は「殺、絶地に臨みて羊陀に会す」と補ってはじめて夭折を論じていて、〈貪狼星の同垣〉も後の句を「貪狼吉を加えて長生に坐す」と書いているので、どちらも条件が増えています。顔回は三十過ぎで亡くなり、彭祖は八百歳まで生きたと伝えられる、極端なたとえです。昔の人の理屈では、七殺星はもともと厳しく殺伐としていて、さらに気がいちばん弱い絶地に落ちると生気が最も少なくなり、貪狼星は厄を解く神で寿もつかさどり、長生の地では気がいちばん満ちる、ということです。〈重補斗数彀率〉の同じ句は「日、旺宮に在れば八百年の彭祖を学ぶべし」で、主役が太陽星に替わっていて、別の伝本です。こうした寿命の断定は、現代では健康への注意として受け取るにとどめるのがよいでしょう。

✎ メモ

39忌暗同居身命疾厄,沉困尪羸,凶星會於父母遷移,刑傷破祖。

書き下し忌暗、身命疾厄に同居すれば、沈困尪羸す。凶星、父母遷移に会すれば、刑傷して祖を破る。

現代語訳化忌と巨門星が命宮・身宮・疾厄宮に一緒にあると、長く困窮し、体はやせ衰えて病みがちになります。凶星が父母宮や遷移宮で会すると、刑罰や傷を受け、祖先の家業をつぶします。

忌暗
忌は化忌(陀羅星の化気も忌と呼びます)、暗は巨門星。
尪羸
やせ衰えて病みがちなこと。
破祖
祖先の家業から離れる、またはそれを使い果たすこと。
解説

「忌暗」は化忌と巨門星です。巨門星は化気が暗で、それが化忌になる(丁年だけです。癸年の巨門星は化権)か、同宮するほかの星が化忌になると、暗さに暗さが重なり、それが命宮・身宮・疾厄宮にあれば、長く困窮し、体が弱く病みがちになるとされます。「忌」を陀羅星と読む人もいて、「あなたの命盤」の照合では両方を拾っています。後の句の「凶星會於父母遷移」は、煞星が父母宮にあれば目上との縁が薄く、しつけで傷つき、遷移宮にあれば外出先でけがをするので、刑傷を受けて祖業を破るということです。前の句は慢性の不調や気持ちのふさぎに気をつけること、後の句は早くに家を離れ、実家に頼らないことが多い、ということです。巨門星の化忌も参照してください。

✎ メモ

40刑殺同廉貞於官祿,枷杻難逃,官符加刑殺於遷移,離鄉遭配。

書き下し刑殺、廉貞と官禄に同じくすれば、枷杻逃れ難し。官符、刑殺を遷移に加うれば、郷を離れて配に遭う。

現代語訳刑の星・殺の星と廉貞星が官禄宮にそろうと、首かせ手かせをはめられて牢に入るのを逃れられません。官符に刑の星・殺の星が加わって遷移宮にあると、故郷を離れて流刑に処されます。

刑殺
刑は擎羊星。殺は七殺星とも、煞星一般とも解せます。
枷杻
枷も杻も、昔の罪人をつなぐ刑具です。
官符
歳前十二神の一つ。流年とともに動き、訴訟や文書をつかさどります。
遭配
遠方へ流される刑を言い渡されること。
解説

前の句は、擎羊星(刑)、七殺星または煞星(殺)と廉貞星(囚)が官禄宮にそろうことです。官禄宮は仕事と公務を見る宮で、化気が囚の廉貞星が刑の星に会うと、昔の人はかせから逃れられない、つまり公務がもとで牢に入ると言いました。後の句の「官符」は歳前十二神の一つで、流年とともに動き、星格の盤では運限の中で見られます。流年の官符が遷移宮に来て、さらに刑煞があると、よその土地で訴訟を起こされ、流刑に処されるとされます。いまの言葉で言えば、前の句は仕事上の法的リスク、たとえば財務を扱う仕事やグレーな領域の仕事のこと、後の句はその年によその土地で起こる訴訟や処分のことです。

✎ メモ

41善福居空位,天竺生涯。輔弼單守命宮,離宗庶出。

書き下し善福、空位に居れば、天竺の生涯。輔弼、命宮を単守すれば、宗を離れ庶出なり。

現代語訳天機星(善)と天同星(福)が空亡の位にあると、出家して僧になります。左輔星か右弼星が単独で命宮を守ると、本家の一族を離れるか、妾の子として生まれます。

善福
天機星は化気が善、天同星は化気が福。
天竺生涯
天竺は古代インドで、仏教の生まれた地。出家して修行する暮らしを指します。
單守
巻三の注「左右単守して命宮を照らせば宗を離れ庶出」には「身命に正曜無き是れなり、若し三方に紫微・天相・天府を合すれば吉」とあり、命宮に主星がなく、左輔星か右弼星だけがあることを指します。
庶出
正妻の子ではないこと。
解説

