形性賦
『紫微斗数全書』巻一・賦文・諸星問答と格局・原文と現代語訳
はじめに
〈形性賦〉は『紫微斗数全書』巻一で〈太微賦〉のすぐ後に置かれた篇で、「形」と「性」だけを扱います。星が命宮に座るとき、その人がどんな顔立ちで、背の高さや体格はどうか、気性はどうかということです。後の命理書が「星の性情」や「容貌の見方」を語るときの、主な源になった篇です。
全篇はおおよそ三つに分かれます。
- 第1〜13段は星ごとの描写です。紫微は厚重、天府は純和、太陽は円満、太陰は清奇、廉貞は眉が広く口が大きく、気性が荒く争いを好み、七殺は子路の暴虎馮河のよう、火星・鈴星は予譲が炭を呑んで唖を装ったよう、擎羊・陀羅は形が醜く容貌が粗く、破軍は背が厚く眉が広く、腰が曲がり奸詐だとします。
- 第14〜24段は組み合わせと宮の話です。廟旺でも空亡を恐れること、禄が梁蔭に逢うこと、耗が貪狼に遇うこと、貪狼が馬垣にあれば善にも悪にもなりやすいこと、さらに子女宮・父母宮に孤星・悪星があるときの断定が並びます。
- 第25〜32段はもう一度容貌を補い(紫微の肥満、日月曲相同梁機昌の美しさ)、最後に運限の高低と浮き沈みを論じます。
賦の中の「命宮に座る」はたいてい明記されていませんが、全書の通例どおりすべて命宮として読みます。底本には字句の通じない所がいくつかあり、たとえば「浽淫情於井底」の「浽」や「暗狼聲沉」は、注と校勘で説明しています。現代語訳は原文どおりに直訳し、「奸盜之技兒」「豬屠之流」も字面どおりに訳しています。
1原夫紫微帝座,生為厚重之容。天府尊星,也作純和之體。
書き下し原ぬるに夫れ紫微は帝座、生まれて厚重の容と為す。天府は尊星、また純和の体を作す。
現代語訳そもそも紫微星は帝座の星で、(命宮に座る人は)生まれつき重厚な容貌です。天府星は尊い星で、これも純朴で穏やかな体つきです。
- 原夫
- 賦の書き出しに使う発語の言葉で、「そもそも」「たずねてみれば」という意味。
- 帝座
- 紫微星は北斗の帝星なので帝座と呼びます。
〈形性賦〉は冒頭で南北斗の二つの主星を描きます。紫微星は帝座で土に属し、土の性質は厚いので「厚重之容」と言います。天府星は南斗の主星で、これも土に属し、財の蔵と守りをつかさどるので「純和之體」と言います。どちらも落ち着いた型の星で、外見や雰囲気が頼もしく、場を引き締める印象を与えます。全書巻二の〈紫微星の性情〉はもっと具体的で、「面紫色或白青,腰背肥滿,為人忠厚老成」と書いています。こうした容貌の描写は昔の人の観察をまとめたものなので、雰囲気の傾向として読めば十分です。命宮の主星は容貌の一つの要素にすぎず、同宮する補佐の星や煞星も、見た目の印象を変えます。
2金烏圓滿,玉兔清奇。
書き下し金烏は円満、玉兎は清奇なり。
現代語訳太陽星(が命宮にある人)は顔立ちが丸く豊かで、太陰星(が命宮にある人)は清らかで秀でています。
- 金烏
- 昔の人は太陽の中に三本足の烏がいると言い、金烏は太陽を指します。
- 玉兔
- 月には玉兎がいると伝えられ、玉兎は太陰を指します。
「金烏」「玉兔」で太陽・太陰を言い表すのは、賦という文体の修辞です。太陽の円満は、顔が丸く血色が明るく、生き生きしているということです。太陰の清奇は、すっきりと整っていて、静かな独特の雰囲気があるということです。昔の人の理屈はとても素直で、太陽は丸く光を放ち、月は冷たく澄んで満ち欠けがある、というものです。輝度の影響には注意が必要です。太陽星が落陥する(たとえば子・亥にある)と、円満の輝きは割り引かれ、外は明るく内は疲れている、とよく言われます。太陰星が落陥する(卯・辰・巳にある)と、清奇は憂いの多さに変わります。星格の盤で輝度の小さな字を見れば、この句がその盤でどこまで当てはまるかがわかります。
3天機為不長不短之姿,情懷好善。武曲乃至要至緊之操,心性果決。
書き下し天機は長からず短からざる姿と為し、情懐は善を好む。武曲は乃ち至要至緊の操にして、心性は果決なり。
現代語訳天機星は高すぎも低すぎもしない体つきで、心は善を行うことを好みます。武曲星はこの上なく大事なことを、この上なくしっかり握る操守の持ち主で、心の性質は果断です。
- 操
- 操守。物事を行うときの決まりごと。
天機星の「不長不短」は中くらいの体格で、「情懷好善」は天機星の化気が善であることと呼応していて、頭がよく回り、人のために知恵を出したがるということです。武曲星の「至要至緊之操」はとても興味深い表現です。武曲星は金に属し、化気は財で、お金にも原則にもしっかりしがみつくので、心の性質が果断だと言います。今の言葉で言えば、天機星が命宮にある人は頭の回転も反応も速い企画型、武曲星が命宮にある人は言ったことはやる実行型ですが、気持ちを表に出すのは苦手です。この二句は輝度に触れていませんが、盤を読むときはやはり見ます。天機星が落陥すると移り気で考えすぎになり、武曲星が落陥するか化忌になると、果断が頑固に変わりやすくなります。
4天同肥滿,目秀清奇。廉貞眉寬,口闊面橫,為人性暴,好忿好爭。
書き下し天同は肥満にして、目秀でて清奇なり。廉貞は眉寛く、口闊く面横たわり、人と為り性暴く、忿を好み争いを好む。
現代語訳天同星は体つきが太って豊かで、目は秀でて清らかです。廉貞星は眉が広く、口が大きく顔が横に張り、人となりは気性が荒く、怒ることを好み、争うことを好みます。
