田宅宮
『紫微斗数全書』巻二・安星起例と十二宮・原文と現代語訳
はじめに
この篇は『紫微斗数全書』巻二の、十二宮ごとに諸星の判断を並べた部分から取ったもので、底本の見出しは「田宅」です。見るのは家屋と田地、そして親から受け継ぐ家産です。書き方はほかの宮と同じで、一つの星に一条ずつ、まずその星が田宅宮にあると「得祖業」か「退祖」か「自置」かを言い、次にどの星と同宮するとどう変わるかを言い、最後に擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星に会うと、たいてい「有進有退」か「全無」になると言います。順番は十四主星、続いて文昌星・文曲星・左輔星・禄存星・擎羊星・陀羅星・火星・鈴星で、最後の一条が斗君です。
よく出る言葉を先に挙げておきます。
- 祖業・退祖・破祖:祖業は上の世代が残した家産です。退祖は祖産を守りきれずに手放すこと、破祖は祖産を食いつぶすことです。
- 自置・創置・白手自置:自分の力で不動産を買い入れることです。
- 見成家業:そのまま受け継げる、できあがった家業があることです。
- 有分・無分:祖産や田産の取り分があるか、ないかです。
底本にはいくつか字の誤りがあります。太陽星の条の「初旺未平」と、貪狼星の条の「也去中未自有置」の「未」は、どちらも「末」の誤りと思われます。それぞれの段の校勘に書いてあります。訳文は原文どおりに訳し、「全無」は「まったくない」としています。
1紫微茂盛自置旺相,加羊陀火鈴空劫,有置有去,破軍同退祖,天相同有見成家業,得左右昌曲。
書き下し紫微は茂盛にして自置旺相、羊陀火鈴空劫を加うれば、置く有り去る有り、破軍同じくすれば祖を退く、天相同じくすれば見成の家業有り、左右昌曲を得。
現代語訳紫微星が田宅宮にあると、田産は茂り盛んで、自分で不動産を買い、勢いがあります。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加わると、買うこともあれば失うこともあります。破軍星と同宮なら祖業から退きます。天相星と同宮なら、できあがった家業があります。左輔星・右弼星・文昌星・文曲星を得て(文はここで途切れています)。
- 自置
- 自分の力で不動産を買い入れること。
- 退祖
- 祖産を守りきれず、祖業から退くこと。
- 見成家業
- できあがった家業。そのまま受け継げるもの。
校勘 最後の「得左右昌曲」のあとに続く文がなく、脱文があると思われます。
紫微星が田宅宮にあると「茂盛自置旺相」です。帝王の星が家産を治めるので、自分で買うことができ、守ることもできる、という意味です。この条が挙げる同宮の相手は二つだけで、破軍星(同宮するのは丑・未だけ)と天相星(辰・戌だけ)です。ここでは破軍星と同宮すれば「退祖」とありますが、同じ篇の破軍星の条(第14段)は「紫微同有見成家業」と言っていて、同じ二星について正反対の判断になっています。天相星と同宮すれば「有見成家業」ですが、天相星の条では「紫微同自置」です。全書の宮ごとの判断は一つの星に一条ずつ書かれているので、同じ組み合わせが二つの条で食い違うことがよくあります。読むときは両方の説を並べておけば十分です。暮らしに引きつけると、紫微星が田宅宮にある人は住まいの質にこだわり、家を自分で買う傾向があり、家の中でも主導権を握ることが多いと読めます。
2天機退祖新創置,巨門同在卯宮有田莊,在酉宮不守祖業,先大後小,天梁同有置晚年富,太陰同自置旺相。
書き下し天機は祖を退き新たに創置す、巨門同じくして卯宮に在れば田荘有り、酉宮に在れば祖業を守らず、先に大にして後に小、天梁同じくすれば置く有りて晩年富む、太陰同じくすれば自置旺相。
現代語訳天機星が田宅宮にあると、祖業から退き、あらためて自分で買い入れます。巨門星と同宮して卯の宮にあれば田荘があり、酉の宮にあれば祖業を守れず、はじめは大きく、のちに小さくなります。天梁星と同宮なら不動産を持ち、晩年に富みます。太陰星と同宮なら、自分で買い入れて勢いがあります。
- 創置
- 自分で興し、買い入れること。
