疾厄宮
『紫微斗数全書』巻二・安星起例と十二宮・原文と現代語訳
はじめに
この篇は『紫微斗数全書』巻二の、十二宮ごとに諸星の判断を並べた部分から取ったもので、疾厄宮を扱います。その人の体、病気、災厄を見る宮です。
- 総論(第1段):まず命宮の星が落陥していないか、羊陀火鈴空劫・化忌が守ったり照らしたりしていないかを見て、次に疾厄宮の星の善し悪しと廟旺・落陥を見て、両方を合わせて判断します。
- 星ごとの判断(第2〜22段):各星が疾厄宮にあるとき「災少」か「災多」か、どんな種類の病をつかさどるかを述べます。頭風、目の病、血気の病、心気の病、下部の病、痔、瘡、瘋疾、そして煞星が加わったときの「傷殘」「破相」です。
- 斗君(第23段)。
これらの病名は昔の言い方で、訳文は原文どおりに訳し、注でおおよその意味を説明しています。「頭風」は頭痛のたぐいの病、「血氣之疾」は血と気の巡りの乱れ、「心氣疾」は胸や心臓、息に関わる病、「下部疾」は下半身、腰から下の病です。「瘋疾」は古書ではたいてい風の病、たとえば中風や癩病のたぐいを指しますが、原文は詳しく書いていません。これは古い書物の分類で、医学上の判断の代わりにはなりません。
底本の誤字:「瘡癩濃血」の「濃」は「膿」、「玫暗疾」の「玫」は「致」、「酒免之疾」はおそらく〈酒色之疾〉です。また第22段の「羊鈴」は、置かれている位置から見て鈴星の条のはずです。それぞれの段の校勘に書いてあります。
1先看命宮星曜落陷加羊陀火鈴空劫化忌守照如何,又看疾厄宮星曜善惡廟旺落陷如何斷之。
書き下し先ず命宮の星曜落陥し羊陀火鈴空劫化忌を加えて守照すること如何を看、又疾厄宮の星曜の善悪廟旺落陥如何を看てこれを断ず。
現代語訳まず命宮の星が落陥しているか、擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・化忌が加わって守ったり照らしたりしているか、その様子を見ます。さらに疾厄宮の星の善し悪し、廟旺か落陥かを見て、判断します。
疾厄宮の篇は冒頭で、まず命宮を見て、それから疾厄宮を見る、と言います。命宮の星が落陥して煞星や化忌を見るなら、それが体質の土台で、疾厄宮の星は病の種類を決めます。これが全書の疾厄の読み方の順序で、疾厄宮だけを見て判断しないように、という注意でもあります。疾厄宮の対宮はいつも父母宮で、昔の人は生まれつきの体質を父母とも結びつけて考えました。全書の病名の多くは昔の医学の言葉なので、今は「問題が出やすい体の部分や傾向」として読む程度にとどめ、医療上の診断の代わりにはしません。
2紫微災少,天府同亦少,天相同皮胎勞,如加破軍血氣不和,同羊鈴主有暗疾,加空劫主疢疾心氣疾。
書き下し紫微は災少なし、天府同じくすればまた少なし、天相同じくすれば皮胎労あり、もし破軍を加うれば血気和せず、羊鈴と同じくすれば暗疾有るを主る、空劫を加うれば疢疾心気疾を主る。
現代語訳紫微星が疾厄宮にあると、災いは少ないです。天府星と同宮しても、やはり少ないです。天相星と同宮なら皮胎の労損があります。破軍星が加われば血と気が調和しません。擎羊星・鈴星と同宮すれば、人目につかない病があることをつかさどります。地空星・地劫星が加われば、熱病と心気の病をつかさどります。
- 皮胎勞
- 意味がはっきりしません。〈脾胃労〉(胃腸の衰え)の誤りとする説もありますが、ここでは字面どおりに訳しています。
- 暗疾
- 表に出ない、隠れた病。
- 疢疾
- 疢は熱の病。広く病気のこと。
