星垣論
『紫微斗数全書』巻一・賦文・諸星問答と格局・原文と現代語訳
はじめに
〈星垣論〉は『紫微斗数全書』巻一の短い篇で、「星がどの宮にあると、なぜよいのか、なぜ悪いのか」を扱います。道具は五行です。十二支にはそれぞれ五行があり(寅卯は木、巳午は火、申酉は金、亥子は水、辰戌丑未は土)、星にも五行があります(天相は水、巨門は水、天梁は土、陀羅は金、廉貞は火、武曲は金……)。星と宮の五行が生じ合うか、剋し合うか、助け合うかで、その星がそこで力を出せるかどうかが決まる、という考え方です。
全篇は方位にそって一巡りします。
- 冒頭では、紫微は輔弼を補佐とし、南北斗が合わさって斗数となり、水と火は互いに助け合うべきだと述べます。
- 寅卯の木垣:貪狼・天機は廟楽、天相は寅で旺相、巨門は卯で疏通し、さらに水の星の灌漑と禄存の土による栽培を得るのが最もよいとします。
- 四墓の土垣:巨門は丑、天梁は未、陀羅は辰戌丑未に到り、これを「金趁土肥」と呼びます。
- 巳午の火位:廉貞は巳午に居り、文曲は午で入廟し、紫府に会えば魁星拱斗と呼びます。
- 申酉の金、亥子の水:武曲は申で生を好み、擎羊は酉で殺を用います。文曲・破軍は亥が要地で、破軍は子で巨海の波のようだとします。
この篇の星の五行は、後世一般の説と完全には一致しません(たとえばここでは「天同金」と書いていますが、一般には天同は水に属するとされます)。読むときは原文どおりに理解すれば十分です。
1紫微帝座以輔弼為佐,貳作數中之主星乃有用之源流。是以南北二斗集而成數,為萬物之靈。
書き下し紫微帝座は輔弼をもって佐弐と為し、数中の主星と作るは乃ち有用の源流なり。是をもって南北二斗集まりて数を成し、万物の霊と為す。
現代語訳紫微星は帝座で、左輔星・右弼星を補佐の副官とし、斗数の中の主星となって、あらゆる働きの源となります。だから南斗と北斗の星が集まって斗数となり、万物の霊長である人に対応します。
- 貳
- 前の「佐」と合わせて佐弐。長官を補佐する副官のこと。
- 南北二斗
- 斗数では主星を南斗星と北斗星の二組に分け、紫微星が北斗、天府星が南斗の主です。
校勘 「以輔弼為佐,貳作數中之主星」は句読の位置がずれていて、「佐」と「貳」の間で切らず、佐弐(副官)を一語として、輔弼をもって佐弐と為し、数中の主星と作る、と読むべきです。
〈星垣論〉は冒頭でまず紫微星に戻ります。帝座は輔弼を副官として持ってこそ、主星の「有用之源」になるということです。これは〈太微賦〉の「紫微天府全依輔弼之功」と同じ意味で、全書が紫微星は一人で座ってはいけないと何度も強調していることがわかります。後半は、南北斗の星が合わさって斗数となると言い、この術数の骨組みを説明しています。北斗は紫微星を、南斗は天府星を筆頭とし、二組の星が補い合います。盤を読むときは、紫微星が命宮にあれば、まず左輔星・右弼星が命宮か三方四正にあるかを探します。なければ全書の言う孤君で、帝星の力は割り引いて見ることになります。
2蓋以水淘溶,則陰陽既濟,水盛陽傷,火盛陰滅,二者不可偏廢,故知其中者,斯為美矣。
書き下し蓋し水をもって淘溶すれば、すなわち陰陽既に済す。水盛んなれば陽傷つき、火盛んなれば陰滅ぶ。二者は偏廃すべからず。故にその中を知る者、斯れ美と為す。
現代語訳おおよそ、水と火が溶け合って調和すれば、陰と陽は互いに助け合います。水が盛んすぎれば陽が傷つき、火が盛んすぎれば陰が消えます。どちらも欠いてはならず、だから中ほどを心得ている者こそが美しいのです。
- 既濟
- 『易経』の卦の名前。水が火の上にあり、水と火が交わって陰陽が調和することを表します。
- 淘溶
- 溶け合って調和すること。原文は「水」の字しかありませんが、続く文が水と火を並べているので、「火」の字が抜けていると思われます。
この段はこの篇の理論の土台で、水と火は助け合わなければならない、ということです。水は陰を、火は陽を表し、「水盛陽傷,火盛陰滅」、どちらも行き過ぎてはならず、中を取ってこそ美しいとします。これは中国の伝統的な五行観にある中和の原則です。斗数にあてはめると、一枚の盤の星は一方に偏らないほうがよい、ということになります。火の性質の星(廉貞・火星・太陽)ばかりなら気が急き、水の性質の星(太陰・破軍・文曲・天同)ばかりなら冷えます。盤を読むときは、命宮と三方四正の星の五行が一方に偏っていないかに気をつけるとよいでしょう。偏っているときは、もう一方の星を探して調和させるのが全書の読み方で、この後の段で宮ごとに分析していく考え方でもあります。