天機星が田宅宮にあると「退祖新創置」です。天機星は変動をつかさどるので、田宅宮では祖産が手元に残らず、家は自分で買い直す、という読みになります。巨門星との同宮は卯・酉だけで、この段はそれをさらに分け、卯の宮なら田荘があり、酉の宮なら祖業を守れず先に大きく後に小さい、としています。星格の輝度では、卯の宮も酉の宮も天機星は旺、巨門星は廟で、明るさは同じです。卯と酉の差は、卯が木に属し、天機星も木に属するという五行の考え方から来ているのでしょう。天梁星との同宮(辰・戌)は晩年に富み、太陰星との同宮(寅・申)は自置旺相です。今なら、天機星が田宅宮にある人は引っ越しが多く、住まいがよく変わり、家はたいてい自分の力で手に入れると読めます。
3太陽入廟得祖業,初旺未平,太陰同加吉星田多,巨門同在寅宮旺盛,在申宮退祖,不為無田產,陷地逢羊陀火鈴空劫全無。
書き下し太陽入廟すれば祖業を得、初め旺じ未平らかなり、太陰同じくして吉星を加うれば田多し、巨門同じくして寅宮に在れば旺盛、申宮に在れば祖を退く、田産無しと為さず、陥地にして羊陀火鈴空劫に逢えば全く無し。
現代語訳太陽星が田宅宮にあると、入廟なら祖業を得ますが、はじめは盛んで、終わりは平凡です。太陰星と同宮し、さらに吉星が加われば田産が多くあります。巨門星と同宮して寅の宮にあれば盛んで、申の宮にあれば祖業から退きますが、田産がないわけではありません。落陥のうえ擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星に会えば、まったくありません。
校勘 「初旺未平」の「未」はおそらく「末」の誤りで、〈初旺末平〉なら、はじめは盛んで終わりは平凡、という意味になります。底本は「末」と「未」をよく取り違えています。訳文は「末」として訳しました。
太陽星が田宅宮にあって入廟なら祖業を得ますが、はじめは盛んで終わりは平凡です(「初旺未平」の「未」は「末」と読みます)。太陽星は外へ広がる性質の星なので、田宅宮では家運が先に盛んになり、あとは落ち着いていきます。太陰星との同宮は丑・未だけで、吉星が加われば田産が多く、巨門星との同宮は寅・申だけで、寅の宮なら盛ん、申の宮なら祖業から退きます。この寅と申の違いは星格の輝度でも確かめられます。太陽星は寅で旺、申で得地なので、寅の宮の太陽星のほうが明るいのです。〈諸星同垣:巨門星〉も、巨門星と太陽星は寅の宮で命宮を立てるのがいちばんよいとしていて、田宅宮の判断は命宮の判断と一致しています。一方、同じ篇の巨門星の条は、太陽星と同宮すれば「先無後有」としています。太陽星が田宅宮にある家は、開放的でにぎやかで、人の出入りが多いことがよくあります。
4武曲單居旺地,得祖父大業,陷地退後方成,破軍大耗同破蕩家產,有也不耐久,
書き下し武曲単り旺地に居れば、祖父の大業を得、陥地なれば退きて後に方に成る、破軍大耗同じくすれば家産を破蕩す、有るも耐久せず、
現代語訳武曲星が田宅宮にあると、単独で旺地にいれば、祖父の代の大きな家業を得ます。落陥なら、いったん退いてから、ようやく成ります。破軍星(大耗)と同宮すれば家産を破り使い果たし、持っても長くは続きません。
- 大耗
- ここでは破軍星と並べて書かれていて、破軍星(化気が耗)を指します。
- 破蕩
- 破れて使い果たすこと。
武曲星が田宅宮で単独に旺地にいれば、祖父の代の大きな家業を得ます。武曲星が単独で座るのは辰・戌だけで、星格の輝度ではどちらも廟なので、「單居旺地」は実際には辰・戌のことです。武曲星は金に属し、化気は財で、田宅宮では財の蔵に中身が詰まっている形になるので、大業を得るとされます。後半では、破軍星との同宮(巳・亥だけ)は家産を使い果たし、持っても長続きしないとされます。破軍星は化気が耗で、財の星が耗の星に会うと、田宅宮では不動産や家産がすり減っていくのです。今の暮らしでいえば、武曲星と破軍星が田宅宮にある人は、住み替えや改装、売り買いが多く、住まいにかかる出費が大きくなりがちです。借り入れを重ねるのは慎重にしたいところです。
5天相同先見破後方有,七殺同心不欲,天府同守見成家業,貪狼同晚置,見火鈴星同極美,田產茂盛,同空劫有進有退。
