重補斗数彀率

〈重補斗數彀率〉

『紫微斗数全書』巻一・賦文・諸星問答と格局・原文と現代語訳

はじめに

〈重補斗数彀率〉は『紫微斗数全書』巻一の篇です。「彀率」は弓をいっぱいに引き絞るときの基準で、学ぶときの法則のたとえです。「重補」は、改めて整理し、書き足した版であることを示します。〈太微賦〉と読み比べると、多くの句がほとんど同じだとわかります。「祿存守於田財」が「祿合守田財為爛穀堆金」に、「耗居祿位,沿途乞食」が「耗居敗地沿途丐求」になり、「殺居絕地,天年夭似顏回」には「三十二」という歳が加わっています。

全篇は二十段です。

  • 総則(1〜4):吉が多ければ凶に逢っても吉、悪が多ければ吉に逢っても凶。星が垣を得ているか、制されているかを見る。身命を禍福の柄とし、根源を窮通の機とする。
  • 格局(5〜14):紫微と輔弼が同垣すれば必ず貴く、財印が命を夾み、日月が財を夾めば必ず富む。泛水桃花、風流刑杖、金輿捧櫛輦、衣錦惹天香、翰林清異、金殿伝臚。さらに沿途丐求、終身鼠窃、羸痩其軀、枷杻囚徒、離郷遠配などの凶の断定。
  • 流年と運限(15〜20):七殺が陥地に臨めば流年に必ず死亡を見る、博士十二神の吉凶、童子の限と老人の限。

〈太微賦〉と違う所は注で指摘します。現代語訳は原文どおりに直訳し、「流年必見死亡」「終身鼠竊」も字面どおりに訳しています。

1諸星吉多逢凶也吉,諸星惡多逢吉也凶。

書き下し諸星吉多ければ凶に逢うもまた吉、諸星悪多ければ吉に逢うもまた凶なり。

現代語訳全体として吉の星が多ければ、凶星に遇っても吉です。全体として悪い星が多ければ、吉星に遇っても凶です。

解説

冒頭のこの句は、〈太微賦〉の「諸星吉,逢凶也吉;諸星凶,逢凶也凶」を書き直したものですが、一段深くなっています。「惡多逢吉也凶」です。〈太微賦〉は凶の多い盤がさらに凶に遇う場合しか言っていませんが、ここではさらに進んで、凶の多い盤は吉星に遇っても救えないと言っています。これは全書でいちばんはっきりした「割合の原則」です。一つの吉星や一つの煞星では大局は変わらず、全体の多い少ないを見る、ということです。盤を読むときは、命宮の三方四正にある六吉星・禄存星・化禄・化権・化科を加点、六煞星・化忌を減点として数え、まず合計がどちらに傾いているかを見てから、細部を読むとよいでしょう。

✎ メモ

2星更纏度,數分定局。

書き下し星は纏度を更え、数は定局を分かつ。

現代語訳星はめぐって、いる度数を変えていきます。命数はそれによって分かれ定まり、それぞれ格局を成します。

纏度
纏は「躔」と同じで、星がめぐっている度数、位置。
解説

「星更纏度」は星の位置が変わっていくということで、「纏」は「躔」と同じです。「數分定局」は、一人ひとりの命数が星の位置によって違う格局に分かれる、ということです。この句は前を受けて後につなぐ役目で、星の位置が変われば格局も変わるので、この後でさまざまな格局を一つずつ述べていくわけです。現代に置きかえると、同じ星でも宮や十二支が違えば意味が違うので、斗数は星の性質だけを覚えるのではなく、位置と一緒に読まなければならない、ということです。星格が「この星がこの宮にあるとき」のページを分けて書いているのもそのためで、たとえば紫微星が命宮にあるときと紫微星が夫妻宮にあるときとでは、話がまったく違います。