前の句の「善福居空位」は、天機星と天同星が空亡(旬空・截空、あるいは地空・地劫)にあることです。天機星は思考を、天同星は福をつかさどり、空に落ちると世俗の福が虚ろになり、心が世を離れる方へ向かうので、出家がよいとされます。精神的な暮らしを重んじ、宗教・哲学・心理学に関心を持つということで、本当に出家するとは限りません。後の句の「輔弼單守命宮」は、命宮に主星がなく、左輔星か右弼星だけがある形で、昔の人は一族を離れる、または妾の子だと言いました。巻三〈魁鉞左右禄存の同垣〉は、三方で紫微星・天相星・天府星に会えば吉だと補っています。現代に引き直すと、生まれた家族との関係がやや疎く、自分の力で立つ必要があるということで、「庶出」を字面どおりに当てはめる必要はありません。

✎ メモ

42七殺臨於身命加惡殺,必定死亡。鈴羊合於命宮遇白虎,須當刑戮。

書き下し七殺、身命に臨み悪殺を加うれば、必定死亡す。鈴羊、命宮に合して白虎に遇えば、須らく当に刑戮すべし。

現代語訳七殺星が命宮か身宮にあり、そのうえ凶煞が加われば、必ず死にます。鈴星と擎羊星が命宮で会し、さらに白虎に会えば、必ず刑罰を受けて殺されます。

惡殺
凶煞の星。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星など。
白虎
歳前十二神の一つで、流年とともに動きます。巻三の注「羊鈴命に坐し流年白虎なれば災傷」には「流年の白虎また命宮に到るなり」とあります。
解説

前の句は、七殺星が命宮か身宮にあり、そのうえ擎羊星・陀羅星・火星・鈴星などの煞星が加わることで、「必定死亡」は全書でいちばん重い言葉の一つです。巻三〈七殺重逢を論ず〉はこの種の断定を運限の中に置いていて、流年の七殺星と本命の七殺星が重なり、さらに煞星が加わってはじめて大凶とします。後の句の「白虎」は流年の歳前十二神で、巻三の注は流年の白虎がさらに命宮に来ることだとしています。言い換えれば、この二句が本当に言っているのは「運限による引き金」であって、本命盤で見かけたらすぐに結論を出すということではありません。本命盤にこうした組み合わせがある人は、それに対応する流年に、事故・手術・法的な問題に特に気をつける、ということです。

✎ メモ

43官府發於吉曜,流殺怕逢破軍。羊陀憑太歲以引行,病符官符皆作禍。

書き下し官府は吉曜に発し、流殺は破軍に逢うを怕る。羊陀は太歳に憑りてもって引行し、病符官符は皆禍を作す。

現代語訳官府は吉星に会ってはじめて働きを発揮し、流年の煞星は破軍星に会うのをいちばん恐れます。擎羊星と陀羅星は太歳に引かれて動き、病符と官符はどちらも禍いを引き起こします。

官府
博士十二神の一つ。
流殺
流年の煞星。流年の擎羊星・陀羅星など。
太歲
その年の十二支、つまり流年のこと。
病符官符
病符は博士・歳前の両系統に見え、官符は歳前十二神に属します。どちらも流年に従って配置されます。
解説

この段から流年の小さな神煞の話になります。「官府」は博士十二神の一つで、吉星に会ってはじめてよい面を発揮します。流年の煞星(流年の擎羊・陀羅)が破軍星に会うのをいちばん恐れるのは、破軍星そのものが消耗の星だからです。「羊陀憑太歲以引行」は、流年の擎羊星・陀羅星の位置がその年の十干で決まることを言っていて、病符・官符もみな太歳に従って動きます。こうした小さな神煞の重みは主星や四化にはるかに及びません。星格の盤では運限の中で見られますが、読むときは補助として扱います。主星と四化にすでに凶の兆しがあって、そこにこれらの神煞が重なったときに、判断を重くします。

✎ メモ

44奏書博士與流祿,盡作吉祥。力士將軍同青龍,顯其權勢。

書き下し奏書博士と流禄とは、尽く吉祥を作す。力士将軍、青竜に同じくすれば、その権勢を顕す。

現代語訳奏書・博士と流年の禄存星は、どれも吉祥をもたらします。力士・将軍が青竜と一緒にあれば、権勢が表に出ます。

奏書博士
奏書・博士・力士・将軍・青竜は、どれも博士十二神の星です。
流祿
流年の禄存星。
解説

前の段を受けて、ここでは博士十二神と流年の禄存星のうち、吉をつかさどるものを挙げています。奏書は文書とよい知らせを、博士は聡明さを、流禄はその年の財禄をつかさどり、力士・将軍・青竜は権勢と行動力をつかさどります。これらの星はどの宮にも順に回ってくるので、錦上に花を添えるだけです。盤を読むときは、流年の命宮の主星がよく、そのうえ流禄と青竜に会えば、その年は実際の収穫があり、人目にもつく、と読めます。博士十二神の課ではこの神煞の並び順を最初から最後まで説明していて、星格はそれを各宮の下に配置しています。