書き下し天相同じくすれば先に破を見て後に方に有り、七殺同じくすれば心欲せず、天府同じくすれば見成の家業を守る、貪狼同じくすれば晩に置く、火鈴星を見て同じくすれば極めて美なり、田産茂盛、空劫と同じくすれば進む有り退く有り。
現代語訳(武曲星が)天相星と同宮すれば、先に破れを見て、のちにようやく持てます。七殺星と同宮すれば、心が(不動産を)欲しません。天府星と同宮すれば、できあがった家業を守ります。貪狼星と同宮すれば晩年に買い入れ、火星・鈴星もいっしょに見れば、きわめてよく、田産は茂り盛んです。地空星・地劫星と同宮すれば、増えることも減ることもあります。
- 心不欲
- 言葉が簡略ですが、心が不動産を欲しがらない、家屋や田地を重んじない、という意味です。
6天同先少後多,自置甚旺,巨門同田少,太陰同入廟大富,天梁同先退後進,加羊陀火鈴空忌全無。
書き下し天同は先に少なく後に多し、自置甚だ旺んなり、巨門同じくすれば田少なし、太陰同じくして入廟すれば大いに富む、天梁同じくすれば先に退き後に進む、羊陀火鈴空忌を加うれば全く無し。
現代語訳天同星が田宅宮にあると、はじめは少なく、のちに多くなり、自分で買い入れてたいへん盛んです。巨門星と同宮すれば田産は少なく、太陰星と同宮して入廟すれば大いに富みます。天梁星と同宮すれば、先に退いて後に進みます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・化忌が加われば、まったくありません。
天同星が田宅宮にあると「先少後多,自置甚旺」です。天同星は福の星で、はじめは苦労してあとから楽になる性質があり、田宅宮では最初は家を持たず、のちに少しずつ増やしていく形になります。同宮では、巨門星(丑・未)なら田産が少なく、太陰星(子・午)で入廟なら大いに富みます。子の宮では太陰星が廟、天同星が旺で、これがいちばんよい形です。天梁星(寅・申)なら先に退いて後に進み、煞星や化忌が加われば何も残りません。同じ篇の太陰星の条は天同星との同宮を「白手自置」としていて、ここの「大富」と合わせて読めます。何もないところから家を買い、ついには大きく富む、ということです。天同星が田宅宮にある人は、家の居心地を大切にし、広い家でなくても気楽に暮らせることを重んじる傾向があります。
7廉貞破祖,貪狼同有祖業,不耐久,七殺同自置,天府同守見成家業,天相同先無後有。
書き下し廉貞は祖を破る、貪狼同じくすれば祖業有れども、耐久せず、七殺同じくすれば自置、天府同じくすれば見成の家業を守る、天相同じくすれば先に無く後に有り。
現代語訳廉貞星が田宅宮にあると、祖業を食いつぶします。貪狼星と同宮すれば祖業はありますが、長くは続きません。七殺星と同宮すれば自分で買い入れ、天府星と同宮すれば、できあがった家業を守ります。天相星と同宮すれば、はじめはなく、のちに持ちます。
- 破祖
- 祖産を食いつぶすこと。
廉貞星が田宅宮にあると「破祖」です。廉貞星は化気が囚で、田宅宮では祖産が縛られて身動きがとれず、守りきれないと読みます。同宮では、貪狼星(巳・亥)は祖業があっても長続きせず、七殺星(丑・未)は自分で買い、天府星(辰・戌)はできあがった家業があり、天相星(子・午)は先になく後にあります。この条は廉貞星と破軍星(卯・酉)の同宮に触れていませんが、その組み合わせは破軍星の条に「先破後有置」とあります。また貪狼星の条は「廉貞同無分」と言っていて、ここの「有祖業」と逆です。廉貞星が田宅宮にある人は家の財産との関係がこみ入りやすく、自分で別に家を構えることになりやすい、と読めます。
8天府田園茂盛,守祖自置旺相,紫微同大富,廉貞武曲同守祖業榮昌,見羊陀火鈴空劫更少,有成敗。
書き下し天府は田園茂盛、祖を守り自置旺相、紫微同じくすれば大いに富む、廉貞武曲同じくすれば祖業を守りて栄昌、羊陀火鈴空劫を見れば更に少なく、成敗有り。
現代語訳天府星が田宅宮にあると、田園は茂り盛んで、祖業を守り、自分でも買い入れ、勢いがあります。紫微星と同宮すれば大いに富み、廉貞星か武曲星と同宮すれば祖業を守って栄えます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星を見れば、田産はさらに少なくなり、成功も失敗もあります。