✎ メモ

3重在看星得垣受制,方可論人禍福窮通。

書き下し重きは星の垣を得るか制を受くるかを看るに在り、方に人の禍福窮通を論ずべし。

現代語訳大事なのは、星が垣を得ているか、制されているかを見ることです。そうしてはじめて、人の禍福と窮通を論じることができます。

得垣
星がふさわしい宮に入ること。
受制
ほかの星や五行に剋され、抑えられること。
解説

この句は盤を読む要点を「得垣」と「受制」の二語にまとめています。得垣は星がふさわしい所にあること、受制はほかの星や宮の五行に抑えられることです。この二つが合わさって、星がどれだけ力を出せるかが決まります。〈太微賦〉は「入廟」「失度」という言葉を使い、〈星垣論〉は五行でなぜ垣を得るのかを説明していますが、ここは簡潔な結論です。星格の盤では、「得垣」はおおよそ輝度の廟・旺・得地に当たります。「受制」は、同宮や対宮に煞星・化忌があるか、星と宮の五行が剋し合っているかを見る必要があり、輝度からわかるのは前者だけです。

✎ メモ

4大概以身命為禍福之柄,以根源為窮通之機。

書き下し大概身命をもって禍福の柄と為し、根源をもって窮通の機と為す。

現代語訳おおよそ、身宮・命宮を禍福の柄とし、根源を困窮か通達かのかなめとします。

根源
一般には生まれ持った土台、たとえば生まれ年の干支と解します。
解説

この句は〈太微賦〉第2段の「以身命為福德之本,加以根源為窮通之資」とほとんど同じで、「福德之本」を「禍福之柄」に、「窮通之資」を「窮通之機」に変えただけです。言葉は変わっても意味は同じで、身命が主軸、根源(生まれ持った土台で、一般には生まれ年の干支がもたらす四化と星の配置と解します)がかなめです。注目したいのは、「柄」は取っ手で、「本」より能動的な響きがあることです。身命は人がつかみ、使いこなせる所だ、と言っているようにも読めます。盤を読むときは、まず命宮と身宮を見て、次に生年四化がどの宮に入っているかを見ます。

✎ メモ

5紫微在命輔弼同垣,其貴必矣,財印夾命日月夾財,其富何疑。

書き下し紫微命に在りて輔弼垣を同じくすれば、その貴必せり。財印命を夾み日月財を夾めば、その富何ぞ疑わん。

現代語訳紫微星が命宮にあり、左輔星・右弼星が同じ宮にあれば、必ず貴くなります。財(武曲星)・印(天相星)が命宮を挟み、太陽星・太陰星が財を挟めば、富むことに何の疑いがあるでしょうか。

財印
財は武曲星(化気が財)、印は天相星(化気が印)。
日月夾財
太陽星・太陰星が財帛宮を挟むこと。巻一の〈富の局〉も、武曲星が命を守り、日月が来て挟むとしています。
解説

この句は三つの格局を収めています。一つ目は、紫微星と左輔星・右弼星が一緒に命宮にあることで、これは君臣慶会のいちばん厳しい形で、星格のゆるい判定より厳しくなっています。二つ目は「財印夾命」で、武曲星と天相星が命宮の両隣に分かれてあることです。実際の命盤では、これは命宮が寅か申にあり、太陽星・巨門星か天同星・天梁星が座っているときにしか起こらず、条件はとても狭くなっています。三つ目は「日月夾財」で、〈太微賦〉と同じです。三つの格局に共通するのは「支えられている」ことで、帝星には臣下があり、命宮には財印があり、財帛宮には日月があります。今の読み方では、資源も人脈も身近にあり、一人で戦わなくてよい、ということです。

✎ メモ

6蔭福臨不怕凶沖,日月會不如合照。

書き下し蔭福臨めば凶沖を怕れず、日月会するは合照に如かず。

現代語訳天梁星(蔭)・天同星(福)が命宮に臨めば、凶星がぶつかってきても恐れません。太陽星・太陰星が一緒に命宮を守るのは、三方から照らし合うのに及びません。

蔭福
蔭は天梁星の化気、福は天同星の化気。
合照
三合の宮から照らしてくること。
解説

この二句は〈太微賦〉の「日月守不如照合,蔭福聚不怕凶危」と同じで、前後を入れ替え、「凶危」を「凶沖」にしただけです。「凶沖」は「凶危」より具体的で、煞星や化忌が対宮や三方からぶつかってくることを指します。天同星と天梁星が一緒に命宮にあるのは寅・申の二宮だけで、天同星は福を、天梁星は蔭をつかさどり、どちらも災厄を解くことのできる星です。〈太微賦〉の解説もあわせて読めます。ここで補っておきたいのは、日月が同宮するのは丑・未だけで、輝度は一つがよく一つが悪い(星格の表では丑の宮で太陽星は不得地、太陰星は廟)ので、昔の人は分かれて三方から照らし合うほうがよいと言ったのだ、ということです。

