十二宮諸星失陥貧賤論

〈十二宮諸星失陷貧賤論〉

『紫微斗数全書』巻一・賦文・諸星問答と格局・原文と現代語訳

はじめに

〈十二宮諸星失陥貧賤論〉は〈十二宮諸星得地富貴論〉の裏返しで、二十四句の七言の歌訣一首です。どの星がどの十二支で失陥して貧賤をつかさどるかを挙げています。丑未の巨門・天機、卯酉で擎羊に逢う形、辰戌の紫微・破軍が天羅地網に落ちる形、辰戌の貪狼・廉貞、午の宮の太陰・巨門、申の宮の武曲、酉の宮の天機・巨門、卯辰巳午の太陰、戌亥の太陽、巳亥の貪狼・七殺、卯酉の破軍です。煞が加わって劫に遇えば奸盗になり、貪狼星が化禄して四墓にあっても中くらいにすぎず、命宮が弱い地にあって化忌と空劫・羊・火鈴に逢えば「若非夭折主下賤,六畜之命不可平」とします。最後の二句は「二論不過五百字,富貴貧賤別得明」で、得地と失陥の二つの論をあわせて呼んでいます。

「羅網」は辰・戌のことで、辰が天羅、戌が地網です。「四墓」は辰戌丑未です。

1丑未巨機為值福,失陷此月福須輕,卯酉不喜逢羊刃,辰戌紫破朝羅網,

書き下し丑未の巨機は福に値うと為すも、此の月に失陥すれば福須らく軽かるべし。卯酉は羊刃に逢うを喜ばず、辰戌の紫破は羅網に朝す、

現代語訳丑・未の巨門星・天機星は、もとは福に会うとされますが、ここで失陥すれば、福はかならず軽くなります。卯・酉は擎羊星に会うのを喜びません。辰・戌の紫微星・破軍星は、天羅地網に向かっています。

值福
福に会うこと。
此月
意味がはっきりしません。「此宮」の誤りかもしれず、訳では字のとおりには訳さず省いています。
羊刃
擎羊星。
羅網
辰が天羅、戌が地網。
解説

〈十二宮諸星失陥貧賤論〉は〈十二宮諸星得地富貴論〉と対になる篇です。「丑未巨機為值福,失陷此月福須輕」について。丑・未の巨門星は天同星と同宮し、輝度は不得地です。丑・未の天機星は単独で座り、落陥です。二つの星は同宮しないので、ここは別々に論じています。「卯酉不喜逢羊刃」について。擎羊星は卯・酉でどちらも落陥で、これに当たるのは甲年・庚年の生まれだけです(擎羊星の主るところは)。

「辰戌紫破朝羅網」について。辰は天羅、戌は地網で、辰・戌の紫微星・破軍星は一方が座り、一方が向かい合う形です。昔の人は辰・戌を網の地と考え、星がここに落ちると閉じ込められたようなものだとしました。〈斗数骨髄賦〉も「限至天羅地網屈原溺水而身亡」と言っています。

✎ メモ

2辰休戌囚貪貞陷,午宮陰巨不堪稱,申宮合武為下格,酉逢機巨日無精,

書き下し辰に休し戌に囚す貪貞の陥、午宮の陰巨は称するに堪えず。申宮に武に合うは下格為り、酉に機巨に逢えば日に精無し、

現代語訳貪狼星・廉貞星は辰では休、戌では囚で、落陥しています。午の宮の太陰星・巨門星は言うに足りません。申の宮で武曲星と会うのは下格です。酉の宮で天機星・巨門星に会えば、太陽星に輝きがありません。

辰休戌囚
休・囚は五行の旺・相・休・囚・死の休と囚で、勢いを失っていることを指します。
日無精
太陽星に輝きがないこと。酉で太陽が西に沈むことを指します。
解説

「辰休戌囚貪貞陷」は、五行の旺相休囚で、辰・戌の貪狼星・廉貞星が勢いを失っていることを言っています。ところが星格が使う廟旺表では、辰・戌の貪狼星はどちらも廟で、辰・戌の廉貞星は利益です。どちらも落陥ではありません。歌訣と廟旺表のはっきりした食い違いの一つです。〈諸星同垣〉は、貪狼星が火星・鈴星に遇う形について「四墓宮豪富家資侯伯貴 辰戌宮佳」とまで言っていて、ここと正反対です。

