禄存星の性情
〈祿存星性情〉
『紫微斗数全書』巻二・安星起例と十二宮・原文と現代語訳
はじめに
この篇は『紫微斗数全書』巻二「諸星の性情」のうち禄存星の部分で、後半に天魁星・天鉞星(魁鉞)が付いています。
- 禄存星(第1〜14段):禄存星は五行で土に属する北斗の星で、爵位と尊さをつかさどります。人柄は老成して落ち着き、心が慈しみ深く実直で、多くを学んで多くをこなします。命宮に座れば富貴をつかさどり、どの宮でも福を降ろし災いを消します。多くの煞星に逢えば、祖業を離れ、あらためて別の人を父母として拝むとします。紫微星・天府星・天相星・天同星・天梁星・太陽星・太陰星・武曲星との同宮を喜び、単独で命宮・身宮を守れば「看財之奴」、つまり守銭奴です。地空星・地劫星・火星・鈴星の沖照を嫌います。続いて男命・女命がそれぞれ二首、入限が四首あります。
- 魁鉞(第15〜20段):天魁星・天鉞星は五行で火に属し、「天乙貴人」です。身宮・命宮でこれに逢い、さらに吉星があれば、若くして科挙に合格します。富貴でなくても聡明で秀麗、「有威可畏,有儀可象」とします。女命は吉に逢えば宰相の夫人になることが多いとします。
擎羊星は必ず禄存星の次の宮に、陀羅星は必ず一つ前の宮に置かれるので、禄存星はいつも羊陀に夾まれています。歌訣に「陀火交加福不全」とありますが、羊陀が禄存星と同宮することはありません。星格の盤では、禄存星にも魁鉞にも輝度を付けていません。
1祿存土,北斗司爵貴星。老成持重心慈耿直,有機變多學多能,命遇主富貴,文人有聲名,諸宮降福消災,逢諸殺棄祖重拜父母。
書き下し禄存は土、北斗の爵貴を司る星。老成持重、心慈にして耿直、機変有りて多学多能、命に遇えば富貴を主り、文人は声名有り、諸宮に福を降し災を消す、諸殺に逢えば祖を棄て重ねて父母を拝す。
現代語訳禄存星は五行で土に属する北斗の星で、爵位と尊さをつかさどります。人柄は老成して落ち着いており、心は慈しみ深く実直で、機転が利き、多くを学んで多くをこなします。命宮に座れば富貴をつかさどり、読書人なら名声があります。どの宮でも福を降ろし、災いを消します。多くの煞星に逢えば、祖業を捨てて離れ、あらためて別の人を父母として拝みます。
- 司爵貴
- 爵位と尊さをつかさどること。
- 重拜父母
- 養子に出ること、あるいは別に義理の父母を持つこと。
禄存星は生まれ年の十干で置きます。甲は寅、乙は卯、丙・戊は巳、丁・己は午、庚は申、辛は酉、壬は亥、癸は子なので、辰・戌・丑・未の四宮には禄存星が来ることはありません。次の宮には必ず擎羊星が、一つ前の宮には必ず陀羅星があり、これが羊陀夾禄の構造です。「老成持重、心慈耿直」という性格の描写は、禄存星の守りに入る保守的な性質と合っています。「逢諸殺棄祖重拜父母」は、昔の養子や里子の言い方です。煞星の重い禄存星の命では、生まれた家の福を受け止めきれず、別の家に頼ることになる、というのです。現代風に読むと、若いうちに家を離れたり、他人に育てられたり、生まれた家の外に別のよりどころを見つけたりする、ということです。
2喜紫府相同梁日月及武曲同宮為妙,單守命身,看財之奴。怕空劫火鈴沖照則為下局,巧藝多精之人,陷地減福。
書き下し紫府相同梁日月及び武曲と同宮するを喜び妙と為す、単り命身を守れば、看財の奴。空劫火鈴の沖照を怕る、すなわち下局と為す、巧芸多く精しき人、陥地は福を減ず。