天府星が田宅宮にあると「田園茂盛,守祖自置旺相」です。天府星は財の蔵で、財帛と田宅を治める星なので、田宅宮ではもっとも持ち場にかなった星の一つで、祖業を守ることも自分で買うこともできます。紫微星との同宮(寅・申)は大いに富み、廉貞星(辰・戌)・武曲星(子・午)との同宮は祖業を守って栄えます。煞星を見れば成功も失敗もあります。〈天府星の主るところは〉は天府星を「職掌財帛、田宅、衣祿之神」と呼んでいて、田宅宮はまさに天府星の本業です。天府星が田宅宮にある人は不動産を大切にし、こつこつ積み上げるのが得意で、家が安心のよりどころになります。
9太陰入廟田多,陷地加忌及羊陀火鈴空劫田全無,天機同自創置,天同同白手自置,同左右權祿及祿存主多田產。
書き下し太陰入廟すれば田多し、陥地にして忌及び羊陀火鈴空劫を加うれば田全く無し、天機同じくすれば自ら創置す、天同同じくすれば白手にて自置、左右権禄及び禄存と同じくすれば多く田産あるを主る。
現代語訳太陰星が田宅宮にあると、入廟なら田産が多くあります。落陥のうえ化忌と擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、田産はまったくありません。天機星と同宮すれば自分で興して買い入れ、天同星と同宮すれば何もないところから自分で買い入れます。左輔星・右弼星・化権・化禄と禄存星が同宮すれば、田産が多いことをつかさどります。
- 白手
- 素手。頼れる祖産がないこと。
太陰星が田宅宮にあると、入廟なら田産が多く、落陥のうえ化忌と煞星が加われば何もありません。太陰星は化気が富で、全書が「田宅主」と呼ぶ星でもあり、天府星と並んで田宅宮にもっともふさわしい星です。星格の輝度では、太陰星は亥・子・丑で廟、卯・辰・巳で落陥と、明るさの差がとても大きく、この条が廟か陥かを最初の句に置いているのはそのためです。同宮では、天機星(寅・申)は自分で興して買い、天同星(子・午)は何もないところから買い、左輔・右弼や化権・化禄、禄存星が加われば田産が多くなります。今の暮らしに置き換えると、太陰星が田宅宮にある人は家の雰囲気を大事にし、飾りつけや集めることが好きで、住まいが大切な資産になると読めます。
10貪狼陷宮退祖一世田少,廟旺有祖業,也去中未自有置,廉貞同無分,紫微同有祖業,武曲同晚置,見火鈴星守祖業,有自創,但恐火焚屋宅。
書き下し貪狼陥宮なれば祖を退き一世田少なし、廟旺なれば祖業有り、また去り中未に自ら置く有り、廉貞同じくすれば分無し、紫微同じくすれば祖業有り、武曲同じくすれば晩に置く、火鈴星を見れば祖業を守る、自ら創る有り、但し恐らくは火屋宅を焚かん。
現代語訳貪狼星が田宅宮にあると、落陥の宮なら祖業から退き、一生田産が少ないです。廟旺なら祖業がありますが、それも失い、中年から晩年に自分で買い入れます。廉貞星と同宮すれば取り分がなく、紫微星と同宮すれば祖業があり、武曲星と同宮すれば晩年に買い入れます。火星・鈴星を見れば祖業を守り、自分で興すこともありますが、火事で家屋が焼けることが心配です。
- 無分
- 取り分がないこと。祖産や田産を受け取れないこと。
校勘 「也去中未自有置」の「未」はおそらく「末」の誤りで、〈也去,中末自有置〉と読むべきです。祖業も失われ、中年・晩年に自分で買い入れる、という意味です。
貪狼星が田宅宮にあると、落陥の宮なら祖業から退いて一生田産が少なく、廟旺なら祖業はあるものの失い、中年から晩年に自分で買い入れます(「未」が「末」であることは校勘のとおりです)。貪狼星の落陥は巳・亥、廟は辰・戌・丑・未です。同宮では、廉貞星(巳・亥)は取り分がなく、紫微星(卯・酉)は祖業があり、武曲星(丑・未)は晩年に買います。いちばん目を引くのは「見火鈴星守祖業」と「但恐火焚屋宅」の組み合わせです。火星・鈴星と貪狼星が田宅宮にあると、守れると言いながら火事を心配してもいるわけで、古人が火星の「火」を字面どおり家に当てはめて読んだものです。今に引き寄せるなら、家の電気まわりや火の始末に気をつけておく、という程度の注意として受け取れます。
