貪狼星の主るところは

〈問貪狼所主若何?〉

『紫微斗数全書』巻一・賦文・諸星問答と格局・原文と現代語訳

はじめに

この篇は巻一〈諸星問答論〉の貪狼星の問い「問貪狼所主若何?」です。貪狼星は北斗の第一星で、化気は桃花です。全書は貪狼星を「乃主禍福之神」と言い、その評価は問答全体の中でも最も厳しい星の一つで、最後の一句は「男女非得地之星,不見尤妙」です。全篇は次のように分かれます。

  • 答曰(第1〜6段):貪狼星の本性(奸詐、浮ついた放蕩、策を弄して失敗する)を述べ、破軍星・廉貞星・七殺星・擎羊陀羅・天刑化忌・武曲星・文昌文曲・巨門星に遇うときの断定をそれぞれ挙げます。「七殺守身終是夭,貪狼入廟必為娼」を引き、「惟會火鈴能富貴」と言い、最後に兄弟宮・子女宮・田宅宮・奴僕宮・夫妻宮・疾厄宮・遷移宮を一宮ずつ論じます。
  • 希夷先生曰(第7〜8段):貪狼星は体が水、気が木に属し、吉に遇えば富貴、凶に遇えば虚浮とします。廟旺で火星に遇えば武職で権と貴を得て、戊・己年生まれは格局に合い、女性は刑剋して身持ちが悪く、太陰星に遇えば淫らになるとします。

この篇の言葉はとても強いもの(娼、淫奔、穿窬、屠宰、風流之鬼)ですが、訳文は原意どおりに直訳しています。また、貪狼星は盤上で七殺星・破軍星とはいつも三合の位置にあって同宮しないので、篇中の「同守」「同居」は会照に近い意味です。

1答曰:貪狼北斗解厄之神,第一星也。屬水,化氣為桃花,為標準,乃主禍福之神。受善惡定奸詐瞞人,授學神仙之術。又好高吟浮蕩,作巧成拙。入廟樂之宮,可為祥可為禍。會破軍迷花戀酒而喪命,同祿存可吉。

書き下し答えて曰く、貪狼は北斗解厄の神、第一星なり。水に属し、化気して桃花と為し、標準と為し、すなわち禍福を主るの神なり。善悪を受けて定めて奸詐人を瞞き、神仙の術を授学す。又高吟浮蕩を好み、巧を作して拙を成す。廟楽の宮に入れば、祥と為るべく禍と為るべし。破軍に会すれば花に迷い酒を恋いて命を喪い、禄存と同じくすれば吉なるべし。

現代語訳答えて言います。貪狼星は北斗の、災厄を解く神で、北斗の第一星です。水に属し、化気は桃花で、ものごとを量る基準であり、禍福を主宰する神です。善悪の影響を受け、必ず奸詐で人を欺き、神仙の術を学びます。また声高に吟じて浮ついた放蕩を好み、策を弄して失敗します。廟楽の宮に入れば、吉祥にもなりえ、禍にもなりえます。破軍星に会えば、色に迷い酒におぼれて命を落とします。禄存星と同宮すれば吉となりえます。

解厄
災厄を解くこと。
受善惡定奸詐瞞人
原文の言葉がやや通りにくく、字面どおりに訳しています。
高吟浮蕩
声高に吟じ、浮ついて放蕩すること。
解説

貪狼星は全書の中で評価がいちばん入り組んだ主星です。「解厄之神」でありながら「化氣為桃花」で、水に属するとしながら、希夷先生は「氣屬木,體屬水」と言います。この二面性が第1段に書かれている「可為祥可為禍」で、廟楽の宮でも同じです。だから貪狼星を読むときは輝度を見るだけでは足りず、何に遇っているかをもっと見る必要があります。