現代語訳禄存星は、紫微星・天府星・天相星・天同星・天梁星・太陽星・太陰星、それに武曲星と同宮するのを喜び、これが最もよい形です。単独で命宮・身宮を守れば、財を見張る奴です。地空星・地劫星・火星・鈴星の沖照を嫌い、そうなれば下等の格局で、多くの手わざに通じた人です。陥地では福が減ります。
- 看財之奴
- 財を見張るばかりで使うことを惜しむ人。守銭奴。
- 單守
- 宮にその星だけがあって、主星が同宮していないこと。
この段には禄存星について最もよく知られた二つの句があります。一つは、紫府相同梁日月武曲との同宮を喜ぶこと、つまり禄には使い手となる主星が必要だということです。もう一つは「單守命身,看財之奴」です。〈禄存星の主るところは〉はこれを「若獨守命而無吉化,乃看財奴耳」としていて(禄存星の主るところは)、「無吉化」という条件が加わっています。看財奴とは守銭奴のことで、お金はあっても使い方を知りません。後半は空劫火鈴の沖照を嫌い、陥地では福が減ると言いますが、禄存星には全書の廟旺表でも星格でも輝度が付いておらず、〈諸星同垣〉はさらに「祿存十二宮中皆入廟」と言っています(諸星同垣:魁鉞・左輔・右弼・禄存)。ですから、ここの「陷地」は同宮する主星の落陥か、禄存星が空亡に逢うことを指すと考えるほうが自然です。
3在命宮官祿田宅為福。女命清白秀麗,有男子之志。
書き下し命宮官禄田宅に在るを福と為す。女命は清白秀麗、男子の志有り。
現代語訳禄存星は命宮・官禄宮・田宅宮にあれば福があります。女命の禄存星は、清廉で秀麗で、男子のような志を持っています。
禄存星は命宮・官禄宮・田宅宮で福になります。〈禄存星の主るところは〉が挙げるのは「身命、田宅、財帛為要」で(禄存星の主るところは)、ここでは財帛宮が官禄宮に入れ替わっており、二か所で少し食い違います。合わせて見ると、禄存星に最も向くのは「守る」ことに関わる宮、つまり命を守り、家の財産を守り、仕事を守る宮です。女命は「清白秀麗,有男子之志」です。〈禄存星の主るところは〉では「女人清淑機巧能幹能為,有君子之志」となっています(禄存星の主るところは)。いまの感覚では、禄存星の女命は実際的で有能、家計のやりくりを心得ていて、人に頼らない人です。
祿存入男命吉凶訣:
5人生若遇祿存星,性格剛強百事成,官員遷兮昌曲會,滔滔衣祿顯門庭。
書き下し人生もし禄存星に遇えば、性格剛強にして百事成る、官員は遷らん昌曲会すれば、滔滔たる衣禄門庭を顕す。
現代語訳人がもし禄存星に遇えば、性格は剛く強く、何事も成し遂げます。官員は文昌星・文曲星と会えば昇進し、衣食と俸禄がとめどなく入り、家門を輝かせます。
男命で禄存星に遇えば「性格剛強,百事成」です。第1段の「心慈」と食い違うように見えますが、実は禄存星の二つの面です。人には寛大で、自分の原則やお金のことには頑固なのです。「官員遷兮昌曲會」は、禄存星に昌曲が加わる、つまり「禄」に「文」が加わる形で、太陽星・天梁星がそろえば陽梁昌禄になります。〈諸星同垣〉の「昌曲祿存猶為奇特」も同じ方向の言葉です(諸星同垣:文昌星・文曲星)。星格の盤では、禄存星のある宮の三方四正に文昌星・文曲星があるかを見れば足ります。
6祿存守命莫逢沖,陀火交加福不全,天機空劫忌相會,空門僧道得清閑。
書き下し禄存命を守れば沖に逢うこと莫かれ、陀火交加すれば福全からず、天機空劫忌相会すれば、空門の僧道清閑を得。
現代語訳禄存星が命宮を守るなら、沖に逢ってはいけません。陀羅星と火星が交わり加われば、福は完全ではありません。天機星・地空星・地劫星・化忌が会えば、出家して僧侶や道士になり、かえって静かな暮らしを得ます。
- 陀火交加