11巨門廟旺橫發置買,陷地無分,因田產招非,太陽同先無後有,加羊陀火鈴空劫田宅全無。
書き下し巨門廟旺なれば横発して置買す、陥地なれば分無く、田産に因りて非を招く、太陽同じくすれば先に無く後に有り、羊陀火鈴空劫を加うれば田宅全く無し。
現代語訳巨門星が田宅宮にあると、廟旺なら思いがけず財を得て不動産を買い入れます。落陥なら取り分がなく、田産のことで争いごとを招きます。太陽星と同宮すれば、はじめはなく、のちに持ちます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、田宅はまったくありません。
- 橫發
- 思いがけず、急に財を得ること。
- 招非
- もめごとや訴訟を招くこと。
巨門星が田宅宮にあると、廟旺なら「橫發置買」、落陥なら取り分がなく、田産のことで争いを招きます。巨門星は口舌と是非をつかさどるので、田宅宮でいちばん典型的に表れるのは不動産をめぐるもめごとです。相続の争い、近所とのいざこざ、売買の訴訟などがそれに当たります。星格の輝度では、巨門星は寅・申・卯・酉で廟、辰・戌で落陥です。太陽星との同宮(寅・申)は先になく後にあります。巨門星が田宅宮にある人は、家を買うときも借りるときも契約と権利関係をよく確かめ、家族の間での不動産の分け方は書面に残しておくのがよいでしょう。廟旺なら、思いがけず不動産を手に入れる機会が来ることもよくあります。
12天相廟旺有分,紫微同自置,武曲同無分,廉貞加羊陀火鈴空劫飄零祖業。
書き下し天相廟旺なれば分有り、紫微同じくすれば自置、武曲同じくすれば分無し、廉貞にして羊陀火鈴空劫を加うれば祖業飄零す。
現代語訳天相星が田宅宮にあると、廟旺なら取り分があります。紫微星と同宮すれば自分で買い入れ、武曲星と同宮すれば取り分がありません。廉貞星と同宮し、さらに擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、祖業は散り散りになります。
- 飄零
- 散り散りになって、守りきれないこと。
天相星が田宅宮にあって廟旺なら、取り分があります。天相星は印の星で、田宅宮では家産の取り分を受け取ることをつかさどります。同宮では、紫微星(辰・戌)は自分で買い、武曲星(寅・申)は取り分がなく、廉貞星に煞星が加われば祖業が散り散りになります。この三つの判断は、どれもほかの星の条に対応する記述がありますが、言い方は同じではありません。紫微星の条は天相星との同宮を「有見成家業」とし、ここでは紫微星との同宮を「自置」とします。武曲星の条は天相星との同宮を「先見破後方有」とし、ここでは武曲星との同宮を「無分」とします。天相星はもともと自分から動く星ではなく、よしあしはまわりの星しだいで、田宅宮でもそれは変わりません。
13天梁入廟旺有祖業,天同同先難後易,天機同不見羊陀火鈴空劫,終有田宅。
書き下し天梁入廟旺なれば祖業有り、天同同じくすれば先に難く後に易し、天機同じくして羊陀火鈴空劫を見ざれば、終に田宅有り。
現代語訳天梁星が田宅宮にあると、入廟・旺なら祖業があります。天同星と同宮すれば、はじめは難しく、のちにたやすくなります。天機星と同宮して擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星を見なければ、最後には田宅を持ちます。
天梁星が田宅宮にあって入廟・旺なら祖業があります。天梁星は化気が蔭で、蔭とは上の世代の庇護のことなので、田宅宮では家産を受け継ぐことになります。同宮では、天同星(寅・申)は先に難しく後にたやすく、天機星(辰・戌)は煞星を見なければ最後には田宅を持ちます。この条は天梁星と太陽星(卯・酉)の同宮に触れておらず、太陽星の条にも書かれていないので、この篇の空白になっています。星格の輝度では、天梁星は子・午・寅・卯・辰・戌で廟、巳・申・亥で落陥です。天梁星が田宅宮にある人は、目上の人が残した家や、買うのを手伝ってもらった家に住むことが多く、家族の支えがはっきり表れます。