✎ メモ

7貪狼居子乃為泛水桃花,天刑遭貪必主風流刑杖。

書き下し貪狼子に居るを乃ち泛水桃花と為し、天刑貪に遭えば必ず風流刑杖を主る。

現代語訳貪狼星が子の宮にあるのを「泛水桃花」と言います。天刑が貪狼星に遇えば、必ず色恋のことで刑罰の杖を受けます。

泛水桃花
子の宮は水に属し、貪狼星は化気が桃花です。〈太微賦〉では「貪居亥子,名為犯水桃花」となっています。
天刑
刑罰と孤独・刑剋をつかさどる星。〈太微賦〉の同じ句は「刑遇貪狼」で、刑は一般に擎羊星と解します。
解説

〈太微賦〉第30段と比べると、ここには違う所が二つあります。一つ目は、「貪狼居子」が子の宮だけを言っていて、〈太微賦〉は亥・子の二宮だということです。二つ目は、「天刑遭貪」が天刑を使っていて、〈太微賦〉は「刑遇貪狼」(一般に擎羊星と解します)、巻三はさらに「貪狼陀羅在寅宮」としていることです。同じ「風流刑杖」に、全書の中で擎羊・天刑・陀羅の三つの条件が出てくるわけです。天刑は雑曜で、生まれ月で置かれ、刑罰と孤独・刑剋をつかさどり、星格の盤では雑曜の中に並んでいます。三つの版に共通するのは、貪狼星に刑をつかさどる星が一つ加わることで、今の言葉で言えば、恋愛の問題が法律や評判のトラブルを招く、ということです。

✎ メモ

8紫微坐命庫則曰金輿捧櫛輦,臨官安文曜號為衣錦惹天香。

書き下し紫微命庫に坐すればすなわち金輿捧櫛輦と曰い、臨官に文曜を安んずれば号して衣錦惹天香と為す。

現代語訳紫微星が命庫に座るのを「金輿捧櫛輦」と言います。官禄宮に文の星が置かれるのを「衣錦惹天香」と呼びます。

命庫
意味がはっきりしません。〈太微賦〉の同じ句は「帝坐金車」です。一般には命宮が辰・戌・丑・未の四庫の地にあることと解します。
金輿捧櫛輦
帝王の車で、そばに櫛を捧げ持って仕える者がいること。尊貴さを表します。
臨官
ここでは官禄宮に入ることと読みます。〈太微賦〉の同じ句は「福安文曜」で、福徳宮です。
衣錦惹天香
錦の衣を着て、天上の香りをまとうこと。富貴で清らかな雅やかさを表します。
解説

〈太微賦〉第33段と比べると、ここの二つの格局はどちらも条件が入れ替わっています。「金輿捧櫛輦」は紫微星が「命庫」に座ることで、注では辰戌丑未と解しました。「衣錦惹天香」は官禄宮に文昌星・文曲星があることですが、〈太微賦〉の「玉袖天香」は福徳宮に昌曲があることです。一方は仕事を、一方は心の暮らしを言っていて、向いている先が違います。こうした違いは書き写すときの誤りかもしれませんし、二つの伝本がそれぞれ別の拠りどころを持っていたのかもしれません。実際に盤を読むときは、昌曲が官禄宮にあれば文書・試験・専門資格に有利で、福徳宮にあれば趣味のよさや内面の修養をつかさどります。どちらの読み方にも理があるので、無理に一つにそろえる必要はありません。