「授學神仙之術」は、貪狼星のあまり語られない面です。貪狼星は好奇心が強く学ぶことが好きで、玄学や宗教、養生に関心を持ちます。「會破軍迷花戀酒而喪命」は条件が重いもので、貪狼星と破軍星はいつも三合の位置にあるので「会」はほぼ決まっていて、本当の条件は二つとも落陥し、さらに煞星を帯びることです。「同祿存可吉」は、禄存星の慎重さが貪狼星の外へ向かう勢いを押さえる、ということです。

✎ メモ

2遇耗因以虛花,遇廉貞也不潔,見七殺或配以遭刑。遇羊陀主痔疾,逢刑忌有斑痕,二限為禍非輕。與七殺同守身命,男有穿窬之體,女有偷香之態。諸吉壓不能為福,眾凶聚愈藏其奸。以事藏機,虛花無實。與人交厚者薄,而薄者又厚。

書き下し耗に遇えば因りてもって虚花、廉貞に遇うもまた潔からず、七殺を見れば或いは配せられてもって刑に遭う。羊陀に遇えば痔疾を主り、刑忌に逢えば斑痕有り、二限禍を為すこと軽きに非ず。七殺と同じく身命を守れば、男は穿窬の体有り、女は偸香の態有り。諸吉圧するも福と為る能わず、衆凶聚まれば愈其の奸を蔵す。事をもって機を蔵し、虚花にして実無し。人と交わるに厚き者は薄く、薄き者は又厚し。

現代語訳耗の星に遇えば、そのために浮ついて実がありません。廉貞星に遇っても身持ちがよくありません。七殺星を見れば、流刑になって刑罰を受けることもあります。擎羊星・陀羅星に遇えば痔をつかさどり、天刑・化忌に逢えば体に斑点や傷跡があり、大限・小限がそこに来れば禍は軽くありません。七殺星と一緒に身宮・命宮を守れば、男は壁に穴を開け塀を越える盗人の姿があり、女は密通する様子があります。さまざまな吉星が押さえても福にはならず、多くの凶星が集まれば、いっそう奸詐を隠します。事を行うのに企みを隠し、浮ついて実がありません。人づきあいでは、厚いはずの相手には薄く、薄いはずの相手にはかえって厚くします。

耗
耗の星。破軍星の化気が耗です。雑曜の大耗を指すこともあります。
配
流刑。昔、罪人を遠方へ送って労役させたこと。
穿窬
壁に穴を開け、塀を越えること。盗みを指します。
偷香
男女がひそかに密通すること。
解説

この段は凶の姿が多く、三つに分けられます。一つ目は組み合わせで、耗に遇えば虚花、廉貞星に遇えば身持ちが悪く、七殺星を見れば刑に遭います。貪狼星は廉貞星と巳・亥で同宮し、七殺星とはいつも三合にあります。二つ目は体で、擎羊・陀羅は痔、天刑・化忌は斑点や傷跡です。三つ目は性格で、吉星でも押さえきれず、凶星が集まればいっそう奸を隠し、厚い相手には薄く薄い相手には厚い、というものです。

最後の「與人交厚者薄,而薄者又厚」はとても細かく書かれていて、貪狼星の人間関係は予測しにくい、ということです。親しくすべき人とは疎遠になり、行きずりの人にはかえって熱心になります。言い換えれば、社交の力が強く新しいものが好きな一方で、長い関係への打ち込み方が安定しない、ということです。「穿窬」「偷香」は昔の、盗みや密通の言い方で、原文の意味は変えませんが、これは貪狼星と七殺星が同じく身宮・命宮を守り、さらに前に挙げた凶の姿が重なったときの断定です。

✎ メモ

3故云:七殺守身終是夭,貪狼入廟必為娼。若身命與破軍同居,更居三合之鄉生旺之地,男好飲而賭博遊蕩,好女無媒而自嫁,淫奔私竊,輕則隨客奔馳,重則遊於歌妓。喜見空亡,返主端正。