14破軍在子午宮守祖業榮昌,但見有進退,加羊陀火鈴退祖田少,紫微同有見成家業,廉貞同先破後有置,耗忌全無。
書き下し破軍子午宮に在れば祖業を守りて栄昌、但し進退有るを見る、羊陀火鈴を加うれば祖を退き田少なし、紫微同じくすれば見成の家業有り、廉貞同じくすれば先に破れ後に置く有り、耗忌なれば全く無し。
現代語訳破軍星が田宅宮にあると、子・午の宮なら祖業を守って栄えますが、増えたり減ったりがあります。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば祖業から退き、田産は少なくなります。紫微星と同宮すれば、できあがった家業があり、廉貞星と同宮すれば、先に破れてのちに買い入れます。大耗や化忌に会えば、まったくありません。
破軍星が田宅宮にあると、子・午なら祖業を守って栄えますが、出入りがあります。子・午の破軍星は廟で単独に座り、英星入廟の位置なので、田宅宮でさえ栄えるとされます。煞星が加われば祖業から退いて田産が少なくなります。同宮では、紫微星(丑・未)はできあがった家業があり、廉貞星(卯・酉)は先に破れて後に買い、大耗や化忌に会えば何もありません。〈斗数発微論〉に「田宅遇破軍,先破後成」とあり、これが破軍星の田宅宮についての総論で、この条はそれを宮ごとに細かく分けています。実際の暮らしでは、破軍星が田宅宮にある人はよく家を替え、大がかりな改装をすることも多く、住まいの変化が大きいと読めます。
15文昌會諸吉田園廣置,加羊陀火鈴空劫敗祖。
書き下し文昌諸吉に会えば田園広く置く、羊陀火鈴空劫を加うれば祖を敗る。
現代語訳文昌星が田宅宮にあって吉星たちに会えば、田園は広く、多く買い入れます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、祖業を失います。
文昌星が田宅宮にあると、吉星に会えば田園を広く買い、煞星が加われば祖業を失います。文昌星は文の星で、それ自体に強い財産の性質はなく、よしあしはおもに会う星で決まります。この条は短く、「吉が加わればこう、煞が加わればこう」という、全書が補佐の星によく使う書き方です。文昌星が田宅宮にある人の家は本が多く、学ぶ環境を大切にし、不動産の決め方も理づめで、下調べをよくします。権利書や契約のような書類ごとをうまく扱えることも、この星の吉の表れと言えます。
16文曲旺地有分,守祖業,加吉星自置,同羊陀火鈴空劫湊有進有退。
書き下し文曲旺地なれば分有り、祖業を守る、吉星を加うれば自置、羊陀火鈴空劫と同じく湊まれば進む有り退く有り。
現代語訳文曲星が田宅宮にあると、旺地なら取り分があり、祖業を守ります。吉星が加われば自分で買い入れます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星と寄り集まれば、増えることも減ることもあります。
文曲星が田宅宮にあると、旺地なら取り分があって祖業を守り、吉星が加われば自分で買い、煞星が加われば増えたり減ったりします。星格の輝度では、文曲星は丑・巳・酉で廟、卯・未・亥で旺です。第15段の文昌星とくらべると、文曲星には「旺地」という条件が付いていて、評価が少し高めです。全書は文昌星・文曲星の田宅宮での判断をどちらも重くしていませんが、二つとも財産を治める星ではないからです。文曲星が田宅宮にある人の住まいには芸術的な雰囲気があり、見た目の美しさを大切にします。不動産はたびたび売り買いするより、落ち着いて持ち続けることが多いでしょう。
17左輔有祖業,加羊陀火鈴空劫退祖,田地少,會吉星多。
書き下し左輔は祖業有り、羊陀火鈴空劫を加うれば祖を退き、田地少なし、吉星に会えば多し。
現代語訳左輔星が田宅宮にあると、祖業があります。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば祖業から退き、田地は少なくなります。吉星に会えば多くなります。