- 面橫
- 顔が横に広く、凶相を帯びていること。
天同星は水に属し、化気は福で、福の星の姿は「肥滿」、つまり体が丸みを帯び、雰囲気が穏やかだということです。「目秀清奇」は目に力があるということです。〈天同星の性情〉は「入廟肥滿清明」と条件を補っています。廉貞星の描写はとても険しく、眉が広く口が大きく顔が横に張り、気性が荒く争いを好むとされます。廉貞星は火に属し、化気は囚です。火の性質はせっかちで、「囚」は閉じこめられた力なので、いったん噴き出すと怒りや争いになります。現代に置きかえると、廉貞星が命宮にある人は感情が強く負けず嫌いですが、原則があり自分を律することもできます。全書はここで廉貞星の火の面だけを書いているので、読むときは同宮の星を見る必要があります(たとえば廉貞・天府や廉貞・天相なら、ずっと安定します)。
5貪狼為善惡之星,入廟必應長聳,出垣必定頑囂。
書き下し貪狼は善悪の星と為し、廟に入れば必ず応に長聳なるべく、垣を出ずれば必定頑囂なり。
現代語訳貪狼星は善にも悪にもなる星です。入廟すれば、体つきは必ず背が高くすらりとし、廟の位置を離れれば、必ず頑なで騒がしくなります。
- 長聳
- 背が高く、すらりとしていること。
- 出垣
- 星が力を得る宮を離れること。入廟の反対。
- 頑囂
- 頑なで騒がしいこと。
貪狼星は全書の中でも評価がいちばん両極に分かれる星の一つで、この句ははっきり「善惡之星」と言っています。決め手は廟旺です。星格の輝度表では、貪狼星は辰・戌・丑・未で廟、巳・亥で落陥です。入廟すれば背が高く堂々として勢いがあり、廟の位置を離れれば頑なで騒がしい、というわけです。注意したいのは、全書の篇によって貪狼星の容貌の説明が違うことです。〈貪狼星の性情〉は「入廟長聳肥胖,陷宮形小聲高而量大」と言い、〈貪狼星の主るところは〉は「主人矮小」としか言いません。この種の容貌の描写は、星の名前だけでなく、まず輝度を第一に置いて読むのがよいでしょう。
6巨門乃是非之曜,在廟敦厚溫良。天相精神,天梁穩重,心事玉潔冰清。
書き下し巨門は乃ち是非の曜、廟に在れば敦厚温良なり。天相は精神あり、天梁は穏重にして、心事は玉潔氷清なり。
現代語訳巨門星は是非を招く星ですが、廟にあれば誠実で厚みがあり、穏やかで善良です。天相星は精気にあふれ、天梁星は落ち着いて重みがあり、心は玉のように潔く、氷のように清らかです。
- 曜
- 星。
巨門星は化気が暗で、「是非之曜」です。口論、言い争い、疑いはどれもこの星の本来の色です。けれども廟にあれば「敦厚溫良」で、同じ星でも廟と落陥でずいぶん違います。星格の輝度表では、巨門星は寅・卯・申・酉で廟です。後半は天相星の「精神」、天梁星の「穩重」、そして心が玉潔氷清であることを書いています。天相星は化気が印で、公正さと調整をつかさどり、天梁星は化気が蔭で、原則と人の世話をつかさどります。今の読み方では、天相星・天梁星が命宮にある人は信頼できる印象を与え、誠実さが求められる立場に向いています。天梁星の「冰清」には裏の面もあり、それはお高くとまったり、説教好きだったりすることです。
7七殺如子路暴虎馮河,火鈴似豫讓吞炭裝啞。
書き下し七殺は子路の暴虎馮河のごとく、火鈴は予譲の炭を吞み唖を装うに似たり。
現代語訳七殺星は子路のように、素手で虎に立ち向かい、歩いて大河を渡るような人です。火星・鈴星は予譲のように、炭を呑んで喉をつぶし、唖のふりをするような人です。
- 子路
- 孔子の弟子の仲由。勇猛で知られました。
- 暴虎馮河
- 素手で虎を打ち、舟を使わず歩いて川を渡ること。孔子が勇気だけで謀のない人を言った言葉。
- 豫讓吞炭
- 戦国時代の刺客の予譲は、主君の智伯の仇を討つため、体に漆を塗ってただれさせ、炭を呑んで声をつぶし、誰にも見分けられないようにしました。
この句は二つの歴史の故事で煞の性質を持つ星を描いています。七殺星は子路のようで、勇猛で真っ先に飛び出しますが、孔子は子路を「暴虎馮河」、つまり勇気だけで謀がないといさめました。火星・鈴星は予譲のようで、仇を討つためなら炭を呑んで姿を変え、恥を忍んで潜むこともできる、極端な意志の力と忍耐の持ち主です。二つの故事の選び方はとても的確で、七殺星は外に出る猛々しさ、火星・鈴星は内に秘めた激しさです。今の言葉で言えば、七殺星が命宮にある人は勢いがあり決断も速いので、学ぶべきは計画を立ててから動くことです。火星・鈴星が命宮にある人は思いこみが深く爆発力も強いので、学ぶべきは感情の出口をつくることです。〈七殺星の性情〉は七殺星について「廟旺有謀略」と言っていて、廟旺なら勇気と謀を兼ねられることがわかります。
8暴虎馮河兮目太凶狠,吞炭裝啞兮暗狼聲沉。
書き下し暴虎馮河は目太だ凶狠なり、炭を吞み唖を装うは暗狼にして声沈む。
現代語訳暴虎馮河のような(七殺星の)人は、目つきがひどく凶暴です。炭を呑んで唖を装うような(火星・鈴星の)人は、声がかすれて低く沈んでいます。
- 暗狼聲沉
- 「暗狼」は意味がはっきりしません。前の句の「吞炭裝啞」に合わせると、声がかすれて低く沈んでいるという意味になります。