- 禄存星の一つ前の宮には必ず陀羅星、次の宮には必ず擎羊星があり、羊陀が禄存星と同宮することはありません。ここはおそらく羊陀に夾まれ、さらに火星を見ることを指します。
禄存星が命宮を守れば沖に逢ってはならず、陀羅星・火星が交われば福は完全でなく、天機星・空劫・化忌が会えば空門だけが向く、という首です。知っておきたい構造が一つあります。陀羅星はいつも禄存星のすぐ隣の宮にあるので、「陀」はほとんど常にそばにいます。この句の本当の条件は陀羅星と火星が「交加」すること、たとえば流年の陀羅星や火星が重なってくることです。ここに天機星が出てくるのは、天機星が善に化気し、変動をつかさどるので、空劫と会えば世を離れる傾向が出るからかもしれません。現代に引き寄せて読むと、守りを固める型の人が変動と空振りに多く出会ったら、静かで争いのない環境を見つけるのがいちばんの道だ、ということです。
祿存入女命吉凶訣:
8女命若遇祿存星,紫府加臨百事寧,更遇同貞相湊合,必然注定是夫人。
書き下し女命もし禄存星に遇い、紫府加臨すれば百事寧し、更に同貞の相湊合するに遇えば、必然注定して是れ夫人。
現代語訳女命がもし禄存星に遇い、紫微星・天府星が加われば、何事も安らかです。さらに天同星・廉貞星が集まれば、必ず封号を受けた夫人になると定まっています。
- 夫人
- 昔、高官の妻に与えられた封号。
女命の禄存星に紫府が加われば何事も安らかで、さらに同貞が加われば「必然注定是夫人」です。〈禄存星の主るところは〉の「紫府廉同會合,作祿存上局」も(禄存星の主るところは)、言っていることは同じです。この四つの主星のうち、紫微星・廉貞星・天同星は紫微星系に、天府星は天府星系に属します。四つがみな禄存星の三方に入れるかどうかは、禄存星がどの宮にあるかで決まります。「夫人」は朝廷から封号を贈られた命婦で、昔の女性にとって最高の栄誉でした。今の暮らしに置き換えると、本人がお金のことに明るく、しっかりした家庭や仕事のよりどころもあって、暮らしが安定している、ということです。
9祿存入命陷宮來,空劫火鈴必為災,若無吉曜來相湊,夫妻分離永不諧。
書き下し禄存命に入りて陥宮に来たり、空劫火鈴あれば必ず災と為る、もし吉曜の来たりて相湊まる無くんば、夫妻分離して永く諧わず。
現代語訳禄存星が命宮に入って陥宮にあり、地空星・地劫星・火星・鈴星に遇えば、必ず災いがあります。もし吉星が来て集まらなければ、夫婦は別れ、いつまでも和合しません。
この首は禄存星が命宮に入って「陷宮」にあると言いますが、禄存星そのものには廟陥の区別がないので、命宮の主星が落陥していると読むほうが筋が通ります。条件は空劫火鈴があって吉星がないことで、結果は夫婦が別れて和合しないことです。禄存星は守ることをつかさどり、空劫に沖されると、守れなくなるのは財だけでなく家もです。これは、禄存星の命が若いうちに家を離れるという第1段と響き合っています。禄存星が煞に遇えば、まず家庭の面に影響が出るのです。現代風に読むと、経済的な重圧や価値観の違いから結婚生活が崩れやすいので、パートナーとのお金の取り決めをとくにはっきりさせておく、ということです。
祿存入限吉凶訣:
11祿存主限最為良,作事求謀盡吉祥,仕吏逢之多轉職,庶人遇此足錢糧。
書き下し禄存限を主るは最も良と為す、事を作し謀を求むれば尽く吉祥、仕吏これに逢えば多く職を転じ、庶人此れに遇えば銭糧足る。
現代語訳禄存星が運限をつかさどるのは最もよいことで、事を行い、謀を求めれば、すべて吉祥です。官に仕える人がこれに逢えば多くは職が上がって移り、庶民がこれに遇えば金と食糧が足ります。