左輔星が田宅宮にあると祖業があり、煞星が加われば祖業から退いて田地が少なくなり、吉星に会えば多くなります。左輔星は助けの星で、田宅宮では家族やほかの人からの支えを表すので、祖業があるとされます。この条は右弼星に触れておらず、右弼星の田宅宮での判断はこの篇に欠けています。脱文かもしれませんし、左輔と右弼を一組として扱ったのかもしれません。暮らしに落としてみると、左輔星が田宅宮にある人は家を買うときに家族の手助けを受けることが多く、頭金や保証人がその例です。家族と同居したり、実家の近くに住んだりすることもあります。
18祿存田園多旺自置,會吉星承祖業榮昌,加羊陀火鈴空劫田宅少。
書き下し禄存は田園多く旺じ自置、吉星に会えば祖業を承けて栄昌、羊陀火鈴空劫を加うれば田宅少なし。
現代語訳禄存星が田宅宮にあると、田園が多く盛んで、自分で買い入れます。吉星に会えば祖業を受け継いで栄えます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、田宅は少なくなります。
禄存星が田宅宮にあると、田園が多く盛んで自分で買い、吉星に会えば祖業を受け継いで栄え、煞星が加われば少なくなります。禄存星は財を守る星で、田宅宮はその力がもっとも生きる位置の一つです。〈太微賦〉にも「祿存守於田財,堆金積玉」とあります。気をつけたいのは、禄存星はいつも擎羊星と陀羅星に挟まれていることです。田宅宮に禄存星があれば、両隣の福徳宮と官禄宮には必ず擎羊星・陀羅星があります。条文の「加羊陀」は同宮するか照らしてくることを指していて、この挟みのことではありません。禄存星が田宅宮にある人は貯めて家を買うのが得意で、不動産が財産を積み上げるおもな手段になります。
19擎羊入廟先破後成陷地加空劫退祖業。
書き下し擎羊入廟すれば先に破れ後に成る、陥地にして空劫を加うれば祖業を退く。
現代語訳擎羊星が田宅宮にあると、入廟なら先に破れてのちに成ります。落陥のうえ地空星・地劫星が加われば、祖業から退きます。
擎羊星が田宅宮にあると、入廟なら先に破れて後に成り、落陥で空劫が加われば祖業から退きます。擎羊星の入廟は辰・戌・丑・未、落陥は子・午・卯・酉です。この条は擎羊星の「刑」を「破」として読んでいます。先に破れるとは、若いころ家に変事があったり、不動産が損なわれたりすることで、入廟ならそれを立て直す力があります。擎羊星が田宅宮にある人は、若いうちに引っ越しや家の変化が多く、大人になってから自分の力で住まいを築くことが多いと読めます。家の中の刃物やとがったものに気をつけるのも、今よく添えられる注意です。
20陀羅退祖辛勤度日,加吉星先無後有,加空劫全無。
書き下し陀羅は祖を退き辛勤して日を度る、吉星を加うれば先に無く後に有り、空劫を加うれば全く無し。
現代語訳陀羅星が田宅宮にあると、祖業から退き、苦労して働きながら日を過ごします。吉星が加われば、はじめはなく、のちに持ちます。地空星・地劫星が加われば、まったくありません。
陀羅星が田宅宮にあると、祖業から退いて「辛勤度日」、吉星が加われば先になく後にあり、空劫が加われば何もありません。陀羅星は遅れともつれをつかさどり、田宅宮では不動産のことがずるずる長引き、家業も守りきれない形になります。「辛勤度日」はとても具体的で、体を動かして少しずつ積み上げていくということです。陀羅星の入廟は辰・戌・丑・未で、条文は廟と陥を分けていませんが、盤を読むときは輝度も見たほうがよいでしょう。入廟の陀羅星は遅くても着実で、ただの足かせになるのは落陥のときです。今の言葉で言えば、陀羅星が田宅宮にある人は、ローンや名義変更の手続きが長引くなど、家を買う過程がすんなり進まないことが多いので、時間と気持ちに余裕を見ておくとよいでしょう。
21火星獨守,退祖業,會吉星先無後有,加空劫全無。
書き下し火星独り守れば、祖業を退く、吉星に会えば先に無く後に有り、空劫を加うれば全く無し。
現代語訳火星が単独で田宅宮を守ると、祖業から退きます。吉星に会えば、はじめはなく、のちに持ちます。地空星・地劫星が加われば、まったくありません。