校勘 「暗狼聲沉」は文意が通らず、誤字があると思われます(暗唖・喑唖のような語か)。現代語訳は、前の句の予譲が炭を呑んで唖を装ったという意味に従って訳しています。
この句は前の句の故事を外見に落としこんでいます。七殺星の目つきは凶暴で、火星・鈴星の声はかすれて低い、ということです。「暗狼聲沉」の字面の問題は、校勘で説明しました。補っておきたいのは、昔の人相見は目つきと声を重んじたということです。この二つがいちばん性格をよく表すからです。七殺星が命宮にある人は目つきが鋭く威圧感がある、というのはよく見かける描写です。火星・鈴星は声が低く口数が少ないとされ、鈴星の「くすぶるように燃える」性質とも合っています。今盤を読むときに、この句で人相を見る必要はありませんが、この二種類の星の人は、第一印象では近寄りにくいと思われがちだ、と受け取ることはできます。
9俊雅文昌眉清目秀,磊落文曲口舌便佞,在廟定生異痣,失陷必有斑痕。
書き下し俊雅なる文昌は眉清く目秀で、磊落なる文曲は口舌便佞なり。廟に在れば定めて異痣を生じ、失陥すれば必ず斑痕有り。
現代語訳文昌星は端正で上品で、眉は清らかで目は秀でています。文曲星は明るく大らかで、弁が立ち、口がうまいです。廟にあれば必ず珍しいほくろがあり、落陥すれば必ずしみや傷跡があります。
- 便佞
- 弁が立ち、人に取り入る言葉がうまいこと。古書ではたいてい悪い意味で使います。
- 異痣
- 珍しい場所にある、または珍しい形のほくろ。
文昌星・文曲星はどちらも文の星ですが、雰囲気は違います。文昌星は端正で上品、眉が清らかで目が秀で、正統な学問に寄っています。文曲星は大らかで弁が立ち、話術や才芸に寄っています。「便佞」は古書では悪い意味を帯び、口がうまいことを指します。現代に置きかえると、話がうまく表現力があるということで、よく使えばコミュニケーション力、悪く使えば口先だけ、となります。後半の「在廟定生異痣,失陷必有斑痕」はとても具体的な容貌の断定で、全書巻三にも似た説があります。たとえば〈諸星同垣:文昌星・文曲星〉は、昌曲・左右が羊陀に会えば「當生異痣」と言います。この種の断定は昔の人の観察記録として読むもので、命盤を確かめる材料にするのには向きません。
10左輔右弼溫良規模,端莊高士。天魁天鉞具足威儀,重合三臺則十全模範。
書き下し左輔右弼は温良の規模、端荘の高士なり。天魁天鉞は威儀を具足し、重ねて三台に合すればすなわち十全の模範なり。
現代語訳左輔星・右弼星は温和で善良な姿で、端正で重々しい、品格の高い人です。天魁星・天鉞星は威厳ある身のこなしを備えていて、さらに三台に会合すれば、非の打ちどころのない手本となります。
- 規模
- 姿、度量。
- 三臺
- 一般には三台星と解します。三台はもともと星の名前でもあり、昔は三公という高い位も指しました。
左輔星・右弼星は助けの星で、雰囲気は温和で端正です。天魁星・天鉞星は貴人の星で、威厳があります。「重合三臺」の三台に二つの解釈があることは注で説明しました。この四つはどれも六吉星で、命宮に座ると、昔の人は「模範」型の人物として描きました。決まりを守り、礼儀正しく、人に信頼される人です。注意したいのは、この四つはどれも主星ではないことです。単独で命宮に座る(命宮に主星がない)ときは、力を対宮の主星から借りることになります。全書は〈太微賦〉で別に「輔弼單守命宮,離宗庶出」とも言っていて、同じ左輔・右弼が命宮にあっても、主星があるかないかで結論がまったく違うことがあります。
11擎羊陀羅,形醜貌粗,有矯詐體態。
書き下し擎羊陀羅は、形醜く貌粗く、矯詐の体態有り。
現代語訳擎羊星・陀羅星(が命宮にある人)は、体つきが醜く、顔立ちが粗野で、取り繕った、ずるがしこい物腰があります。
- 矯詐
- 見せかけ、偽り。
擎羊星・陀羅星は六煞星の中でいちばんよく出てくる二つで、ここに書かれているのは命宮に座るときの外見と物腰です。体つきは醜く顔立ちは粗く、取り繕ったずるさを帯びている、と言います。擎羊星は金に属し、化気は刑で、剛く猛々しくぶつかっていく性質をつかさどります。陀羅星も金に属し、化気は忌で、遅れやもつれをつかさどります。昔の人はこの二つを、粗い容貌と腹黒さに直接結びつけていて、とても重い描写です。今の読み方では、擎羊星が命宮にある人は目立つけがや傷跡があることが多く、性格はまっすぐ突き進む型です。陀羅星が命宮にある人は物事の進め方が回りくどく、打ち解けるのに時間がかかります。羊陀が辰・戌・丑・未で入廟するときは、〈擎羊星の性情〉も「入廟權貴」「橫立功名」と言っていて、悪いことばかりではありません。
12破軍不仁,背重眉寬,行坐腰斜奸詐好行驚險。
書き下し破軍は不仁にして、背重く眉寛く、行坐に腰斜めなり。奸詐にして好んで驚険を行う。
現代語訳破軍星は思いやりに欠け、背が厚く眉が広く、歩くときも座るときも腰が傾いていて、ずるがしこく、危ないことをするのを好みます。
破軍星は化気が耗で、「まず壊してから立てる」星です。「不仁」「奸詐好行驚險」は全書の破軍星に対する典型的な悪評で、「背重眉寬,行坐腰斜」は外見です。〈破軍星の性情〉もほとんど同じで、「體型五短背厚眉寬腰斜,性剛寡合,好爭強」とし、さらに「棄祖發福」を補っています。今の言葉で言えば、破軍星が命宮にある人は型どおりに進まず、危険を冒すことも、一からやり直すことも恐れないので、起業や改革、危機対応に向いています。「不仁」は、目標のためには人の気持ちをあまり気にかけない、ということです。破軍星が廟旺(子・午)のときは、全書のほかの篇の評価ははっきり高くなります。