書き下し故に云う、七殺身を守れば終に是れ夭、貪狼廟に入れば必ず娼と為ると。若し身命破軍と同居し、更に三合の郷、生旺の地に居れば、男は飲を好みて賭博遊蕩し、好女は媒無くして自ら嫁ぎ、淫奔私窃し、軽ければすなわち客に随いて奔馳し、重ければすなわち歌妓に遊ぶ。空亡を見るを喜び、返って端正を主る。

現代語訳だから言います。「七殺星が身宮を守れば結局は早死にし、貪狼星が入廟すれば必ず娼妓になる」と。もし身宮・命宮で破軍星と一緒にあり、さらに三合の位置、生旺の地にあれば、男は酒を好み、賭博をし、遊びほうけます。よい家の娘でも仲人なしに自分で嫁ぎ、淫奔し、こっそり盗みます。軽ければ客について各地を走り回り、重ければ歌妓に身を落とします。空亡を見ることを喜び、そうなればかえって端正になります。

夭
短命、早死に。
無媒而自嫁
仲人を通さず、自分で嫁ぐこと。
與破軍同居
貪狼星と破軍星は盤上で同宮せず(いつも三合の位置にあります)、ここの「同居」は会照に近い意味です。
空亡
旬空・截空の類の「空」の位置。
解説

「七殺守身終是夭,貪狼入廟必為娼」は全書に何度も出てきます。〈斗数骨髄賦〉では「七殺守身終是夭,貪狼入命必為娼」(斗数骨髄賦を参照)、〈女命骨髄賦〉では「貪狼入廟定為娼」となっています。版本で一字違うだけで意味が変わります。「入廟」なら貪狼星が旺じるほど桃花が重くなり、「入命」なら命宮に座るだけで当てはまります。全書には二つの書き方が並んでいて、ここでは「入廟」に従っています。

「喜見空亡,返主端正」は、貪狼星のいちばん独特なかわし方です。桃花が空に遇うと欲望が空振りし、かえって慎み深くなる、ということです。星格の盤では、貪狼星の宮に旬空・截路・空亡があるか、同宮に地空・地劫があるかを見ます。この「煞で欲を抑える」理屈は全書によく見られ、紫微星の篇で紫微星が火星・鈴星を制すると言うのと同じ道理です。この段の女命についての断定はとても重く、昔の、貞節で女性を論じた価値観の産物です。読むときは条件を最後まで見てください。身宮・命宮が破軍星と会い、さらに三合で生旺の地にあることで、貪狼星の女命すべてのことではありません。

✎ メモ

4若與武曲同度,為人諂佞奸貪,每存肥己之心,並無濟人之意。與貞同,公庭必定遭刑。四殺同,定為屠宰。羊陀交並,必作風流之鬼。昌曲同度,必多虛而少實。與七殺同纏,男女淫邪虛花。巨門交戰,口舌是非常有。

書き下し若し武曲と同度すれば、人と為り諂佞奸貪、毎に己を肥やすの心を存し、並びに人を済うの意無し。貞と同じくすれば、公庭にて必定刑に遭う。四殺同じくすれば、定めて屠宰と為る。羊陀交並すれば、必ず風流の鬼と作る。昌曲同度すれば、必ず虚多くして実少なし。七殺と同じく纏えば、男女淫邪虚花なり。巨門と交戦すれば、口舌是非常に有り。

現代語訳もし武曲星と同宮すれば、その人はへつらい、ずる賢く、欲が深く、いつも自分を肥やす心を持ち、人を救う気持ちはまったくありません。廉貞星と同宮すれば、必ず役所の法廷で刑罰を受けます。四煞と同宮すれば、必ず屠殺の仕事をします。擎羊星・陀羅星が交わり重なれば、必ず色恋で死ぬ者になります。文昌星・文曲星と同宮すれば、必ず虚が多く実が少なくなります。七殺星と一緒にまとわりつけば、男女とも淫らで邪で、浮ついて実がありません。巨門星と交戦すれば、口論や揉め事がいつもあります。