紫微星は疾厄宮で「災少」で、帝王の星が座っているので体の土台はしっかりしています。天府星と同宮(寅申)でも少なく、天相星と同宮(辰戌)なら「皮胎勞」、皮膚と生まれつきの体質が損なわれることです。破軍星が加わる(丑未の紫微星と破軍星)と血気が調和せず、擎羊星・鈴星と同宮なら隠れた病、空劫が加われば「疢疾心氣疾」、熱病と心気の病です。紫微星が同宮できる主星は天府星・天相星・破軍星・貪狼星・七殺星の五つで、この段が挙げているのはそのうち三つです。その三つの中では、紫微星と天府星がいちばん安定し、紫微星と破軍星がいちばん弱いとされます。全体として体は丈夫なほうですが、ストレスが大きいときは心臓や血の巡り、睡眠に気をつけたいところです。紫微星が疾厄宮にあるときも参照してください。
3天機襁褓多災,陷地頭面破相,巨門同血氣疾,天梁同下部疾,太陰同瘡災,加羊火陷宮有目疾,四肢無力。
書き下し天機は襁褓に災多し、陥地なれば頭面破相す、巨門同じくすれば血気の疾、天梁同じくすれば下部の疾、太陰同じくすれば瘡災、羊火を加えて陥宮なれば目疾有り、四肢力無し。
現代語訳天機星が疾厄宮にあると、乳飲み子のころに災いが多いです。落陥なら頭や顔に傷を負います。巨門星と同宮なら血気の病、天梁星と同宮なら下部の病、太陰星と同宮なら瘡の災いがあります。擎羊星・火星が加わって落陥の宮にあれば、目の病があり、手足に力が入りません。
- 襁褓
- 赤ん坊をくるむ布。乳飲み子のころのこと。
- 下部疾
- 下半身、腰から下の病。
天機星は疾厄宮で「襁褓多災」、幼いころ体が弱いとされます。落陥の地なら頭や顔に傷を負います。巨門星と同宮(卯酉)なら血気の病、天梁星と同宮(辰戌)なら「下部疾」、腰から下の病、太陰星と同宮(寅申)なら瘡の災いです。羊火が加わって落陥の宮にあれば目の病と手足の力のなさです。天機星は木に属し、中国医学で木は肝と筋に対応するので、後世は天機星を神経や手足と結びつけることがよくあります。天機星が疾厄宮にあるときも参照してください。
4太陽頭風,太陰同加化忌,羊陀主眼目有傷,陷宮亦主目疾欠光明。
書き下し太陽は頭風、太陰同じくして化忌、羊陀を加うれば眼目に傷有るを主る、陥宮もまた目疾を主り光明を欠く。
現代語訳太陽星が疾厄宮にあると、頭風があります。太陰星と同宮して化忌・擎羊星・陀羅星が加われば、目に傷があることをつかさどります。落陥の宮でも目の病をつかさどり、目がよく見えません。
- 頭風
- 頭痛のたぐいの病。
太陽星は疾厄宮で「頭風」をつかさどり、頭痛や頭の病とされます。昔の考えでは太陽星は目と頭に対応するので、太陰星と同宮(丑未)して化忌や羊陀が加われば目に傷があり、落陥の宮(亥子)でも目の病とされます。太陽星と太陰星がそろって疾厄宮にあり、甲年で太陽星が化忌、乙年で太陰星が化忌になる場合が、全書の言う「忌同日月則傷親損目」(擎羊星・陀羅星の総論)、つまり化忌が日月と重なれば親を傷め目を損なう形です。日月の化忌が輝度によって吉にも凶にもなることは、四化の性情で別に論じられています。今の暮らしでは、目と頭を休ませることが大事な配置です。太陽星が疾厄宮にあるときも参照してください。
5武曲襁褓災迍手足頭面有傷,羊陀同一生常有災,天相同招暗疾,七殺同血疾,貪狼同廟旺無疾,陷地加四殺,眼手足疾痔疾瘋瘡。
書き下し武曲は襁褓に災迍あり手足頭面に傷有り、羊陀同じくすれば一生常に災有り、天相同じくすれば暗疾を招く、七殺同じくすれば血疾、貪狼同じくして廟旺なれば疾無し、陥地にして四殺を加うれば、眼手足の疾、痔疾、瘋瘡あり。
現代語訳武曲星が疾厄宮にあると、乳飲み子のころに災難があり、手足や頭、顔に傷があります。擎羊星・陀羅星と同宮すれば、一生いつも災いがあります。天相星と同宮なら隠れた病を招きます。七殺星と同宮なら血の病があります。貪狼星と同宮して廟旺なら病はありません。落陥の地で四煞が加われば、目や手足の病、痔、瘋瘡があります。
- 災迍
- 災難と行き詰まり。
- 瘋瘡
- 意味がはっきりしません。おおよそ風の病と腫れものの類です。