13性貌如春和藹,乃是祿存之情德。情懷似火鋒沖,此誠破耗之威權。
書き下し性貌は春のごとく和藹なるは、乃ち是れ禄存の情徳なり。情懐は火に似て鋒沖するは、此れ誠に破耗の威権なり。
現代語訳性格も顔立ちも春のように和やかなのは、禄存星の性情と徳です。心が火のようで、鋭さが突き上げてくるのは、まことに破耗(破軍星)の威勢です。
- 破耗
- 破軍星。化気が耗です。
これは一組の対比です。禄存星の「如春和藹」と、破軍星の「似火鋒沖」です。禄存星は財禄の星で、性質は保守的で穏やか、守りに強いので和やかだとされます。破軍星は耗の星で、勢いが強く鋭さが表に出るので、威権があると言います。〈形性賦〉は第12段ですでに破軍星を書いていて、ここでもう一度書くのは「性」の面から補うためです。星格の盤では、禄存星はいつも擎羊星・陀羅星に前後から挟まれているので、禄存星が命宮にある人は穏やかでも、しばしば縛られて身動きがとりにくくなります。破軍星が命宮にある人の威権は、化権や化禄が加わって強まるかどうかを見ます。
14星論廟旺最怕空亡,殺落空亡竟無威力。
書き下し星は廟旺を論じ、最も空亡を怕る。殺、空亡に落つれば竟に威力無し。
現代語訳星を論じるときは廟旺を見ますが、最も恐れるのは空亡に落ちることです。殺星が空亡に落ちると、まったく威力がなくなります。
- 空亡
- 旬空・截空のような「空」の位置。星がここに落ちると力が浮ついて実がありません。
この句は全書でくり返し出てくる原則です。星の力は廟旺で見ますが、いちばん恐れるのは空亡です。前半は吉星が空に落ちると、よさが浮ついて実がなくなるということ、後半は煞星(殺)が空に落ちると、かえって威力がなくなるということです。これはちょうど空亡の二つの面で、吉星は空を恐れ、煞星は空を喜びます。〈七殺星の性情〉も七殺星について「落空亡無威力」と言っています。星格の盤では、「空亡」はその宮に旬空・截路・空亡、あるいは地空・地劫があるかで見られます。現代に置きかえると、勢いの強すぎる組み合わせが空に会うとかえって落ち着き、資源の星が空に会うと、当てが外れないよう気をつける必要がある、ということです。
15權祿乃九竅之奇,耗積散平生之福。
書き下し権禄は乃ち九竅の奇、耗は積みし平生の福を散ず。
現代語訳化権・化禄は、九竅(目・耳・鼻・口などの九つの穴)までさとく通じさせ、人を抜きんでて優れた者にします。耗の星は、一生かけて積み上げた福を散らします。
- 九竅
- 人の体の九つの穴(目・耳・鼻・口など)。ここでは聡明で器用なことを指します。原文が簡略で、解釈は人によって違います。
- 耗
- 破軍星(化気が耗)。大耗を指すこともあります。
「權祿乃九竅之奇」の字義は注で説明しました。化権は掌握と能力を、化禄は資源と人の縁をつかさどり、命宮に座るか命宮を照らすと、聡明で機転がきき、やりくりの上手な人になります。後半の「耗」は一般に破軍星を指しますが、雑曜の大耗のこともあり、一生かけて積み上げた福を散らすことをつかさどります。この対句は、四化と耗の星が「福」にどう働くかを言っています。権禄は足し算、耗は引き算です。盤を読むときは、まず命宮の三方四正に化禄・化権がいくつあるかを見て、次に破軍星・大耗の位置を見ます。破軍星自身が化禄か化権になっていれば(癸年は化禄、甲年は化権)、耗の力は切り開く力に変わります。
16祿逢梁蔭抱私財益與他人,耗遇貪狼浽淫情於井底。
書き下し禄、梁蔭に逢えば私財を抱きて他人に益与し、耗、貪狼に遇えば情を井底に浽淫す。
現代語訳禄の星が天梁星(蔭)に出会えば、自分の私財を抱えながら、それで他人を利してしまいます。破軍星(耗)が貪狼星に出会えば、井戸の底のような下劣な場所でほしいままに淫らにふけります。
- 梁蔭
- 天梁星。化気が蔭です。
- 井底
- 字面は井戸の底。一般には市井の底辺、人目をはばかる場所と解します。
校勘 「浽淫情於井底」の「浽」はまれな字で文意が通らず、「縱」か「恣」の誤りと思われます。現代語訳は「縱」として訳しています。
前半の「祿逢梁蔭」は、天梁星と禄存星が同宮するか、天梁星が化禄になる(壬年)ことです。天梁星は蔭の星で清廉なので、財を持っても自分には残さず「抱私財益與他人」となります。今の読み方では、お金がよく人の世話や公益、付き合いに使われ、自分はかえって豊かにならない、ということです。後半の「耗遇貪狼」については、盤上の事実に一つ注意が必要です。破軍星と貪狼星はいつも互いの三方にあり、破軍星が命宮に座れば必ず貪狼星を会照します。ですからこの句は、破軍星が命宮にある人すべてにこの象があると言っているのと同じことになり、昔の人が言いたかったのは、会照に加えて煞星・化忌や桃花の星が重なる場合だと考えられます。〈諸星同垣:破軍星〉の「破軍貪狼逢祿馬,男多浪蕩女多淫」は、条件がもっとはっきりしています。
17貪星入於馬垣易善易惡,惡曜扶同善曜稟性不常。
書き下し貪星、馬垣に入れば善なり易く悪なり易し。悪曜、善曜に扶同すれば稟性常ならず。