諂佞
へつらい、口先で取り入ること。
公庭
役所の法廷。裁判をする所。
風流之鬼
男女の色恋がもとで死ぬ人。
巨門交戰
通行の星の配置法では、貪狼星と巨門星は同宮でも三方四正でも会わないので、この句は盤上でそろわず、命盤の条件の印は付けていません。
解説

この段は、貪狼星が六種類の星と同度したときの結果を挙げていて、対照表として使えます。武曲星(丑・未で同宮)は財に貪欲、廉貞星(巳・亥で同宮)は訴訟沙汰、四煞は屠宰、擎羊・陀羅は色恋で死ぬこと、文昌・文曲は虚が多く実が少ないこと、七殺星は淫邪、巨門星は口論です。巨門星の句が盤上でそろわないことは注で指摘したので、ここでは繰り返しません。

〈武曲星の主るところは〉と比べると(武曲星の主るところはを参照)、同じ武曲星と貪狼星の組み合わせが、武曲星の篇では「少年不利」で中年に発達するとされ、貪狼星の篇では「諂佞奸貪」とされていて、評価がずいぶん違います。筋の通る整理は次のとおりです。武曲星の篇は武曲星の側から見て、発達の時期を言い、貪狼星の篇は貪狼星の側から見て、心の持ち方を言っている、ということです。二つは矛盾しませんが、一つの篇だけを読んで判断してはいけません。

✎ メモ

5若犯帝座,無制便為無益之人。得輔弼昌曲夾制,則無此論。陷地逢生又生祥瑞,雖家顛也發一時之財。惟會火鈴能富貴,美在財帛與武曲太陰同,終非所自發,則為淫佚。在兄弟子息,俱為陷地。在田宅則破蕩祖業,先富後貧。

書き下し若し帝座を犯し、制無ければ便ち無益の人と為る。輔弼昌曲の夾制を得れば、すなわち此の論無し。陥地に生に逢えば又祥瑞を生じ、家顛るといえども一時の財を発す。惟だ火鈴に会すれば能く富貴、美は財帛に在りて武曲太陰と同じくするも、終に自ら発する所に非ざれば、すなわち淫佚と為る。兄弟子息に在れば、倶に陥地と為す。田宅に在ればすなわち祖業を破蕩し、先に富み後に貧し。

現代語訳もし紫微星を犯し、押さえるものがなければ、役に立たない人になります。左輔星・右弼星、文昌星・文曲星が両側から挟んで押さえれば、そうは論じません。陥地で長生の地に逢えば、また吉祥を生じ、家が傾いても一時の財を発します。火星・鈴星に会うときだけ富貴になれます。よいのは財帛宮で武曲星・太陰星と一緒にあることですが、結局自分から発したものではないので、淫らで放逸になります。兄弟宮・子女宮では、どちらも陥地とします。田宅宮にあれば祖業を食いつぶし、先に富んで後に貧しくなります。

帝座
紫微星。
夾制
左右の二宮から挟み、押さえること。
美在財帛與武曲太陰同,終非所自發,則為淫佚
原文の意味があまりはっきりせず、字面どおりに訳しています。
子息
子ども。子女宮のこと。
解説

「若犯帝座,無制便為無益之人」は、紫微星と貪狼星が卯・酉で同宮する場合で、〈太微賦〉の「桃花犯主為至淫」のことです(太微賦を参照)。解き方は「輔弼昌曲夾制」で、左右の隣に左輔右弼・文昌文曲があって桃花を収める、ということです。

「惟會火鈴能富貴」は貪狼星のいちばん有名な格局です。火貪格と鈴貪格で、火星・鈴星の爆発力が貪狼星の欲望と行動力と組み合わさり、急に発達することをつかさどります。これは全書では珍しい「煞星が主星をよくする」例でもあります。後に、貪狼星は兄弟宮・子女宮では陥地、田宅宮では祖業を破るとあるのは、また宮の論で、輝度の表とは関係ありません。