「午宮陰巨不堪稱」について。午の太陰星は不得地、午の巨門星は旺で、二つの星は同宮せず、評価も違います。「申宮合武為下格」について。申の武曲星は天相星と同宮し、輝度は得地です。ところが〈星垣論〉は「武曲居申而好生」と言っていて(星垣論)、これも反対の言い方です。「酉逢機巨日無精」は、酉の宮の天機星・巨門星で、酉の太陽星も輝きがない、ということです。

✎ メモ

3卯辰巳午逢陰宿,戌亥逢陽亦不容,貪殺巳亥居陷地,破軍卯酉不為清,

書き下し卯辰巳午に陰宿に逢い、戌亥に陽に逢うも亦容れられず。貪殺巳亥に居るは陥地、破軍卯酉は清と為さず、

現代語訳卯・辰・巳・午で太陰星に会い、戌・亥で太陽星に会うのも、やはり受け入れられません。貪狼星・七殺星は巳・亥では陥地で、破軍星も卯・酉では清く貴くありません。

解説

この段の条件は大半が廟旺表と合っています。太陰星は卯・辰・巳で落陥、午で不得地、太陽星は戌で不得地、亥で落陥、貪狼星は巳・亥で落陥、破軍星は卯・酉で落陥です。違うのは七殺星だけで、巳・亥の七殺星は平和です。廟旺表では七殺星に落陥の地はありません。

この段は日月反背の位置を並べたものと言えます。太陰星が昼の宮に、太陽星が夜の宮にあれば輝きを失います。〈太微賦〉は「日月最嫌反背」と言い、ここではその具体的な宮をはっきり示しています。

✎ メモ

4加殺遇劫為奸盜,此是刑邪不必論,貪狼化祿居四墓,縱然遇吉亦中平,

書き下し殺を加え劫に遇えば奸盗と為る、此れ是れ刑邪にして論ずるを必せず。貪狼化禄して四墓に居れば、縦然吉に遇うも亦中平、

現代語訳煞星が加わり、地劫星に遇えば、悪人や盗賊になります。これは刑罰と邪悪の類で、論じるまでもありません。貪狼星が化禄して辰・戌・丑・未の四墓にあれば、たとえ吉星に遇っても中くらいで平凡です。

四墓
辰・戌・丑・未の四つの宮。
解説

「加殺遇劫為奸盜」は、前に挙げた失陥の星にさらに煞星と地劫星が加われば奸盗になる、ということです。「貪狼化祿居四墓,縱然遇吉亦中平」は注目に値します。戊年は貪狼星が化禄し、貪狼星は辰戌丑未の四墓でどれも廟なのに、中くらいにしかなりません。

これは〈斗数骨髄賦〉の「貪武墓中居三十才發福」(斗数骨髄賦)とつなげて読めます。貪狼星が墓の地にあると発するのが遅いので、若いうちは中くらいに見える、ということです。一方で〈貪狼星の性情〉は「貪狼主限四墓臨,更喜人生四墓生,若見火星多橫發」と言っていて、四墓の貪狼星のよしあしは、さらに火星と生まれ年を見る必要があることがわかります。

✎ メモ

5命纏弱地休逢忌,空劫擎羊加火鈴,若非夭折主下賤,六畜之命不可平,

書き下し命弱地に纏れば忌に逢うを休めよ、空劫擎羊に火鈴を加う。若し夭折に非ざれば下賤を主る、六畜の命は平らかなるべからず、

現代語訳命宮が弱い地にあるなら、化忌に会ってはいけません。地空星・地劫星・擎羊星に、さらに火星・鈴星が加われば、夭折しなければ下賤で、家畜のような命で、一生平穏ではありません。