現代語訳貪狼星が馬垣(寅・申・巳・亥)に入ると、善にもなりやすく、悪にもなりやすいです。悪い星と善い星が一緒に支えると、生まれ持った性質が一定しません。
- 馬垣
- 天馬星は寅・申・巳・亥の四宮にしか入らないので、四馬の地と呼びます。
「馬垣」は寅・申・巳・亥です。貪狼星がこの四宮にあるとき、星格の輝度では寅・申が平和、巳・亥が落陥で、どれも貪狼星の強い位置ではありません。だから「易善易惡」と言うのです。輝度の支えがないので、よしあしはすべて同宮と会照の星しだいです。貪狼星は巳・亥では必ず廉貞星と同宮し、二つとも桃花の性質の星で、しかも落陥するので、全書は廉貞・貪狼の巳亥を一貫して低く評価しています。後半の「惡曜扶同善曜」は話を広げたもので、吉星と煞星が一緒に来ると、人の性格が揺れ動くということです。今の言葉で言えば、こうした盤の人は環境しだいでどうにでも変われるので、環境がよければよい方向に進み、悪ければ流されやすい。付き合う相手や職場選びが特に大事になります。
18財居空亡巴三覽四,文曲旺宮聞一知十。暗合廉貞為貪濫之曹吏。
書き下し財、空亡に居れば巴三覧四、文曲旺宮なれば一を聞きて十を知る。暗、廉貞に合すれば貪濫の曹吏と為す。
現代語訳財の星が空亡にあると、あちこちに手を広げてつかみどころがありません。文曲星が旺の宮にあると、一を聞いて十を知ります。暗の星(巨門星)が廉貞星とひそかに合わさると、欲深くむやみに取り立てる小役人になります。
- 財
- 財の星。一般には武曲星(化気が財)を指します。
- 巴三覽四
- 巴三攬四とも書き、あれこれ手を出して引っかき回し、言動がとりとめのないこと。
- 暗
- 巨門星。化気が暗です。巨門星と廉貞星は同宮せず、三方四正で会うこともありません。二つの星の地支の番号は足すとつねに十一になり、六合(足して一になる組、子丑・寅亥など)にもなりません。「暗合」は盤上に対応する位置がありません。
- 曹吏
- 役所で部署ごとに事務をとる下級の役人。
三つの事柄がそれぞれ独立しています。一つ目は、財の星(武曲星)が空亡に落ちると「巴三覽四」で、あちこちに手を伸ばしても実を結ばないことです。〈太微賦〉の「金星專司財庫,最怕空亡」と照らし合わせられます。二つ目は、文曲星が旺の宮にあると聡明で、一を聞いて十を知ることです。星格の輝度表では、文曲星は丑・巳・酉で廟、卯・未・亥で旺です。三つ目は、巨門星が廉貞星と「暗合」することです。二つの星は同宮もせず三方四正にも入りません。ひそかな六合と解する人もいますが、注のとおり二つの星の地支は六合にならないので、この半句は盤上のどの組み合わせにも当たらず、説が大きく分かれています。「貪濫之曹吏」は昔の、小さな利益をむさぼる小役人のことで、現代では、制度の抜け穴を突く人と読めます。
19身命司數實奸盜之技兒,豬屠之流。善祿定是奇高之藝細巧,伶俐之人。
書き下し身命に数を司れば実に奸盗の技児、豬屠の流なり。善禄は定めて是れ奇高の芸、細巧伶俐の人なり。
現代語訳(この組み合わせが)身宮・命宮にあれば、まことに悪だくみと盗みの手口を使う輩、豚を屠る者の類です。善の星(天機星)が禄に出会えば、必ず珍しく高度な技芸を持ち、手先が器用で、利発な人です。
- 司數
- 意味がはっきりしません。前の句の組み合わせが身宮・命宮にある、という意味だと思われます。
- 技兒
- 手口を使う者。
- 善祿
- 善は天機星の化気。禄は禄存星か化禄を指します。
「身命司數」の意味がはっきりしないことは注で説明しました。この半句の主語は前の段の終わりの「暗合廉貞」の組み合わせのはずで、「奸盜之技兒,豬屠之流」は貪濫の曹吏を受けてさらに言い進めたもので、全書の中でもとても重い悪口です。後半は良い方向に転じます。「善祿」は天機星が禄に遇うこと(天機星の化禄は乙年、または禄存星と同宮)で、もともと聡明な天機星に禄が加わって、手先が器用で利発な人になります。現代に置きかえると、天機星が化禄になる人は、設計や工学、プログラミングのように工夫と技術の要る仕事に向いています。〈諸星同垣:武曲星〉には別に「武曲貪狼加殺忌技藝之人」とあり、全書の技芸への評価はたいてい中立からやや低めです。これは昔の、仕官を重んじて職人を軽んじた考え方によるものです。
20男居生旺最要得地,女居死絕專看福德。
書き下し男は生旺に居りて最も得地を要し、女は死絶に居れば専ら福徳を看る。
現代語訳男命が長生・帝旺の地にあるときは、星が得地していることが最も大事です。女命が死・絶の地にあるときは、もっぱら福徳宮を見ます。
- 生旺
- 長生十二位のうちの長生・帝旺と、死・絶。
星格のやり方長生十二位の進む向きについて、全書は男命は順に、女命は逆に数えるとしています。星格は陰陽と男女で順逆を決めるので、盤上の生旺死絶の位置が全書どおりに並べた場合と違うことがあります。
この句は男女で見方を分けていて、昔の命理ではよくあるやり方です。前半は、男命は長生・帝旺の地を見て、星が得地していることが最も大事だということ、後半は、女命が死・絶の地にあれば、もっぱら福徳宮を見るということです。昔の人の理屈は、女命は安らかさと福を重んじるので、命宮が気の弱い地にあっても、福徳宮がよければ穏やかに暮らせる、というものです。全書の〈男命・女命の異同を論ず〉も、女命は「次看福德宮吉凶」と言っています。現代に引き直すと、男女を分けなくてかまいません。命宮の条件が弱い人にとっては、心の暮らしと内面の満足(福徳宮)が、一生を楽しく過ごせるかどうかの決め手になることがよくあります。長生の向きの違いは、上の「星格のやり方」で説明しました。