武曲星は疾厄宮で、乳飲み子のころに災いがあり、手足や頭、顔に傷を負うとされます。武曲星は金に属し、金は刃物の傷と骨をつかさどるので、外傷のことが多く書かれています。羊陀と同宮すれば一生いつも災いがあり、天相星と同宮(寅申)なら隠れた病、七殺星と同宮(卯酉)なら血の病、貪狼星と同宮(丑未)なら廟旺で病がなく、落陥の地で煞星が加われば目・手足・痔・瘋瘡とされます。ただし盤の上で武曲星と貪狼星が同宮するのは丑と未だけで、そこでは二つともいつも廟なので、この組み合わせで落陥の場合は実際には起こりません。武曲星と七殺星が疾厄宮にあると、金の星に将の星が重なり、血を見る傾向がいちばんはっきり出ます。武曲星が疾厄宮にあるときも参照してください。
6天同入廟災少,巨門同心氣疾,太陰同加羊火血氣疾,天梁同加四殺心氣疾。
書き下し天同入廟すれば災少なし、巨門同じくすれば心気の疾、太陰同じくして羊火を加うれば血気の疾、天梁同じくして四殺を加うれば心気の疾。
現代語訳天同星が疾厄宮にあると、入廟なら災いは少ないです。巨門星と同宮なら心気の病があります。太陰星と同宮して擎羊星・火星が加われば血気の病、天梁星と同宮して四煞が加われば心気の病があります。
- 心氣疾
- 胸、心臓、息に関わる病。
天同星は入廟なら災いが少なく、福の星なので、疾厄宮では体にたいてい大きな障りがありません。巨門星と同宮(丑未)なら心気の病、太陰星と同宮(子午)して羊火が加われば血気の病、天梁星と同宮(寅申)して四煞が加われば心気の病です。「心氣」は昔の医学で心臓の働きと気の巡りのことで、今なら気持ちの張りつめやストレスと関わる不調として読めます。天同星が化忌になるのは庚年なので、疾厄宮の天同星は庚年に少し気をつけて過ごすとよいでしょう。天同星が疾厄宮にあるときも参照してください。
7廉貞襁褓災瘡腰足之疾,入廟加吉和平,遇貪狼同,陷地眼疾災多,七殺破軍天府同災少。
書き下し廉貞は襁褓に災あり、瘡、腰足の疾あり、入廟して吉を加うれば和平、貪狼に遇いて同じくし、陥地なれば眼疾ありて災多し、七殺破軍天府同じくすれば災少なし。
現代語訳廉貞星が疾厄宮にあると、乳飲み子のころに災いがあり、瘡ができ、腰や足の病があります。入廟して吉星が加われば穏やかです。貪狼星と同宮して落陥の地にあれば、目の病があり、災いが多いです。七殺星・破軍星・天府星と同宮すれば、災いは少ないです。
廉貞星は疾厄宮で、乳飲み子のころの災い、瘡、腰と足の病とされます。入廟(寅申)して吉星が加われば穏やかです。貪狼星と同宮して落陥の地(巳亥)なら目の病で災いが多く、これは廉貞星も貪狼星も落陥で、しかも二つとも桃花の星なので、後世は暮らしの習慣と関わる不調として読むことがよくあります。七殺星・破軍星・天府星と同宮なら災いが少なく、天府星は廉貞星を落ち着かせ、七殺星・破軍星は廉貞星の火を発散させると読みます。廉貞星が疾厄宮にあるときも参照してください。
8天府災少臨災有救,紫微同災少,加羊陀火鈴空劫有瘋疾,廉貞同加劫殺空亡,半途傷殘。
書き下し天府は災少なく、災に臨むも救い有り、紫微同じくすれば災少なし、羊陀火鈴空劫を加うれば瘋疾有り、廉貞同じくして劫殺空亡を加うれば、半途にして傷残す。
現代語訳天府星が疾厄宮にあると、災いは少なく、災いに臨んでも救いがあります。紫微星と同宮なら災いは少ないです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば瘋疾があります。廉貞星と同宮して地劫星などの煞星と空亡が加われば、人生の途中で傷を負い、体が不自由になります。
- 瘋疾
- 古書ではたいてい風の病を指し、中風や癩病のたぐいです。原文は詳しく書いていません。