命纏弱地
命宮が弱い地にあり、星が失陥していること。
六畜之命
牛・馬・豚・羊・鶏・犬のような命。きわめて卑しいことを指します。
解説

この段は失陥の格のいちばん悪い場合です。命宮が弱い地にあり、さらに化忌、地空・地劫、擎羊、火星・鈴星に遇えば、「若非夭折主下賤,六畜之命不可平」です。条件は失陥に複数の煞星と化忌が重なることで、一つの条件だけではありません。

「六畜之命」は〈天空・地劫の主るところは〉の「重者六畜之命」と同じ言い方で(天空・地劫の主るところは)、全書がいちばん下の格に使う決まった表現です。この種の断定を今読むなら、命盤の作りに支えが乏しく、圧力が一点に集まっていて、人生が骨の折れるものになりやすく、本人の努力と運限の補いが頼りになる、ということです。

✎ メモ

6旺地發福終遠大,陷地崢嶸到底傾,二論不過五百字,富貴貧賤別得明。

書き下し旺地は福を発して終に遠大、陥地は崢嶸たるも到底傾く。二論は五百字に過ぎずして、富貴貧賤別ち得て明らかなり。

現代語訳旺地なら、福を発してついには遠大になります。陥地なら、一時は高くそびえても、結局は傾きます。〈十二宮諸星得地富貴論〉と〈十二宮諸星失陥貧賤論〉の二つの論は五百字にすぎませんが、富貴と貧賤をはっきり分けています。

崢嶸
高くそびえて目立つこと。一時の得意を指します。
二論
〈十二宮諸星得地富貴論〉と、この篇〈十二宮諸星失陥貧賤論〉。
解説

篇全体の結びが「旺地發福終遠大,陷地崢嶸到底傾」です。輝度について全書がもっともじかにまとめた言葉で、旺地なら福が長く続き、陥地なら一時得意になっても最後は傾く、と言います。「二論不過五百字」は、二つの篇をあわせても五百字に満たず、それで富貴と貧賤を分けられる、ということです。

実際に照らし合わせた結果を見ると、この二篇の言い方は星格が使う廟旺表と大部分で一致しますが、辰戌の貪狼星、午の巨門星、巳亥の七殺星、亥の天梁星など、何か所も違いがあります。全書の廟旺表と歌訣が、別の段階でまとめられたものだということです。盤で輝度を見るときは廟旺表を基準にし、歌訣の特別な言い方は参考にすればよいでしょう。

✎ メモ
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
丑未巨机为值福,失陷此月福须轻,卯酉不喜逢羊刃,辰戌紫破朝罗网, 辰休戌囚贪贞陷,午宫阴巨不堪称,申宫合武为下格,酉逢机巨日无精, 卯辰巳午逢阴宿,戌亥逢阳亦不容,贪杀巳亥居陷地,破军卯酉不为清, 加杀遇劫为奸盗,此是刑邪不必论,贪狼化禄居四墓,纵然遇吉亦中平, 命缠弱地休逢忌,空劫擎羊加火铃,若非夭折主下贱,六畜之命不可平, 旺地发福终远大,陷地峥嵘到底倾,二论不过五百字,富贵贫贱别得明。

よくある質問

〈十二宮諸星失陥貧賤論〉には何が書かれていますか?

全書巻一にある歌訣一首で、どの星がどの十二支で失陥して貧賤をつかさどるかを挙げています。たとえば「卯酉不喜逢羊刃」「午宮陰巨不堪稱」「貪殺巳亥居陷地」で、命宮が弱い地にあって化忌や空劫・羊・火鈴に逢えば、夭折しなければ下賤をつかさどる、と言います。

貪狼星が辰戌丑未で化禄するのはよい配置ですか?

歌訣は「貪狼化祿居四墓,縱然遇吉亦中平」と言います。貪狼星が辰戌丑未で化禄すると、吉星に遇っても中くらいで平凡にすぎない、という意味です。

「辰戌紫破朝羅網」とはどういう意味ですか?

辰は天羅、戌は地網で、あわせて羅網と呼びます。この句は、紫微星・破軍星が辰・戌にあるのは失陥の組み合わせだと言っています。通行の安星法では、紫微星が辰・戌にあるとき破軍星は対宮にあり、二つの星は一方が座り一方が照らす形になります。

この篇に出てくる主星

貪狼星破軍星
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