21命最嫌立於敗位,財源卻怕逢空亡。
書き下し命は最も敗位に立つを嫌い、財源は却って空亡に逢うを怕る。
現代語訳命宮は敗地に立つことを最も嫌い、財源は空亡に出会うことを恐れます。
- 敗位
- 長生十二位の沐浴。敗地とも呼びます。
前半の「命最嫌立於敗位」の敗位は長生十二神の沐浴で、命宮がここにあると気が散って集まらず、昔の人は一生波乱が多く、誘惑に流されやすいと考えました。沐浴は桃花の地とも見なされるので、恋愛が移ろいやすいという読み方もあります。後半の「財源卻怕逢空亡」は、財帛宮か財の星が空亡に落ちると、財があっても集まりにくいということです。この句は星格の禄逢旬空のような格局の根拠の一つでもあります。ただし星格が判定するのは禄の星(禄存星か化禄)と天馬星が空に落ちる場合だけで、禄の星は命宮・身宮・財帛宮で、天馬星は命宮・身宮で判定します。盤を読むときは、まず命宮の下の長生十二神が沐浴かどうかを見て、次に財帛宮に旬空・截路・地空・地劫があるかを見るとよいでしょう。
22機刑殺蔭孤星論嗣續之宮加惡星忌耗,不為奇特。
書き下し機刑殺蔭の孤星、嗣続の宮を論じて悪星忌耗を加うれば、奇特と為さず。
現代語訳天機星・刑(擎羊星)・七殺星・蔭(天梁星)は孤星で、跡継ぎを論じる宮(子女宮)にこれらの星があり、さらに悪い星・化忌・耗の星が加われば、よいとは言えません。
- 孤星
- 孤独で頼るものが少ないことをつかさどる星。
- 嗣續之宮
- 家を継ぐ者を見る宮、つまり子女宮。
- 不為奇特
- すぐれているとは言えない、つまりよくないということ。
この句は四つの「孤星」を挙げています。天機星、擎羊星(刑)、七殺星、天梁星(蔭)です。これらが子女宮にあり、さらに悪い星・化忌・耗の星が加わると、子孫にとってよくないとされます。なぜこれらが孤星なのでしょうか。天機星は変化と考えの多さを、擎羊星は刑剋を、七殺星は厳しさと単独行動を、天梁星は清廉さと、世話をされるより人の世話をすることを好む性質をつかさどります。昔の人は、こうした性質が子孫の繁栄に向かないと考えました。全書の〈子女宮〉には星ごとの子どもの数の断定があるので、あわせて読めます。子どもとの縁がやや薄い、親子関係に心を配る必要がある、あるいは子どもが早く独立する、ということです。「不為奇特」という言い方そのものも比較的穏やかで、程度を示す注意書きと言えます。
23陀耗囚之星守父母之纏,決然破祖刑傷。
書き下し陀耗囚の星、父母の纏を守れば、決然として祖を破り刑傷す。
現代語訳陀羅星・耗(破軍星)・囚(廉貞星)といった星が父母宮を守っていれば、必ず祖先の家業を損ない、刑剋による傷があります。
- 囚
- 廉貞星。化気が囚です。
- 纏
- 「躔」と同じで、星のある位置。
- 破祖
- 祖先の家業を損なう、またはそこを離れること。
陀羅星・破軍星(耗)・廉貞星(囚)が父母宮を守ると「決然破祖刑傷」とされます。父母宮は父母や目上の人、祖先の家業を見る宮で、この三つの星はそれぞれ遅れともつれ、消耗、閉じこめられることをつかさどるので、昔の人は家業を損ない、父母と刑剋すると断じました。「決然」は語気がとても強い言葉です。全書の〈父母宮〉も星ごとに書くときに同じように厳しく、「破軍剋早離祖」と言っていますが、例外も残しています。破軍星が紫微星と同宮すれば刑はなく、廉貞星が天府星と同宮すれば刑を免れるとしています。今の言葉で言えば、父母との縁がやや薄い、考え方が合わない、若いうちに家を出て自立する、あるいは家業に頼らず自分で新しく始める、ということです。本当に刑剋があるかどうかは、太陽星・太陰星の輝度と煞星・化忌で見ます。
24兼之童格宜相,根基要察。
書き下しこれに兼ねて童格は宜しく相すべく、根基は察するを要す。
現代語訳さらに、子どもの命格を見るときは容貌とあわせて見るべきで、その根基もよく調べなければなりません。
- 童格宜相
- 言葉が簡略です。子どもの命格は容貌もあわせて見るべきだ、という意味と思われます。童限と命格がかみ合っているべきだ、とも読めます。
この句はとても短く、前を受けて後につなぐ役目をしています。子どもの命を見るときは容貌とあわせ、根基も調べよ、ということです。「根基」は命宮の土台とも、家柄や環境とも読めます。昔の人は子どもの命を見るときに特に慎重でした。幼い時期の運限は変動が大きいからです(〈太微賦〉は「童子限如水上泡漚」と言います)。現代に置きかえると、子どもの命盤について早くから結論を出すべきではありません。性格も容貌もまだ変わっていく途中で、命盤からわかるのは大きな方向だけです。親が見るべきなのは子どもの持ち味であって、吉凶ではありません。
25紫微肥滿,天府精神。祿存祿主,也應厚重。
書き下し紫微は肥満、天府は精神あり。禄存・禄主もまた応に厚重なるべし。
現代語訳紫微星(が命宮にある人)は体つきが豊かで、天府星は精気にあふれています。禄存星と禄主も、やはり重厚な姿のはずです。
- 祿主