3寅乃木之垣,乃三陽交泰之時,草木萌芽之所,至於卯位,其木至旺矣。貪狼天機是廟樂,故得天相水到寅為之旺相、巨門水得卯為之疏通,木乃土栽培,加以水之澆灌,三方更得文曲水破軍水相會尤妙,又加祿存土極美矣。
書き下し寅は乃ち木の垣、乃ち三陽交泰の時、草木萌芽の所なり。卯位に至りては、その木至って旺んなり。貪狼天機は是れ廟楽なり、故に天相水の寅に到るを得てこれを旺相と為し、巨門水の卯を得てこれを疏通と為す。木は乃ち土もて栽培し、加うるに水の澆灌をもってし、三方更に文曲水・破軍水の相会するを得れば尤も妙なり、又禄存土を加うれば極めて美なり。
現代語訳寅は木の宮で、三陽交泰の季節、草木が芽吹く所です。卯の位に至ると、木は旺の極みになります。貪狼星・天機星はここでは廟楽の地にあります。だから天相星(水に属する)が寅に到るのを旺相と言い、巨門星(水に属する)が卯を得るのを疏通と言います。木は土に育てられ、さらに水に潤されます。三方でさらに文曲星(水)・破軍星(水)と会えばなおよく、そのうえ禄存星(土)が加われば、きわめてよくなります。
- 三陽交泰
- 正月は『易経』の泰の卦にあたり、三本の陽爻が下にあって、天地が交わり万物が通じます。寅の月が正月です。
- 廟樂
- 入廟して喜ぶこと。星が力を出せる位置にあること。
- 旺相
- 五行が時を得て、生じられて盛んなこと。
この段は五行で寅卯の木の宮を説明しています。天相星・巨門星は水に属し、水は木を生じるので、寅卯に到れば旺相し、疏通します。木は土に育てられ、水に潤されるので、さらに禄存星(土)や文曲星・破軍星(水)に遇うのが最もよい、とします。実際の命盤では、天相星が寅にあれば必ず武曲星と同宮し、巨門星が卯にあれば必ず天機星と同宮します。注意したいのは、この段が全書巻三の廟旺表と食い違うことです。ここでは貪狼星・天機星が寅卯で「廟樂」だとしていますが、〈諸星同垣:天機星〉の表は天機星の廟を子午、旺を辰酉としか挙げておらず、〈諸星同垣:貪狼星〉の表も廟は辰戌丑未です。星格の輝度表では天機星は寅で得地・卯で旺、貪狼星は寅で平和・卯で利益で、巻三の表に近くなっています。
4巨門水到丑,天梁土到未,陀羅金到於四墓之所,苟或得擎羊金相會,以土為金墓,則金通不凝。加以天府土天同金以生之,是為金趁土肥,順其德以生成。
書き下し巨門水は丑に到り、天梁土は未に到り、陀羅金は四墓の所に到る。苟し或いは擎羊金の相会するを得れば、土をもって金の墓と為し、すなわち金通じて凝らず。加うるに天府土・天同金のこれを生ずるをもってす、是れを金趁土肥と為し、その徳に順いてもって生成す。
現代語訳巨門星(水)は丑に到り、天梁星(土)は未に到り、陀羅星(金)は辰・戌・丑・未の四墓の地に到ります。もしさらに擎羊星(金)と会えば、土は金の墓庫なので、金は通じて滞りません。そのうえ天府星(土)・天同星(金)がこれを生じれば、これを「金趁土肥」と言い、その徳に順って生まれ育ちます。
- 四墓
- 辰・戌・丑・未の四宮。五行は土で、それぞれの五行の墓庫でもあります。
- 天同金
- 後世は一般に天同星の五行を水としますが、この篇では金としています。原文のまま記します。
この段は四墓の土の宮の話です。陀羅星・擎羊星は金に属し、土は金の墓庫であり、金を生じもするので、羊陀は辰戌丑未ではかえって「金通不凝」となります。これが「金趁土肥」です。全書巻三の表も擎羊星は辰戌丑未で廟としていて、星格の輝度表でも羊陀は四墓でどれも廟なので、三つが一致しています。巨門星が丑にあれば必ず天同星と同宮し、天梁星が未にあるときは単独で座ります。注目したいのは、この篇が「天同金」と言っていて、一般に天同は水に属するとするのと違うことです(注で説明しました)。もし天同が本当に金に属するなら、天同・巨門が丑にあるのは金が水を生じる形になり、これが作者がこの句を書いた理由かもしれません。現代に置きかえると、羊陀が四墓に座ると、煞の性質が気迫と実行力に変わる、ということです。