火星が単独で田宅宮にあると祖業から退き、吉星に会えば先になく後にあり、空劫が加われば何もありません。火星は急なこと、突然のことをつかさどるので、田宅宮では家業が急に変わる形になります。「獨守」の二字は、田宅宮に主星がなく火星だけがある場合を指していて、主星があるときは主星を見ます。第10段の、貪狼星が火星に会うと「恐火焚屋宅」とあるのと合わせて読めば、火星が田宅宮にあるときは火の用心という注意がもう一つ加わります。火星が田宅宮にある人は住まいの変化が速く、急に引っ越しや購入を決めることが多いでしょう。家の中の空気もせっかちになりやすいところがあります。
22鈴星退祖,入廟加吉星自有置,見空劫全無。
書き下し鈴星は祖を退く、入廟して吉星を加うれば自ら置く有り、空劫を見れば全く無し。
現代語訳鈴星が田宅宮にあると、祖業から退きます。入廟のうえ吉星が加われば、自分で買い入れます。地空星・地劫星を見れば、まったくありません。
鈴星が田宅宮にあると祖業から退き、入廟で吉星が加われば自分で買い、空劫を見れば何もありません。鈴星は火星と性質が近いのですが、より陰にこもった星で、田宅宮では家業が少しずつ流れ出ていく形になります。この条は鈴星に「入廟」という条件を付けていて、巻三の表では鈴星の廟は寅・午・戌です。〈諸星同垣:火星・鈴星〉は「火鈴旺宮亦為福論」と言っていて、火星・鈴星も廟旺ならまったくの凶ではないことがわかります。鈴星が田宅宮にある人は住まいに自分なりのこだわりがあり、家を持つのはたいてい遅め、自分の力で、ということが多いでしょう。
23斗君過度遇吉星其年田產倍進,逢凶殺忌耗退敗。
書き下し斗君過度して吉星に遇えば其の年田産倍して進む、凶殺忌耗に逢えば退敗す。
現代語訳斗君が田宅宮を通る年に吉星に会えば、その年は田産が倍に増えます。凶星・煞星・化忌・耗星に会えば、退き衰えます。
- 斗君
- 流年で正月がある宮。ここから流月を数えます。
- 過度
- 通ること、巡ってくること。
最後の一条は流年の話です。斗君が田宅宮を通る年に、吉星に会えば田産が倍に増え、凶星・煞星・化忌・耗星に会えば退き衰えます。斗君は流年の正月がある宮で、流月を数える起点になります。この条は斗君を引き金のように扱っていて、生まれつきの田宅宮のよしあしが、斗君の来る年に動き出すという考え方です。全書は十二宮の各篇の最後に、同じ書き方で斗君の一句を置いています。実際に使うなら、ある年のある時期が不動産のことを片づけるのに特に向いている、と理解すればよいでしょう。星格の運勢では流年と流月を見ることができ、流月の課で説明しています。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
紫微斗数の田宅宮では何を見ますか?
田宅宮で見るのは家屋、田地、家産です。受け継ぐ祖業があるか、それを守れるか、自分の力で不動産を手に入れるかを見ます。『紫微斗数全書』巻二は星ごとに田宅宮での様子を書いていて、たとえば天府星は「田園茂盛,守祖自置旺相」、天機星は「退祖新創置」、破軍星は子・午の宮で「守祖業榮昌」ですが、出入りがあるとしています。
田宅宮に煞星があるとどうなりますか?
全書の書き方では、主星が田宅宮にあって、さらに擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加わると、たいてい「有置有去」「有進有退」「退祖」とされ、落陥のうえ煞星が加われば「全無」です。例外として、火星・鈴星が武曲星や貪狼星に会うときは、かえって「極美,田產茂盛」とされます。ただし貪狼星の条は、火鈴を見ると「恐火焚屋宅」とも言っています。
田宅宮に天府星があるのはよいことですか?
全書は、天府星が田宅宮にあると「田園茂盛,守祖自置旺相」としています。紫微星と同宮なら大いに富み、廉貞星か武曲星と同宮なら祖業を守って栄えます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星を見ると田産は減り、成功も失敗もあるとされます。
斗君が田宅宮に来るとはどういうことですか?
斗君は流年の正月がある宮です。全書は、斗君が田宅宮を通る年に吉星に会えば、その一年は田産が倍に増え、凶星・煞星・化忌・耗星に会えば退き衰えるとしています。
この篇に出てくる主星