- 意味がはっきりしません。一般には化禄になった星と解しますが、禄存星そのものと読む人もいます。
この句は第1段と重ねて紫微星・天府星を書いていますが、描写が違います。第1段では紫微星は「厚重」、天府星は「純和」でしたが、ここでは紫微星は「肥滿」、天府星は「精神」です。こうした前後の描写の食い違いは賦の文体ではよくあることで、両方の説を並べておいてかまいません。禄存星と「祿主」も重厚だとされ、〈女命骨髄賦〉も「祿存厚重多衣食」と言っています。これらの星に共通するのは、安定していて守りに強く、資源があることなので、外見もどっしりと書かれています。盤を読むと、これらの星が命宮にある人は、たいてい頼もしく軽はずみでない印象を与えます。
26日月曲相同梁機昌皆為美俊之姿,乃是清奇之格,上長下短目秀眉清。
書き下し日月曲相同梁機昌は皆美俊の姿と為し、乃ち是れ清奇の格、上長く下短く、目秀で眉清し。
現代語訳太陽星・太陰星・文曲星・天相星・天同星・天梁星・天機星・文昌星は、どれも美しく整った姿で、清らかで秀でた格です。上半身が長く下半身が短く、目は秀でて眉は清らかです。
この句は一度に八つの星を挙げています。太陽星・太陰星・文曲星・天相星・天同星・天梁星・天機星・文昌星で、どれも「美俊之姿」「清奇之格」、上半身が長く下半身が短く、目が秀でて眉が清らかだとされます。この八つに共通するのは文、柔らかさ、善の性質で、殺・破・狼や羊陀のような剛く煞の強い星は入っていません。後世よく言われる機月同梁の格局の星のうち四つがこの名簿に入っていて、雰囲気は文人型・公務員型です。注意したいのは、賦が輝度に触れていないことです。容貌の描写がよく当たるのは廟旺のときで、落陥して煞星が加わるときは、全書のほかの篇に「技藝羸黃」のような悪い描写が別にあります。
27貪狼同武曲形小聲高而量大,天同如陀忌肥滿而目眇。
書き下し貪狼、武曲と同じくすれば形小さく声高くして量大なり。天同、如し陀忌ならば肥満にして目眇なり。
現代語訳貪狼星と武曲星が同宮すると、体は小柄で声は高いですが、度量は大きいです。天同星が陀羅星・化忌に出会うと、体は太っていて、目に障りがあります(片目が小さいか、片目が見えない)。
- 目眇
- 片方の目が小さいか、見えないこと。
前半の「貪狼同武曲」は、二つの星が同宮するのは丑・未の二宮だけで、星格の輝度ではどちらも廟です。「形小聲高而量大」は、背は高くなく声は大きく、度量が広いということです。面白いことに、全書巻二の〈武曲星の性情〉は「形小聲高而量大」を武曲星そのものの特徴として書き、〈貪狼星の性情〉はこれを貪狼星が陥宮にあるときの特徴として書いていて、同じ一句が三つの条件に振り分けられています。後半の「天同如陀忌」は、天同星が陀羅星に遇うか、天同星が化忌になる(全書の四化訣では庚年)ことで、太っていて目眇だとされます。天同星はもともと肥満で、陀羅星も化忌も損傷をつかさどり、目はよく表れる部位とされています。
28擎羊身體遭傷,若遇火鈴巨暗必生異痣。又值耗殺定主形醜貌粗。
書き下し擎羊は身体傷に遭う。若し火鈴巨暗に遇えば必ず異痣を生ず。又耗殺に値えば定めて形醜く貌粗きを主る。
現代語訳擎羊星(が命宮にある人)は、体に傷を受けます。もし火星・鈴星・巨門星に出会えば、必ず珍しいほくろがあります。さらに耗(破軍星)・七殺星に出会えば、必ず体つきが醜く、顔立ちが粗野になります。
- 巨暗
- 巨門星。化気が暗です。
擎羊星が命宮に座ると「身體遭傷」というのが基本の断定で、擎羊星は刑傷、手術、外傷をつかさどります。さらに火星・鈴星や巨門星に遇えば「必生異痣」で、巻三の〈諸星同垣:巨門星〉にも「巨門陀羅必生異痣」とあります。さらに破軍星・七殺星に遇えば、体つきが醜く顔立ちが粗いとされます。この三段階は積み重なっていて、煞星が多いほど外見の損なわれるしるしがはっきりする、ということです。いまの暮らしに置き換えると、擎羊星が命宮にある人は、運動中のけがや手術、事故に気を配るとよいでしょう。ほくろで命盤を確かめる必要はなく、大事なのは、こうした組み合わせの人は物事をもう一歩慎重に進めるように、という注意です。
29若居死絕之限,童子乳哺徒勞其力,老者亦然壽終。
書き下し若し死絶の限に居れば、童子は乳哺するも徒らにその力を労し、老者もまた然り、寿終わる。
現代語訳もし死・絶の運限に入れば、子どもはどれほど乳を与えて育てても力を費やすばかりで、育ちません。老人もこの運限に入れば、同じように寿命が尽きます。
- 乳哺
- 乳を与えて育てること。
星格のやり方長生十二位の進む向きについて、全書は男命は順に、女命は逆に数えるとしています。星格は陰陽と男女で順逆を決めるので、死・絶の位置が全書どおりに並べた場合と違うことがあります。
この句はまた長生十二神に戻りますが、対象は運限です。死・絶の運限に入ると、子どもは育ちにくく、老人は寿命が尽きるとされます。これは〈太微賦〉の「童子限如水上泡漚,老人限似風中燃燭」と同じ意味で、年齢のうえでいちばんもろい両端と、気がいちばん弱い運限を重ね合わせています。断定はとても重いのですが、実際の判断では、全書自身も運限の中の主星・四化・煞星を見ていて、長生十二神だけで生死を決めることはしません。今の言葉で言えば、こうした運限では幼い子や年配の人の健康に多めに気を配る、という世話の目安として受け取るもので、予言ではありません。