5巳午乃火位,巳為水土所絕之地,更午垣之火,餘氣流於巳,水則倒流,火氣逆燄,必歸於巳。午屬火德,能生於已絕之土,所以廉貞火居焉。至於午火,旺照離明洞徹表裏,而文曲水入廟。若會紫府,則魁星拱斗,加以天機木貪狼木,謂之變景,愈加奇特。
書き下し巳午は乃ち火の位なり。巳は水土の絶する所の地と為し、更に午垣の火、余気巳に流れ、水はすなわち倒流し、火気は逆燄して、必ず巳に帰す。午は火徳に属し、能く已に絶せる土を生ず、所以に廉貞火居る。午火に至りては、旺照離明にして表裏を洞徹し、文曲水入廟す。若し紫府に会すれば、すなわち魁星拱斗、加うるに天機木・貪狼木をもってすれば、これを変景と謂い、愈奇特を加う。
現代語訳巳と午は火の位置です。巳は水と土が絶の地にいたる所で、さらに午の宮の火の余気が巳に流れこむので、水は逆流し、火の気は逆に燃え上がって、必ず巳に帰ります。午は火の徳に属し、すでに絶の地にいたった土をふたたび生じることができるので、廉貞星(火)がここに座ります。午の火に至っては、盛んに照り輝き、離の卦のように明るく、内も外も見通せ、文曲星(水)はここで入廟します。もし紫微星・天府星に会えば「魁星拱斗」で、さらに天機星(木)・貪狼星(木)が加われば、これを「變景」と言い、いっそう際立ちます。
- 水土所絕
- 長生十二位では、水と土は申で長生し、巳で絶となります。
- 離明
- 離の卦は火に属し、光明を表します。午は真南で、離にあたります。
- 魁星拱斗
- 言葉が簡略です。午の宮の星が紫微星・天府星を会照し、魁星が北斗を守るような形を指します。
この段はこの篇でいちばん読みにくい所で、火と土の長生と絶の地を使って巳午の宮を説明しています。結論は三つです。廉貞星は火に属し、巳午に居れば得地する。文曲星は午で入廟する。午の宮で紫府に会えば「魁星拱斗」となる。ここには全書のほかの篇と食い違う所が二つあります。一つ目は、〈諸星同垣:文昌星・文曲星〉の表が文曲星は寅午戌で落陥としていて、午の宮は落陥だということです。星格の輝度表でも落陥です。二つ目は、巻三の表が廉貞星は巳亥で落陥としていることです。つまりこの篇が五行から導いた廟旺は巻三の表と違い、それぞれ出どころが別なのです。盤を読むときは輝度表を基準にし、この篇は五行の理屈を理解するための参考にするのがよいでしょう。
6申酉金乃西方太白之氣,武曲居申而好生,擎羊在酉而用殺,加以巨門、祿存、陀羅而助之愈急,須得逆行,逢善化惡是為妙用。
書き下し申酉の金は乃ち西方太白の気なり。武曲は申に居りて生を好み、擎羊は酉に在りて殺を用う。加うるに巨門・禄存・陀羅をもってこれを助くれば愈急なり。須らく逆行を得て、善に逢い悪を化すべし、是れを妙用と為す。
現代語訳申・酉の金は、西方の太白の気です。武曲星は申に座って生み出すことを好み、擎羊星は酉にあって殺伐を行います。さらに巨門星・禄存星・陀羅星が加わって助ければ、いっそう激しくなります。必ず逆行を得て、善い星に出会って悪を化してこそ、妙用となります。
- 太白
- 金星のこと。西方は金に属します。
申酉は金に属し、西方の太白の気です。武曲星はそれ自体が金に属し、申では同類の助けを得るので「好生」となります。擎羊星は金に属し、酉は金の気がいちばん重いので「用殺」、つまり殺の性質が最も強くなります。さらに巨門星・禄存星・陀羅星が加わると「助之愈急」で、善い星に出会って化してもらう必要があります。星格の盤では、武曲星が申にあれば必ず天相星と同宮し、輝度は得地です。擎羊星は酉で落陥で、巻三の表も擎羊星は子午卯酉で落陥としています。ですからこの段の「用殺」はよいことではなく、金の気が強すぎることへの警告です。今の読み方では、擎羊星が酉で命宮に座る人は性格が鋭く、衝突しやすいので、天梁星・天同星・天相星のような穏やかな星で和らげる必要があります。
7亥水屬文曲破軍之要地,乃文明清高之士,萬里派源之潔,如大川之澤不為焦枯。居於亥位將入天河,是故為妙。破軍水於子旺之鄉,如巨海之浪淜洶湧,可遠觀而不可近倚,破軍是以居焉,若四墓之剋,充其瀰漫,必得武曲之金使其源流不絕方為妙矣。