✎ メモ

6奴僕居於廟旺,必因奴僕所破。夫妻宮男女俱不得美,疾厄與羊陀暗殺交並,酒色之病。遷移若坐火鄉,破軍暗殺並,流年歲殺迭並,則主遭兵火賊盜相侵。總而言之,男女非得地之星,不見尤妙。

書き下し奴僕廟旺に居れば、必ず奴僕に因りて破らる。夫妻宮は男女倶に美を得ず、疾厄羊陀暗殺と交並すれば、酒色の病なり。遷移若し火郷に坐し、破軍暗殺並び、流年歳殺迭いに並べば、すなわち兵火賊盗の相侵すに遭うを主る。総べてこれを言えば、男女得地の星に非ず、見ざれば尤も妙なり。

現代語訳奴僕宮で廟旺にあれば、必ず使用人のために破れます。夫妻宮では、男女ともよくありません。疾厄宮で擎羊星・陀羅星・巨門星・煞星と交わり重なれば、酒と色による病です。遷移宮でもし火の地に座り、破軍星・巨門星・煞星が並び、さらに流年の歳煞が重なれば、戦乱・火災・盗賊に侵されます。まとめて言えば、貪狼星は男女どちらにとっても地を得た星ではなく、見ないのがいちばんよいのです。

火鄉
五行で火に属する宮。巳・午。
暗殺
巨門星(化気は暗)と煞星。
歲殺
流年の神煞。
解説

奴僕宮の断定はとても率直です。貪狼星が奴僕宮で廟旺だと、かえって使用人のために破れます。部下や友人の欲望と手腕が強すぎるからです。夫妻宮で男女ともよくないというのは、〈夫妻宮(妻妾宮)〉で貪狼星について「男女不得美,三次作新郎」と言うのと一致します。疾厄宮で擎羊・陀羅・巨門・煞星に遇えば酒と色の病で、今なら生活習慣や睡眠のリズム、飲酒に関わる健康の問題と読みます。

遷移宮で「坐火鄉」し、さらに破軍星・巨門星・煞星と並び、そこに流年の歳煞が重なれば、戦乱・火災・盗賊をつかさどります。これは本命に流年を三重に重ねる断じ方で、条件が多く、貪狼星が遷移宮にあるだけで盗難に遭うと断じるものではありません。最後の「男女非得地之星,不見尤妙」は篇全体のまとめで、全書の貪狼星の評価は全体に否定寄りです。これは礼教を重んじ欲望を軽んじた昔の価値観で、今貪狼星を読むなら、才芸・社交・学びをつかさどる面にもっと目を向けてよいでしょう。

✎ メモ

7希夷先生曰:貪狼為北斗解厄之神,陟明之星,其氣屬木,體屬水,故化氣為桃花。乃主禍福之神,在數則樂為放蕩之事。遇吉則主富貴,遇凶則主虛浮。主人矮小,性剛猛威,機深謀遠,隨波逐浪,愛憎難定。

書き下し希夷先生曰く、貪狼は北斗解厄の神、陟明の星と為し、其の気木に属し、体水に属す、故に化気して桃花と為す。すなわち禍福を主るの神、数に在りてはすなわち放蕩の事を為すを楽しむ。吉に遇えばすなわち富貴を主り、凶に遇えばすなわち虚浮を主る。人の矮小、性剛猛威、機深く謀遠く、波に随い浪を逐い、愛憎定め難きを主る。

現代語訳希夷先生は言います。貪狼星は北斗の、災厄を解く神で、陟明の星です。その気は木に属し、体は水に属するので、化気は桃花です。禍福を主宰する神で、命数の中では放蕩なことをするのを楽しみます。吉に遇えば富貴をつかさどり、凶に遇えば浮ついて実がないことをつかさどります。その人は背が低く、性質は剛く猛々しく威があり、深く企み遠くを謀り、波のまにまに流され、好き嫌いが定まりにくいのです。