- 仕吏
- 官職にある人と、役所の吏員。
禄存星が運限をつかさどるのは最もよく、事は吉祥で、官吏は職が移り、庶民は金と食糧が足りる、という首です。禄存星の本命での位置は年干で決まっていますが、大限は十年ごとに一宮ずつ移るので、誰でも一つか二つの大限は禄存星のある宮かその三方を通ります。星格で大限を見るときは、その大限の命宮の三方四正に禄存星があるか、あるいは大限の十干がどの星を化禄させるかを確かめます。いまの言葉で言えば、収入が安定して貯えも積み上げやすい、土台を固める十年です。
12祿存主限壽延長,作事營謀萬事昌,更有科權兼左右,定知此限富倉廂。
書き下し禄存限を主れば寿延長し、事を作し営謀すれば万事昌んなり、更に科権有りて左右を兼ぬれば、定めて知る此の限倉廂に富むを。
現代語訳禄存星が運限をつかさどれば、寿命が延び、事を行い謀ればすべてが栄えます。さらに化科・化権があり、左輔星・右弼星も兼ねれば、この運限では倉と箱が満ちると必ずわかります。
校勘 「富倉廂」の「廂」は「箱」とすべきです(全書の他の箇所では「倉箱」と書き、たとえば財帛宮の篇に「豐足倉箱」とあります)。
この首は前の首にさらに上乗せしています。科権に左右を兼ねれば「富倉廂」で、「廂」は「箱」と読みます(校勘を参照)。禄存星に化科・化権が加われば、後の時代に言う〈禄・権・科の三奇〉の類になり、左右は助けです。全書は禄存星と化禄を二種類の禄と見ていて、両方がそろうと双禄と呼び、〈諸星同垣〉には「雙祿重返終身富貴」とあります(諸星同垣:魁鉞・左輔・右弼・禄存)。底本は「重返」と書いていて、意味は双禄が重なって逢うことです。今の暮らしに置き換えると、この大限は収入が安定するだけでなく、名声と主導権もついてくるので、仕事の規模を広げるのに向いています。
13祿存祿主多富足,婚姻嫁娶添嗣續,更兼科祿又同宮,必主榮華享厚福。
書き下し禄存は禄の主にして多く富足、婚姻嫁娶して嗣続を添う、更に科禄を兼ねて又同宮すれば、必ず栄華を主りて厚福を享く。
現代語訳禄存星は禄の主の星で、多くは豊かです。婚姻や嫁入りがあり、跡継ぎが増えます。さらに化科・化禄を兼ねて同宮すれば、必ず栄華をつかさどり、厚い福を受けます。
- 嗣續
- 跡継ぎ、子孫。
この首は禄存星を結婚と子孫に結びつけています。「婚姻嫁娶添嗣續」です。禄は福をつかさどり、昔の福の中身は、家を持ち、子をもうけ、財があることでした。「更兼科祿又同宮」は、化禄が禄存星と同宮し、そこに化科が加わる形で、双禄に科が加わるので福はいっそう厚くなります。現代に引き寄せると、禄存星の運限はお金だけでなく、家庭を築き仕事を立てるのにもよい時期で、家を買う、結婚する、子どもを持つといったことがこうした時期によく起こります。星格では、大限の禄存星と流年の化禄が同じ宮に重なるときに最もはっきり表れます。
14祿存交馳限步逢,最怕劫空相遇同,更兼太歲惡星沖,限倒其年入墓中。
書き下し禄存の交馳に限歩逢い、最も劫空の相遇いて同じきを怕る、更に太歳の悪星の沖を兼ぬれば、限倒れて其の年墓中に入る。
現代語訳運限が禄存星と天馬星の交馳に逢うとき、最も怖いのは地劫星・地空星に一緒に遇うことです。さらに太歳の凶星が沖してくれば、運限が倒れ、その年に墓に入ります。
- 交馳
- 禄存星と天馬星が会うこと。
- 太歲
- 流年。
15魁鉞火,即天乙貴人,若人身命逢之,更得諸吉加臨,三合吉星守照,必少年登科及第,