✎ メモ

9太陰合文曲於妻宮翰林清異,太陽會文昌於官祿金殿傳臚。

書き下し太陰、文曲に妻宮に合すれば翰林清異、太陽、文昌に官禄に会すれば金殿伝臚。

現代語訳太陰星が夫妻宮で文曲星と会合すれば、翰林院の清らかで抜きんでた人物です。太陽星が官禄宮で文昌星と会合すれば、金殿で名を読み上げられる新しい進士です。

翰林
翰林院。皇帝のそばで文書をつかさどり、詔を起草する、清く貴い役所。
傳臚
殿試の後、殿上で合格者の順位を順に読み上げて発表すること。
解説

この二句は〈太微賦〉第34・35段と同じですが、格局の名前が変わっています。「蟾宮折桂」が「翰林清異」に、「皇殿朝班」が「金殿傳臚」になっています。どちらの組の名前も科挙の功名を言っていて、翰林は清く貴い文官、伝臚は殿試で名を読み上げられる進士です。今の読み方も同じです。太陰星・文曲星が夫妻宮にあれば、パートナーに才能がある、あるいは結婚が学問と関わります。太陽星・文昌星が官禄宮にあれば、仕事では試験や資格、文書が求められるものに向いています。巻三の〈諸星同垣:太陽星〉は、文昌星を文曲星に替えても同じだと補っています。盤を読むときは、やはり太陽星・太陰星の輝度を見る必要があります。

✎ メモ

10祿合守田財為爛穀堆金,財蔭居遷移為高商豪客。

書き下し禄合して田財を守れば爛穀堆金と為し、財蔭遷移に居れば高商豪客と為す。

現代語訳禄の星が会合して田宅宮・財帛宮を守れば、穀物は腐るほど、黄金は山と積まれます。財の星(武曲星)・蔭の星(天梁星)が遷移宮にあれば、大商人、豪勢な旅商人です。

爛穀堆金
穀物が多すぎて腐り、黄金が積み上がること。きわめて富んでいることを表します。
財蔭
財は武曲星、蔭は天梁星。二つの星は同宮しないので、それぞれが遷移宮に座る場合も含みます。
解説

〈太微賦〉第36段と同じで、形容がより大げさになっています。「堆金積玉」が「爛穀堆金」に、「巨商高賈」が「高商豪客」になっています。前の句の「祿合」は〈太微賦〉の「祿存」より範囲が広く、化禄も含めてよいでしょう。後の句の「財蔭」はやはり武曲星と天梁星が別々に遷移宮に座ることで、巻三は「吉多方論」と言っています。ここで実際に盤を読むときの考え方を一つ補っておきます。遷移宮は命宮の対宮なので、財の星が遷移宮にあれば、財が外から命宮に照らしこむのと同じことになり、だから昔の人は外に出て財を得ると読みました。星格の盤では、対宮は命宮のちょうど向かい側の宮です。

✎ メモ

11耗居敗地沿途丐求,貪會旺宮終身鼠竊。

書き下し耗、敗地に居れば沿途丐求し、貪、旺宮に会すれば終身鼠窃す。

現代語訳破軍星(耗)が敗地にあれば、道すがら物乞いをします。貪狼星が旺の宮で会えば、一生こそ泥をします。

敗地
長生十二位の沐浴で、敗とも呼びます。〈太微賦〉の同じ句は「耗居祿位」です。
鼠竊
ねずみのようにこそこそ盗むこと、こそ泥。
旺宮
巻三の注は「貪狠子午卯酉鼠竊狗偷之輩」(「狠」は「狼」の誤り)としていて、貪狼星が子・午・卯・酉にあることです。

星格のやり方「貪會旺宮」について、巻三〈貪狼〉の注は「貪狠子午卯酉鼠竊狗偷之輩」(「狠」は「狼」の誤り)とし、さらに申子辰年生まれの人は命宮が子、寅午戌年生まれの人は命宮が午、亥卯未年生まれの人は命宮が卯、巳酉丑年生まれの人は命宮が酉に座る場合に限っています。生まれ年の十二支を見る必要があるので、「あなたの命盤」との照合はしていません。

解説

この句の「耗居敗地」は〈太微賦〉の「耗居祿位」と条件が違い、それは上の「星格のやり方」と注で説明しました。補っておきたい理屈は、破軍星は化気が耗で、もともと消耗をつかさどり、沐浴(敗地)に落ちると気が散って集まらず、消耗に消耗が重なるので、道すがら物乞いをすると言う、ということです。二つの版のうち、「敗地」は長生十二神を、「祿位」は禄存か官禄宮を使っていて、判断の道具がまったく違います。後の句の「貪會旺宮」は〈太微賦〉と一字も違わず、巻三の限定は〈諸星同垣:貪狼星〉にあります。この種の断定は、煞星や化忌が重なってこそ重く論じます。