✎ メモ

45童子限如水上泡漚,老人限似風中燃燭。遇殺無制乃流年最忌,

書き下し童子の限は水上の泡漚の如く、老人の限は風中の燃燭に似たり。殺に遇いて制無きは、すなわち流年の最も忌むところ、

現代語訳子どもの運限は水に浮かぶ泡のようで、老人の運限は風の中でともる蝋燭のようです。煞星に会って、それを押さえる星がないのは、流年でいちばん忌むことです。

泡漚
水の泡。
限
運限。大限・小限・流年といった時期の区切り。
解説

「童子限」は幼いころの運限で、全書には〈小児の命を論ず〉という専門の篇があります。「老人限」は晩年です。前者は泡のように壊れやすく、後者は風の中の灯のように消えやすく、どちらもこの二つの時期がいちばんもろいと言っています。後半の「遇殺無制」は、運限で煞星に会いながら、それを押さえる吉星や化禄・化科がないことで、流年でいちばん忌むこととされます。いまの暮らしに置き換えると、幼い子と年配の人の健康にいちばん気を配る必要があり、流年で煞星を見て三方に和らげる吉星がなければ、控えめに動くのがよい、ということです。この句は、〈太微賦〉の後半の重点がすでに本命から運限へ移っていることも示しています。

✎ メモ

46人生榮辱限元必有休咎,處世孤貧數中逢乎駁雜,學至此誠玄微矣。

書き下し人生の栄辱は限元に必ず休咎有り、処世の孤貧は数中に駁雑に逢う。学びてここに至れば誠に玄微なり。

現代語訳人生の栄誉と恥辱は、運限の中で必ず吉と凶があります。世を渡って孤独で貧しいのは、命数の中で吉凶の混じり合いに出会ったからです。ここまで学べば、まことに奥深く精妙です。

限元
運限。大限・小限を指します。
休咎
休は吉、咎は凶。
駁雜
吉星と凶星が混じって純粋でないこと。
解説

結びの句は、人生の栄辱は運限の中で必ず吉と凶があり、一生孤独で貧しい人は、命の中の吉凶の星が「駁雜」、つまり吉星と凶星が入り混じってどちらにも純粋でないからだ、と言っています。この「駁雜」という考え方はとても役に立ちます。良し悪しが半々の盤は、平凡というより、浮き沈みが大きく積み上げにくいことが多いのです。盤を読むときは、命宮の三方四正に吉星と煞星が並んで見え、化禄と化忌が同時に出ていれば駁雑のしるしなので、運限から吉の時期を見つけてしっかりつかむのがよいでしょう。最後の「學至此誠玄微矣」は冒頭の「至玄至微」と呼応していて、始めと終わりがつながっています。

✎ メモ

よくある質問

〈太微賦〉には何が書かれていますか?

〈太微賦〉は『紫微斗数全書』巻一の冒頭に置かれた総論です。前半は命盤を読む原則で、命宮と身宮を根本とし、星が入廟しているか度を失っているか、互いに相生か相剋かを見るよう説きます。後半は「例曰」から、禄馬・日月・輔弼・魁鉞などの組み合わせの吉凶を並べ、その多くの句が後に格局の名前になりました。

〈太微賦〉は誰が書いたのですか?

〈太微賦〉は『紫微斗数全書』巻一に収められています。全書は宋代初めの陳希夷(陳摶)の作とされていますが、いま読める本は明代に刊行されたもので、この篇には別に作者の署名がありません。巻一の後ろには、同じ対句の形で書き足した〈増補太微賦〉という篇もあります。

「日月最嫌反背,祿馬最喜交馳」とはどういう意味ですか?

太陽星と太陰星がいちばん嫌うのは「反背」、つまり二つとも光を失う位置にあることです。太陽星が夜の宮に、太陰星が昼の宮にある状態です。禄存星と天馬星がいちばん喜ぶのは「交馳」、つまり互いに出会うことで、昔の人は動く中で財を得ると読みました。この二句は〈太微賦〉の「例曰」の後、早い段階に出てくる経験則です。

「祿逢沖破,吉處藏凶」はどう解釈しますか?

禄の星(禄存星または化禄)は本来、恵みと財禄を表します。それが煞星や化忌に対宮や三方から衝かれると、恵みが壊されるので、吉の中に凶が潜んでいると言います。次の句「馬遇空亡,終身奔走」も同じ理屈で、天馬星が空亡にあると、走り回っても実りが少ないということです。

〈太微賦〉の「入廟為奇,失度為虛」とは何ですか?

星がいちばん力を出せる宮にあることを「入廟」と言い、そのときは働きが際立ちます。あるべき位置にないことを「失度」と言い、力が弱くなります。これが、後に命盤で廟・旺・得地・利益・平和・不得地・落陥という輝度を示す根拠になりました。〈太微賦〉はこの後で、星が廟旺にあっても、なお生剋制化を見る必要があると念を押しています。

この篇に出てくる主星

紫微星七殺星破軍星太陽星廉貞星太陰星
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