天府星は疾厄宮で「災少臨災有救」です。天府星は、天府星を問う篇が「延壽解厄之星」(天府星の主るところは)と呼ぶ星で、疾厄宮ではその力がいちばんよく出ます。紫微星と同宮なら災いが少なく、煞星が加われば瘋疾、廉貞星と同宮(辰戌)して劫殺・空亡が加われば「半途傷殘」です。天府星が疾厄宮にあるとき、対宮の父母宮には必ず七殺星が入るので、生まれつきの体質は強い一方、父母との縁はやや硬くなりがちです。天府星が疾厄宮にあるときも参照してください。
9太陰廟旺無災,陷地災多主勞傷之症,女人主大傷殘,
書き下し太陰廟旺なれば災無し、陥地なれば災多く労傷の症を主る、女人は大いに傷残するを主る、
現代語訳太陰星が疾厄宮にあると、廟旺なら災いはありません。落陥なら災いが多く、疲れの積み重ねによる病をつかさどり、女性なら大きな傷を負い体が不自由になることをつかさどります。
- 勞傷
- 働きすぎによって体が損なわれること。古書では虚労とも言います。
太陰星は廟旺なら災いがなく、落陥なら災いが多く労傷の病をつかさどり、「女人主大傷殘」とされます。太陰星は水に属し、陰・血・女性を表すので、女性の命について特に書いているのです。太陰星の落陥は卯・辰・巳で、星格の盤に出ます。労傷は働きすぎによる消耗のことです。太陰星が落陥で疾厄宮にある人は、暮らしのリズムを整え、休む時間をきちんと取ることがいっそう大切になります。太陰星が疾厄宮にあるときも参照してください。
10若太陽同加吉美一生災少,羊陀火鈴眼目疾,加空劫有瘋疾,天同同加羊陀,陷宮主加症同火鈴多災。
書き下しもし太陽同じくして吉を加うれば美しく一生災少なし、羊陀火鈴あれば眼目の疾、空劫を加うれば瘋疾有り、天同同じくして羊陀を加え、陥宮なれば加症を主る、火鈴と同じくすれば災多し。
現代語訳(太陰星が)太陽星と同宮して吉星が加われば、よく、一生災いが少ないです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば目の病、地空星・地劫星が加われば瘋疾があります。天同星と同宮して擎羊星・陀羅星が加わり、落陥の宮にあれば「加症」をつかさどります。火星・鈴星と同宮すれば災いが多いです。
校勘 「陷宮主加症」は意味が通らず、誤字があると思われます。訳文では原文のまま残しています。
この段は太陰星の続きです。太陽星と同宮(丑未)して吉星が加われば一生災いが少なく、煞星が加われば目の病、空劫が加われば瘋疾です。太陽星と太陰星がそろって疾厄宮にあると、目が共通の弱点になります。天同星と同宮(子午)して羊陀が加わり落陥の宮なら「加症」とされますが、意味が通らないことは校勘のとおりです。子午の太陰星と天同星では、午の宮で二つとも弱い(太陰星が不得地、天同星が落陥)ので、凶になるのは午の宮のはずです。
11巨門少年膿血之厄,太陽同有頭瘋疽,天同同下部主有瘋症,加羊火酒免之疾,加忌有耳目之憂。
書き下し巨門は少年に膿血の厄あり、太陽同じくすれば頭瘋疽有り、天同同じくすれば下部に瘋症有るを主る、羊火を加うれば酒免の疾、忌を加うれば耳目の憂い有り。
現代語訳巨門星が疾厄宮にあると、若いころに膿や血の災厄があります。太陽星と同宮なら頭風や悪性の腫れものがあります。天同星と同宮なら、下部に瘋症があることをつかさどります。擎羊星・火星が加われば酒色による病、化忌が加われば耳や目の憂いがあります。
- 疽
- 悪性の腫れもの。
校勘 「酒免之疾」の「免」はおそらく「色」の誤りで、訳文は「酒色」として訳しています。
巨門星は疾厄宮で、若いころに膿や血の災厄があるとされます。太陽星と同宮(寅申)なら頭風と腫れもの、天同星と同宮(丑未)なら下部の瘋症、羊火が加われば(校勘によれば)酒色の病、化忌が加われば耳と目の憂いです。巨門星の化気は「暗」で、表に出ない病、隠れた病が疾厄宮の巨門星の特徴です。巨門星が化忌になるのは丁年なので、疾厄宮の巨門星は丁年に耳・目・口のまわりを少しいたわるとよいでしょう。巨門星が疾厄宮にあるときも参照してください。