✎ メモ

12殺居絕地生成三十二之顏回,日在旺宮可學八百年之彭祖。

書き下し殺、絶地に居れば生まれて三十二の顔回と成り、日、旺宮に在れば八百年の彭祖を学ぶべし。

現代語訳七殺星が絶地にあれば、生まれつき三十二歳までしか生きなかった顔回のようになります。太陽星が旺の宮にあれば、八百年生きた彭祖のように長生きできます。

顏回
孔子のいちばん賢い弟子で、早くに亡くなりました。ここでは三十二歳としています。
彭祖
八百歳まで生きたと伝えられる長寿の人。〈太微賦〉の同じ句は「貪坐生鄉,壽考永如彭祖」です。

星格のやり方長生十二位の進む向きについて、全書は男命は順に、女命は逆に数えるとしています。星格は陰陽と男女で順逆を決めるので、盤上の絶地の位置が全書どおりに並べた場合と違うことがあります。

解説

前の句は〈太微賦〉と同じで、「三十二」という歳が加わり、顔回の年寿を示しているだけです。後の句はずいぶん違います。〈太微賦〉は「貪坐生鄉,壽考永如彭祖」ですが、ここは「日在旺宮」で、主役が貪狼星から太陽星に替わっています。どちらの理屈も通ります。貪狼星が長生の地にあれば生気が盛んで、太陽星が旺の宮にあれば陽の気が満ちているので、昔の人はどちらも長寿をつかさどると考えました。「あなたの命盤」の照合は、ここに従って太陽星が廟旺で命宮に座る場合を示しています。星格の輝度表では、太陽星は卯で廟、寅・辰・巳・午で旺です。現代に置きかえると、こうした寿命の長短の対句は、健康と活力の傾向として受け取るもので、寿命の予測として使うべきではありません。

✎ メモ

13巨暗同垣於身命疾厄羸瘦其軀,凶星交會於相貌遷移傷刑其面。

書き下し巨暗、身命疾厄に垣を同じくすれば、その軀を羸痩し、凶星、相貌遷移に交会すれば、その面を傷刑す。

現代語訳巨門星と暗の星が身宮・命宮・疾厄宮に同じくあれば、体は痩せて弱くなります。凶星が父母宮(相貌宮)・遷移宮で会合すれば、顔に刑傷を受けます。

巨暗
巨門星は化気が暗なので、「巨暗」は重複しています。〈太微賦〉の同じ句は「忌暗同居」で、化忌と巨門星を指します。
相貌
全書の十二宮の「相貌宮」で、父母宮のことです。

校勘 「巨暗同垣」について、巨門は暗曜そのものなので二字が重複しています。〈太微賦〉の同じ句は「忌暗同居身命疾厄」で、「巨」は「忌」の誤りと思われます。現代語訳は原文どおりに訳し、「あなたの命盤」との照合は「忌暗」(化忌と巨門星)として行っています。

解説

この句は〈太微賦〉第39段に対応していて、「巨暗」と「忌暗」の違いは校勘で説明しました。後半には注目すべき書き換えが一つあります。〈太微賦〉は凶星が父母・遷移に会えば「刑傷破祖」ですが、ここでは凶星が相貌・遷移に会えば「傷刑其面」です。「相貌」は父母宮の別名なので宮は同じですが、断定が「祖業を損なう」から「顔に傷を受ける」に変わっています。これは、父母宮に全書の中で二つの読み方があることを表しています。一つは父母と祖業を見る読み方、もう一つは容貌を見る読み方で、〈斗数準縄〉の「相貌逢凶必帶破相」も後者です。

✎ メモ

14大耗會廉貞於官祿枷杻囚徒,官符會刑殺於遷移離鄉遠配。

書き下し大耗、廉貞に官禄に会すれば枷杻の囚徒、官符、刑殺に遷移に会すれば郷を離れて遠く配せらる。

現代語訳大耗が官禄宮で廉貞星と会合すれば、首かせと手かせをはめられた囚人です。官符が遷移宮で刑の星・殺の星と会合すれば、故郷を離れて遠くへ流されます。

大耗
博士十二神の一つ。破軍星(化気が耗)と解する人もいます。〈太微賦〉の同じ句は「刑殺同廉貞於官祿」です。
枷杻
枷も杻も、昔、罪人をつなぎとめた刑具。
官符
歳前十二神の一つ。流年とともに動き、訴訟をつかさどります。
解説