書き下し魁鉞は火、すなわち天乙貴人、もし人の身命これに逢い、更に諸吉の加臨を得て、三合に吉星守照すれば、必ず少年にして登科及第す。
現代語訳天魁星・天鉞星は五行で火に属し、天乙貴人です。もし人の身宮・命宮でこれに逢い、さらに多くの吉星が加わり、三合に吉星があって守り照らせば、必ず若くして科挙に合格します。
- 天乙貴人
- 命理で最も重要な貴人の神。紫微斗数では天魁星・天鉞星がこれを表します。
- 登科及第
- 科挙に合格すること。
この段から、原文は天魁星・天鉞星の話に移ります。全書は魁鉞を禄存星の篇のあとに付けて編んでいるのです。魁鉞は年干で置き、天魁星は陽の貴人、天鉞星は陰の貴人で、合わせて天乙貴人と呼ばれます。条件は身命でこれに逢い、さらに諸吉が加わり、三合に吉星があることで、そうなれば若くして科挙に合格します。〈諸星同垣〉には「魁鉞夾命為奇格」(諸星同垣:魁鉞・左輔・右弼・禄存)、「魁鉞命身多折桂」(諸星同垣:魁鉞・左輔・右弼・禄存)とあります。後の時代には坐貴向貴と魁鉞夾の二つの格があります。今の目で見ると、試験・選考・推薦の場面で、よく引き立ててくれる人に恵まれる、ということです。
16逢凶忌不為文章秀士,可為弟子之師,限步逢之必主清高,名成利就。
書き下し凶忌に逢えば文章の秀士と為らずとも、弟子の師と為るべし、限歩これに逢えば必ず清高を主り、名成り利就る。
現代語訳凶星や化忌に逢えば、文章で名を上げる秀才にはなれなくても、弟子を教える師にはなれます。運限がこれに逢えば、必ず清らかで高潔であることをつかさどり、名も利も手に入ります。
- 秀士
- 才学のある読書人。
魁鉞が凶忌に遇えば文章の秀士にはなれなくても人の師にはなれ、運限でこれに逢えば清高で名も利も得る、と言います。これは全書の化科への評価とほとんど同じ文型で、〈化科の主るところは〉は「如逢惡曜亦為文章秀士,可作群英師範」と言い、女命の「雖四殺沖破,亦為富貴」も第18段と同じです(化科の主るところは)。全書では魁鉞も化科も「人に見られ、認められる」星と見なされていて、煞星はその等級を下げるだけで、働きを失わせはしないことがわかります。「可為弟子之師」はとても具体的な行き先で、官にならなくても師にはなれる、ということです。今の暮らしで言えば、学術・教育・研修・顧問といった道が、魁鉞が煞に遇ったときに最も安定した方向です。
17大抵此星若身命逢之,雖不富貴亦主聰明,為人秀麗清白,有威可畏,有儀可象。
書き下し大抵此の星もし身命これに逢えば、富貴ならずといえども亦聡明を主る、人と為り秀麗清白、威有りて畏るべく、儀有りて象るべし。
現代語訳おおよそ、身宮・命宮でこの星に逢えば、富貴でなくても聡明をつかさどります。人柄は秀麗で清廉で、人が畏れるほどの威厳があり、人が手本にするほどの風格があります。
魁鉞が身命に座れば、富貴でなくても聡明で、秀麗で清廉、「有威可畏,有儀可象」です。これは魁鉞の最も基本的な性格の描写で、度量があってわきまえがあり、人に敬われる人です。「有威可畏,有儀可象」は『左伝』が威儀を論じたくだりから出た言葉で、君子を形容するものです。魁鉞は年干によって決まった十二支にしか来ません。天魁星は子・丑・卯・午・亥だけ、天鉞星は寅・巳・未・申・酉だけで、辰・戌の二宮には魁鉞が来ることはありません。これは星格の盤で確かめられる構造です。
18女命逢吉多為宰相婦,逢凶殺也主富貴。
書き下し女命吉に逢えば多く宰相の婦と為る、凶殺に逢うもまた富貴を主る。
現代語訳女命が魁鉞に遇い、さらに吉星に逢えば、多くは宰相の夫人になります。凶星や煞星に逢っても、富貴をつかさどります。