陟明
道教では北斗の第一星である貪狼星を陽明と呼び、「陟明」はその陽明のことかと思われます。

校勘 「陟明之星」は陽明之星(北斗第一陽明貪狼星君)の誤りかと思われます。

解説

希夷先生のこの段は、貪狼星がなぜ桃花に化すのかを説明しています。「其氣屬木,體屬水」で、水は木を生み、木は生じ伸びることと情欲をつかさどるので、水と木が生じ合って桃花になる、というものです。これは全書が五行で化気を説明する典型的な例です。

性格の描写はよく当たっています。「性剛猛威,機深謀遠,隨波逐浪,愛憎難定」で、剛猛さと流されやすさが並べて書かれていて、貪狼星の人は強い欲望と手腕を持ちながら、向かう方向は環境によって変わる、ということを示しています。「主人矮小」は古書の容貌の断定で、今はあまり参考になりません。星の基本的な性質は貪狼星と照らし合わせてください。

✎ メモ

8居廟旺遇火星武職權貴,戊己生人合局。遇天相延壽,會廉武巧藝,得祿存僧道宜之。破殺相沖,飄蓬度日。女人刑剋不潔,遇太陰則主淫佚。

書き下し廟旺に居りて火星に遇えば武職権貴、戊己生まれの人は局に合う。天相に遇えば寿を延べ、廉武に会すれば巧芸、禄存を得れば僧道これに宜し。破殺相沖すれば、飄蓬して日を度る。女人刑剋して潔からず、太陰に遇えばすなわち淫佚を主る。

現代語訳廟旺にあって火星に遇えば、武職で権と貴を得ます。戊年・己年生まれの人は格局に合います。天相星に遇えば寿命が延び、廉貞星・武曲星に会えば巧みな技芸があり、禄存星を得れば出家して修行するのに向きます。破軍星・七殺星が沖すれば、風に飛ばされる蓬のように日々を過ごします。女性は刑剋し、身持ちがよくなく、太陰星に遇えば淫らで放逸になります。

合局
格局に合うこと。
飄蓬
風に吹かれて転がる蓬。さすらって落ち着かないことのたとえです。
解説

「居廟旺遇火星武職權貴,戊己生人合局」について、戊年は貪狼星が化禄し、己年は貪狼星が化権します。貪狼星が廟旺にあって化禄か化権を得て、さらに火星が加われば、全書の火貪の貴格になります。〈斗数骨髄賦〉も「貪狼火星居廟旺名鎮諸邦」と言っています。

後の数句には盤の上の問題があります。星の配置法では、天相星も太陰星も貪狼星の三方四正に入らない(太陰星はいつも貪狼星の隣の宮にある)ので、「遇天相延壽」「遇太陰則主淫佚」は本命盤では見えず、運限か夾宮から理解するしかありません。「會廉武巧藝」はたいてい成り立ちます。貪狼星は廉貞星と巳・亥で、武曲星と丑・未で同宮し、それ以外の位置でもたいていどちらか一つが三方四正にあり、貪狼星が子・午にあるときだけ二つとも会いません。「得祿存僧道宜之」は第1段の「同祿存可吉」と呼応していて、禄存星が貪狼星を慎み深くさせる、ということです。