書き下し亥水は文曲破軍の要地に属し、乃ち文明清高の士、万里派源の潔きこと、大川の沢の焦枯と為らざるがごとし。亥位に居りて将に天河に入らんとす、是の故に妙と為す。破軍水は子の旺の郷に於て、巨海の浪の淜洶湧するがごとく、遠く観るべくして近く倚るべからず、破軍是をもって居る。若し四墓の剋あらば、その瀰漫を充たし、必ず武曲の金を得てその源流をして絶えざらしめて方に妙と為す。
現代語訳亥は水に属し、文曲星・破軍星の要地で、(星がここにあれば)文明で清く気高い人です。万里にわたる源流のように潔く、大河の水辺のように干上がることがありません。亥の位にあって、まさに天の川に流れこもうとしているので、妙なのです。破軍星(水)は子の宮が旺の郷で、大海の波が逆巻くように、遠くから眺めることはできても、近くで寄りかかることはできません。破軍星がここに座るのはそのためです。もし四墓(土)に剋されるなら、その水の勢いを満たすために、必ず武曲星の金を得て水を生じ、源流を絶やさないようにしてこそ妙となります。
- 天河
- 天の川。
- 淜洶
- 波が逆巻くさま。
亥子は水に属します。文曲星・破軍星は水に属し、亥では「要地」を得て、文明で清く気高いとされます。破軍星は子が旺の郷で、巨海の波のように、遠くから眺めることはできても近くで寄りかかることはできない、と言います。後半は、破軍星が四墓(土)に剋されるなら、武曲星(金)が生じてこそ源流が絶えない、とします。ここで盤上の事実を一つ補えます。破軍星は巳亥では必ず武曲星と同宮するので、亥の宮では「破軍が武曲の金を得る」ことはどの盤でも成り立ちます。破軍星は子の宮では単独で座り、輝度は廟で、巻三の表も破軍星は子午で廟としています。「可遠觀而不可近倚」はとても生き生きした描写で、破軍星が命宮にある人はエネルギーが大きく、周りの人から一目置かれても、親しく近づいたり頼ったりはしにくい、ということです。
8其餘諸星以身命推之,無施不可至玄至妙者矣。
書き下しその余の諸星は身命をもってこれを推せば、施して可ならざる無く、至玄至妙なる者なり。
現代語訳そのほかの星も、すべて身宮・命宮によって推し量れば、使えない所は一つもなく、まことにこの上なく玄妙です。
結びに、そのほかの星もすべて身命によって推し量れば、使えない所はないと言います。この篇はいくつかの例を挙げただけなので、読者は同じ五行の理屈を自分でほかの星、ほかの宮に広げていくように、という意味です。これは断定ではなく方法論です。星の五行と宮の五行が生じ合うか、剋し合うか、助け合うかで、星がそこで力を出せるかどうかが決まります。今盤を読むときは、星格の輝度をそのまま見ればよく、輝度にはこうした考え方がすでに織りこまれています。けれどもこの篇の推し方を理解しておくと、同じ星が宮によって違う表れ方をする理由がわかり、輝度表の背後にある道理も見えてきます。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
〈星垣論〉は何について書かれていますか?
〈星垣論〉は『紫微斗数全書』巻一の一篇で、五行の生剋によって、星が各宮に入るときのよしあしを説明しています。寅卯は木に属し、天相・巨門は水に属するので、寅卯に到れば水が木を生じて旺相し、疏通します。四墓は土に属し、陀羅・擎羊は金に属するので、金趁土肥と言います。破軍は水に属し、子の宮が旺の郷です。
「破軍は子に居り、巨海の波のよう」とはどういう意味ですか?
〈星垣論〉は、破軍は水に属し、子の宮も水に属して水の旺の郷なので、破軍が子にあれば大海の波が逆巻くようで、「可遠觀而不可近倚」、つまり遠くから眺めることはできても近くで寄りかかることはできない、と言います。もし四墓の土に剋されるなら、武曲の金が水を生じて、源流が絶えないようにするのがよいとしています。
紫微斗数の星には五行があるのですか?
あります。〈星垣論〉は一つずつ書いています。天相は水、巨門は水、文曲は水、破軍は水、天梁は土、天府は土、禄存は土、陀羅は金、擎羊は金、武曲は金、廉貞は火、天機は木、貪狼は木です。この篇は天同を金としていて、後世一般に天同は水に属するとするのとは違います。
この篇に出てくる主星