女命の魁鉞は吉に逢えば多く宰相の夫人になり、凶殺に逢っても富貴をつかさどる、と言います。めずらしい一句です。全書は女命について、煞に逢えば否定的な断定を下すことが多いのに、魁鉞ではここで凶に逢っても富貴だと言っています。凶忌に逢っても師にはなれるという第16段と同じ理屈で、魁鉞は貴人の星なので、煞星にもその貴さは下げられないのです。〈天魁星・天鉞星の主るところは〉は魁鉞を「上界和合之神」と言います(天魁星・天鉞星の主るところは)。現代風に読むと、女命で魁鉞のある人は、大事な場面で引き上げてくれる人がいることが多く、社会的な立場が安定しています。
魁鉞入命限吉凶訣:
20魁鉞命身限遇昌,常人得此足錢糧,官員遇此高遷擢,必定當年面帝王。
書き下し魁鉞命身限に昌に遇えば、常人此れを得て銭糧足り、官員此れに遇えば高く遷擢し、必定当年帝王に面す。
現代語訳天魁星・天鉞星が命宮・身宮・運限にあって、文昌星に遇えば、普通の人がこれを得れば金と食糧が足り、官員がこれに遇えば高く昇進し、必ずその年に帝王に拝謁します。
- 遷擢
- 昇進すること、引き立てられること。
魁鉞が命身か運限にあって文昌星に遇えば、普通の人は金と食糧が足り、官員は高く昇進し、「當年面帝王」です。魁鉞は貴人、文昌星は試験と文書で、二つが出会えば、審査する人の目に留まり、上の人に呼ばれる形になります。〈流年の文昌星・文曲星は〉は「小限太歲逢魁鉞、左右、臺座、日月、科權祿馬三方拱照,決然高中」と言います(流年の文昌星・文曲星は)。いまに当てはめると、面接、昇進の審査、受賞、上司から名指しされることなどが、この組み合わせが運限に来たときの姿です。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
『紫微斗数全書』では、禄存星は何をつかさどりますか?
全書は、禄存星は五行で土に属する北斗の星で、爵位と尊さをつかさどるとします。人柄は老成して落ち着き、心が慈しみ深く実直で、機転が利き、多くを学んで多くをこなします。命宮に座れば富貴をつかさどり、読書人は名声を得て、どの宮でも福を降ろし災いを消します。命宮・官禄宮・田宅宮にあるのが最も福があるとします。多くの煞星に逢えば、祖業を離れ、あらためて別の人を父母として拝むとします。
禄存星が単独で命宮を守ると、なぜ「看財之奴」と言うのですか?
原文は、禄存星が「單守命身,看財之奴」と言います。命宮か身宮に禄存星だけがあって主星が同宮していなければ、お金はあっても、財を見張るばかりで使うことを惜しむ、つまり守銭奴だ、という意味です。全書は、禄存星が紫微星・天府星・天相星・天同星・天梁星・太陽星・太陰星・武曲星と同宮するのを喜びます。
天魁星・天鉞星はどんな星ですか?
全書は、魁鉞は五行で火に属し、「天乙貴人」だとします。身宮・命宮でこれに逢い、さらに吉星が加わり、三合に吉星があれば、必ず若くして科挙に合格するとします。凶星や化忌に遇っても人の師にはなれ、富貴でなくても聡明で、人柄は秀麗で清廉、威厳と風格があるとします。
女命の禄存星について、全書は何と言っていますか?
全書は、女命の禄存星は清廉で秀麗、男子のような志を持つとします。紫微星・天府星が加われば何事も安らかで、さらに天同星・廉貞星が集まれば、必ず夫人になるとします。一方で、禄存星が命宮に入って陥宮にあり、地空星・地劫星・火星・鈴星があって吉星が集まらなければ、夫婦は別れ、いつまでも和合しないとします。
この篇に出てくる主星