✎ メモ
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
答曰:貪狼北斗解厄之神,第一星也。屬水,化氣為桃花,為標準,乃主禍福之神。受善惡定奸詐瞞人,授學神仙之術。又好高吟浮蕩,作巧成拙。入廟樂之宮,可為祥可為禍。會破軍迷花戀酒而喪命,同祿存可吉。 遇耗因以虛花,遇廉貞也不潔,見七殺或配以遭刑。遇羊陀主痔疾,逢刑忌有斑痕,二限為禍非輕。與七殺同守身命,男有穿窬之體,女有偷香之態。諸吉壓不能為福,眾凶聚愈藏其奸。以事藏機,虛花無實。與人交厚者薄,而薄者又厚。 故云:七殺守身終是夭,貪狼入廟必為娼。若身命與破軍同居,更居三合之鄉生旺之地,男好飲而賭博遊蕩,好女無媒而自嫁,淫奔私竊,輕則隨客奔馳,重則遊於歌妓。喜見空亡,返主端正。 若與武曲同度,為人諂佞奸貪,每存肥己之心,並無濟人之意。與貞同,公庭必定遭刑。四殺同,定為屠宰。羊陀交並,必作風流之鬼。昌曲同度,必多虛而少實。與七殺同纏,男女淫邪虛花。巨門交戰,口舌是非常有。 若犯帝座,無制便為無益之人。得輔弼昌曲夾制,則無此論。陷地逢生又生祥瑞,雖家顛也發一時之財。惟會火鈴能富貴,美在財帛與武曲太陰同,終非所自發,則為淫佚。在兄弟子息,俱為陷地。在田宅則破蕩祖業,先富後貧。 奴僕居於廟旺,必因奴僕所破。夫妻宮男女俱不得美,疾厄與羊陀暗殺交並,酒色之病。遷移若坐火鄉,破軍暗殺並,流年歲殺迭並,則主遭兵火賊盜相侵。總而言之,男女非得地之星,不見尤妙。 希夷先生曰:貪狼為北斗解厄之神,陟明之星,其氣屬木,體屬水,故化氣為桃花。乃主禍福之神,在數則樂為放蕩之事。遇吉則主富貴,遇凶則主虛浮。主人矮小,性剛猛威,機深謀遠,隨波逐浪,愛憎難定。 居廟旺遇火星武職權貴,戊己生人合局。遇天相延壽,會廉武巧藝,得祿存僧道宜之。破殺相沖,飄蓬度日。女人刑克不潔,遇太陰則主淫佚。

よくある質問

『紫微斗数全書』で貪狼星は何をつかさどるとされていますか?

全書は、貪狼星は北斗の第一星で、水に属し、化気は桃花で、禍福を主宰する神だとしています。その人は奸詐で人を欺き、神仙の術を学ぶのを好み、声高に吟じて浮ついた放蕩を好み、策を弄して失敗するとし、廟楽の宮でも吉にも禍にもなりうるとします。希夷先生は、吉に遇えば富貴、凶に遇えば虚浮とし、その人は背が低く、性質は剛猛で、深く企み遠くを謀り、波のまにまに流され、好き嫌いが定まりにくいと言っています。

「七殺守身終是夭,貪狼入廟必為娼」とはどういう意味ですか?

答曰が引く古い訣で、七殺星が身宮を守れば結局は早死にし、貪狼星が入廟すれば必ず娼妓になる、という意味です。原文はさらに、貪狼星が破軍星と身宮・命宮に同じくあり、しかも生旺の地にあれば、男は酒と賭博と遊びにふけり、女は仲人なしに自分で嫁ぎ、淫奔し、こっそり盗むと言います。ただし「喜見空亡,返主端正」とも言っています。

貪狼星が火星に遇うのはよいのですか、悪いのですか?

全書は、貪狼星は「惟會火鈴能富貴」と言い、希夷先生も、貪狼星は「居廟旺遇火星武職權貴,戊己生人合局」と言っています。後の時代には火貪格・鈴貪格と呼ばれるようになりました。

貪狼星が夫妻宮にあるのはよいのですか?

答曰は、貪狼星は「夫妻宮男女俱不得美」と言い、兄弟宮・子女宮ではどちらも陥地とし、田宅宮では祖業を食いつぶして先に富み後に貧しく、奴僕宮で廟旺なら必ず使用人のために破れるとしています。

この篇に出てくる主星

七殺星貪狼星破軍星武曲星太陰星廉貞星
✎ 読み終えたら、星霊にひとこと感想を