この句は〈太微賦〉第40段に対応していて、前の句の主語が「刑殺」から「大耗」に替わっています。大耗は博士十二神か歳前十二神の小さな星で、破軍星と解する人もいます。もし破軍星なら、破軍星と廉貞星が一緒に官禄宮にある(卯・酉の二宮だけ)ことが「枷杻囚徒」になります。廉貞星は化気が囚、破軍星は化気が耗で、どちらも凶の性質が重く、仕事の宮にあれば公務で法を犯すことをつかさどります。後の句は〈太微賦〉と同じです。今の読み方では、リスクが高かったり、グレーゾーンの仕事をしたりするときは法規に特に気をつけること、官符の流年が遷移宮に来たら、よその土地での訴訟や処分に気を配ること、ということです。

✎ メモ

15七殺臨於陷地流年必見死亡,耗殺忌逢破軍火鈴嫌逢太歲。

書き下し七殺陥地に臨めば流年必ず死亡を見る。耗殺は破軍に逢うを忌み、火鈴は太歳に逢うを嫌う。

現代語訳七殺星が落陥の地に臨めば、流年に必ず死亡を見ます。耗・殺は破軍星に逢うことを忌み、火星・鈴星は太歳に逢うことを嫌います。

太歲
流年の十二支のある所。
解説

前の句の「七殺臨於陷地,流年必見死亡」は語気がきわめて重いものです。けれども全書巻三の表では七殺星は「無陷」で、星格の輝度表でも七殺星は最も低くて平和(巳・亥)なので、「陷地」を盤上で見つけるのは難しく、煞星が多く条件の悪い位置を広く指しているのかもしれません。巻三の〈諸星同垣:七殺星〉はもっと具体的で、七殺星が身命に臨むと流年に刑・忌の災いと傷があるが、「逢紫微天相祿存可解」としています。後の句は、耗・殺は破軍星に遇うことを恐れ、火星・鈴星は太歳に遇うことを恐れるということで、どれも流年で凶星が重なることを言っています。今の言葉で言えば、流年で凶星が重なるときは控えめに過ごし、リスクの高い活動は避けるのがよい、ということです。

✎ メモ

16奏書博士並流祿以盡乎吉祥,力士將軍與青龍以顯其威福。

書き下し奏書博士並びに流禄はもって吉祥を尽くし、力士将軍と青竜はもってその威福を顕す。

現代語訳奏書・博士と流年の禄存星は、どれも吉祥をつかさどります。力士・将軍と青竜は、威勢と福を表します。

奏書博士
奏書・博士・力士・将軍・青竜は、どれも博士十二神の星です。
流祿
流年の禄存星。
解説

この句は〈太微賦〉第44段と同じで、「顯其權勢」を「顯其威福」に変えただけです。博士十二神はどの宮にも順に回ってくるので、これらの吉神は加点であって主役ではありません。補っておくと、博士十二神は禄存星の位置から起こし、いつも禄存星のある宮から博士を並べていきます。「博士」と「流祿」がよく一緒に語られるのはそのためです。星格の盤ではどの宮の下にも博士十二神が並んでいて、博士十二神の課に詳しい説明があります。現代に置きかえると、こうした吉神が流年に現れたら、その年のささやかな幸運、文書や人付き合いでの順調さと読めます。

✎ メモ

17童子限弱水上浮漚,老人限衰風中燃燭。

書き下し童子の限は弱く水上の浮漚、老人の限は衰えて風中の燃燭。

現代語訳子どもの運限は弱く、水の上の泡のようです。老人の運限は衰えていて、風の中でともる蝋燭のようです。

浮漚
水の泡。
解説

この句は〈太微賦〉第45段とほとんど同じで、「如」「似」を「弱」「衰」の二字に替えて、意味をはっきりさせています。童子の限は弱く、老人の限は衰えている、ということです。この書き換えは助けになります。子どもや老人に「必ず」災いがあると言っているのではなく、この二つの時期はもともと体力も抵抗力も弱いので、凶星に遇うと問題が起きやすい、ということがわかるからです。全書には〈小児の命を論ず〉という専門の篇もあります。幼い子や年配の人の健康に気を配るのはもともと常識で、命盤でこの二つの時期の運限に煞星や化忌が見えたら、もう一歩注意する目安として受け取るとよいでしょう。