30此數中之綱領,乃為星緯之機關。玩味專精,以參玄妙。
書き下し此れ数中の綱領にして、乃ち星緯の機関と為す。玩味専精して、もって玄妙に参ぜよ。
現代語訳これが斗数の綱領であり、星の運行のかなめです。心を集めて深く研究し、くり返し味わってこそ、その玄妙さを見抜くことができます。
- 星緯
- 星。昔の人は五つの惑星を五緯と呼びました。
- 機關
- かなめ、要所。
これは全篇の小さなまとめです。ここまで述べた形と性は、斗数の綱領であり、星のかなめでもあるので、深く研究し味わってこそ見抜ける、ということです。「星緯之機關」の「機關」はかなめのことで、〈太微賦〉の「不察其機,更忘其變」と呼応しています。昔の人が言いたかったのは、形と性は星のいちばん直接の表れなので、まずそれぞれの星の姿と性格をよく読みこんでおけば、その後で格局や運限を見るときの拠りどころになる、ということです。今斗数を学ぶ順序も同じで、まず十四主星の性格を読みこみ、それから組み合わせを学びます。
31限有高低星尋喜怒,假如運限駁雜終有浮沉。
書き下し限に高低有り、星は喜怒を尋ぬ。仮に運限駁雑なれば終に浮沈有り。
現代語訳運限には高いものも低いものもあり、星はそれが喜(吉)か怒(凶)かを見きわめます。もし運限の吉凶が入り混じっていれば、結局は浮き沈みがあります。
- 駁雜
- 吉星と凶星が入り混じって純粋でないこと。
この句から運限の話になります。「限有高低」は運限によしあしがあること、「星尋喜怒」は運限の中の星が喜(吉)か怒(凶)かを見ることです。「駁雜」は吉星と凶星が入り混じることで、運限が駁雑なら浮き沈みがあります。これは〈太微賦〉の結びの「處世孤貧數中逢乎駁雜」と同じ考え方です。盤を読むときは大限を開き、大限の命宮の三方四正で、吉星と煞星、化禄と化忌が混じっていないかを見ます。混じっている十年は、チャンスもあれば挫折もある、起伏の大きい十年になりやすいので、リスクの管理に特に気を配る必要があります。
32如逢殺地更要推詳倘,遇空亡必須細察。精研於此不患不神。
書き下し如し殺地に逢えば更に推詳を要し、倘し空亡に遇えば必ず須らく細察すべし。此に精研すれば神ならざるを患えず。
現代語訳もし煞星のある地に出会えば、さらに詳しく推し量らなければなりません。もし空亡に出会えば、必ず細かく調べなければなりません。この点を深く研究すれば、当たらないことを心配する必要はありません。
校勘 「更要推詳倘,遇空亡必須細察」は読点の位置がずれていて、「更要推詳,倘遇空亡必須細察」とすべきです。
全篇の最後の句です。煞星のある宮に出会えば詳しく推し量り、空亡に出会えば細かく調べよ、この二か所に力を注げば、当たらないことを心配しなくてよい、と言います。句読の位置のずれは校勘で説明しました。この句は盤を読むときの二つの難所を指摘しています。煞星のよしあしは組み合わせと輝度で見る必要があり、空亡には「吉星は空を恐れ、煞星は空を喜ぶ」という二つの面があります(この篇の第14段を参照)。昔の人がこの二か所を特に注意したのは、まさにそこがいちばん読み違えやすいからです。いまの目で見ても同じで、煞星や空亡を見ても、すぐに凶と決めつけず、まずどの宮にあるか、誰と同宮しているか、輝度はどうかを見ます。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
〈形性賦〉は何について書かれていますか?
〈形性賦〉は『紫微斗数全書』巻一の一篇で、各星が命宮に座るときの人の容貌・体つき・性情を述べています。たとえば紫微星は「厚重之容」、天府星は「純和之體」、天機星は「不長不短之姿,情懷好善」、廉貞星は「眉寬,口闊面橫,為人性暴」、破軍星は「背重眉寬,行坐腰斜」とされています。
「七殺如子路暴虎馮河,火鈴似豫讓吞炭裝啞」とはどういう意味ですか?
子路は孔子の弟子で、勇猛で知られた人です。孔子は「暴虎馮河」、つまり素手で虎に立ち向かい、歩いて大河を渡るような、勇気だけで謀のないやり方をいさめました。予譲は戦国時代の刺客で、主君の仇を討つために体に漆を塗り、炭を呑んで声をつぶし、誰にも見分けられないようにしました。賦はこの二人を使って、七殺星が命宮にある人の猛々しく危険を恐れない面と、火星・鈴星が命宮にある人の耐え忍ぶ執念の強さをたとえています。
紫微斗数で容貌はわかるのですか?紫微星が命宮にある人はどんな姿ですか?
〈形性賦〉は紫微星が命宮に座ると「厚重之容」とし、後の段では「紫微肥滿」とも言います。天府星は「純和之體」「精神」です。これは古書の容貌の描写で、実際には同宮の星や三方四正の星も見る必要があります。賦自身も「惡曜扶同善曜稟性不常」と言っていて、組み合わせが変われば形と性もそれにつれて変わるとしています。
貪狼星が命宮にある人の性格を、〈形性賦〉はどう言っていますか?
賦は貪狼星を「善惡之星」と言います。入廟すれば背が高く堂々とし、廟の位置を離れると頑なで騒がしい。寅・申・巳・亥の馬垣では「易善易惡」、武曲星と同宮すれば「形小聲高而量大」、破軍星が貪狼星に遇えば「浽淫情於井底」(「浽」は「縦」の誤りと思われます)としています。
この篇に出てくる主星