✎ メモ

18遇殺必驚,流年最緊。

書き下し殺に遇えば必ず驚く、流年最も緊なり。

現代語訳煞星に遇えば必ず驚くようなことがあります。流年がいちばん大事です。

解説

この句はわずか八文字で、〈太微賦〉の「遇殺無制乃流年最忌」を縮めたものですが、「無制」の二字が抜けて「遇殺必驚」になっています。「無制」がないと、意味はより断定的になり、殺星に遇えば必ず驚くことがある、となります。二つの版を比べると〈太微賦〉の言い方のほうが周到で、制するものがあれば忌まない、としています。盤を読むときは〈太微賦〉の条件を基準にし、流年に殺星が見えたら、三方四正に吉星や化禄・化科がそれを制しているかを見るのがよいでしょう。「流年最緊」は、流年がいちばん注意すべき時間の単位で、大限よりも直接その年の出来事を映す、ということです。

✎ メモ

19人生發達限元最怕浮沉,一世迍邅命限逢乎駁雜。

書き下し人生の発達は限元に最も浮沈を怕れ、一世の迍邅は命限の駁雑に逢えばなり。

現代語訳人生で発達するには、運限が浮き沈みすることを最も恐れます。一生行き詰まって不遇なのは、命と運限が吉凶入り混じったものに遇うからです。

迍邅
行き詰まって、道を進むのが難しいこと。
駁雜
吉星と凶星が入り混じって純粋でないこと。
解説

この句は〈太微賦〉第46段を書き直したもので、「榮辱」を「發達」に、「孤貧」を「迍邅」にし、「浮沉」と「駁雜」の二つの問題をはっきり示しています。発達する人は運限の浮き沈みを恐れ、行き詰まる人は命と運限に吉凶が入り混じっている、ということです。この「駁雜」の考え方は全書にくり返し出てきて、〈形性賦〉も「假如運限駁雜終有浮沉」と言っています。今の言葉で言えば、人生でいちばん難しいのはずっと低いことではなく、上がったり下がったりして積み上げにくいことです。盤を読むときは、吉凶が入り混じった大限を見つけて、前もってリスクの管理をしておくとよいでしょう。

✎ メモ

20論而至此允矣玄微。

書き下し論じて此に至れば允に玄微なり。

現代語訳ここまで論じてくると、まことに玄妙で精微です。

允
まことに、たしかに。
解説

結びの一句で、〈太微賦〉の「學至此誠玄微矣」と呼応しています。〈重補斗数彀率〉を通して読むと、これが〈太微賦〉の別の伝本か書き直し本であることがわかります。大部分の句は同じですが、少なからぬ条件が入れ替わっています(福徳が官禄に、貪狼が太陽に、刑が天刑に、禄位が敗地に)。こうした違いが読者にとっていちばん価値があるのは、昔の書物の条件はもともと一枚岩ではなく、同じ一句が全書の中で二つ三つの版を持つことがある、と気づかせてくれる点です。断定を読むときは、どの版が正しいかにこだわるより、その背後にある共通の理屈をつかむほうが役に立ちます。

✎ メモ

よくある質問

〈重補斗数彀率〉とは何ですか?

〈重補斗数彀率〉は『紫微斗数全書』巻一の一篇です。彀率は弓を引く基準で、法則のたとえです。内容の多くは〈太微賦〉に近く、看盤の基準を改めて整理し書き足したものです。たとえば紫微と輔弼が同垣すれば必ず貴い、貪狼が子に居れば泛水桃花、殺が絶地に居れば顔回のよう、といった句があります。

「財印夾命,日月夾財」とはどんな格局ですか?

財は武曲星(化気が財)、印は天相星(化気が印)で、財印夾命は命宮の左右の隣に武曲星と天相星があることです。日月夾財は太陽星・太陰星が財帛宮(あるいは武曲星)を挟むことです。〈重補斗数彀率〉はこうした配置に遇えば「其富何疑」としています。

「殺居絕地生成三十二之顏回」とはどういう意味ですか?

七殺星が長生十二位の絶地にあると寿命が短く、三十二歳までしか生きなかった顔回のようだ、という意味です。続く「日在旺宮可學八百年之彭祖」は、太陽星が旺の宮にあれば、八百歳まで生きたと伝えられる彭祖のように長生きできる、ということです。〈太微賦〉の同じ句は「貪坐生鄉,壽考永如彭祖」となっています。

この篇に出てくる主星

紫微星太陽星廉貞星太陰星貪狼星七殺星
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