12天相災少面皮黃腫血氣之疾,紫微同災少,武曲同加四殺破相,廉貞同加空劫手足傷。
書き下し天相は災少なし、面皮黄腫、血気の疾あり、紫微同じくすれば災少なし、武曲同じくして四殺を加うれば破相す、廉貞同じくして空劫を加うれば手足傷つく。
現代語訳天相星が疾厄宮にあると、災いは少ないですが、顔の皮膚が黄色くむくみ、血気の病があります。紫微星と同宮なら災いは少ないです。武曲星と同宮して四煞が加われば、顔に傷を負います。廉貞星と同宮して地空星・地劫星が加われば、手足を傷めます。
天相星は疾厄宮で災いが少ないものの、「面皮黃腫血氣之疾」とされます。天相星は水に属し、皮膚やむくみ、体の巡りと関係づけられます。紫微星と同宮(辰戌)なら災いが少なく、武曲星と同宮(寅申)して四煞が加われば顔に傷、廉貞星と同宮(子午)して空劫が加われば手足の傷です。天相星の両隣はいつも巨門星と天梁星なので、疾厄宮に天相星があれば、隣の財帛宮と遷移宮の一方に巨門星、もう一方に天梁星が入ります。天相星が疾厄宮にあるときも参照してください。
13七殺幼年多災,長主痔疾,武曲同加四殺手足傷殘,廉貞同主目疾,加擎羊四肢有傷殘。
書き下し七殺は幼年に災多く、長じて痔疾を主る、武曲同じくして四殺を加うれば手足傷残す、廉貞同じくすれば目疾を主る、擎羊を加うれば四肢に傷残有り。
現代語訳七殺星が疾厄宮にあると、幼いころに災いが多く、成長すると痔をつかさどります。武曲星と同宮して四煞が加われば、手足を傷め、不自由になります。廉貞星と同宮なら目の病をつかさどります。擎羊星が加われば、手足に傷を負い、不自由になります。
七殺星は幼いころに災いが多く、成長すると痔をつかさどるとされます。七殺星は将の星なので、疾厄宮では外から傷を受けやすく、腸や下部の病とも関係づけられます。武曲星と同宮(卯酉)して煞星が加われば手足の傷残、廉貞星と同宮(丑未)なら目の病、擎羊星が加われば手足の傷残です。七殺星を問う篇の「逢刑忌殺於遷移、疾厄,終身殘疾」(七殺星の主るところは)と、言っていることは一致しています。七殺星が疾厄宮にあるときも参照してください。
14破軍幼年瘡癩濃血羸黃,武曲同目視疾,紫微同災少,廉貞同加羊火四肢有傷殘。
書き下し破軍は幼年に瘡癩濃血羸黄あり、武曲同じくすれば目視の疾、紫微同じくすれば災少なし、廉貞同じくして羊火を加うれば四肢に傷残有り。
現代語訳破軍星が疾厄宮にあると、幼いころに瘡や癩、膿や血の病があり、やせて顔色が黄色くなります。武曲星と同宮なら目の見え方の病があります。紫微星と同宮なら災いは少ないです。廉貞星と同宮して擎羊星・火星が加われば、手足に傷を負い、不自由になります。
- 癩
- 疥癬などの皮膚病。癩病を指すこともあります。
- 羸黃
- やせ衰え、顔色が黄色いこと。
校勘 「濃血」の「濃」は「膿」とすべきところです。
破軍星は幼いころに瘡・癩・膿血・羸黄、つまりやせて顔色が黄色いとされます。破軍星の化気は「耗」なので、疾厄宮では体をすり減らすタイプの不調になります。武曲星と同宮(巳亥)なら視力の病、紫微星と同宮(丑未)なら災いが少なく、廉貞星と同宮(卯酉)して羊火が加われば手足の傷残です。破軍星を問う篇は破軍星が「在疾厄致尪羸之疾」(破軍星の主るところは)としていて、尪羸はやせて弱いことです。今の暮らしに置き換えると、体力の消耗が大きいので、食事と休息をおろそかにしないことが大切な配置です。
15文昌獨守災少,加羊陀火鈴空劫災多,同諸吉星一生無災。
書き下し文昌独守すれば災少なし、羊陀火鈴空劫を加うれば災多し、諸吉星と同じくすれば一生災無し。
現代語訳文昌星が一つだけで疾厄宮を守れば、災いは少ないです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば災いが多いです。多くの吉星と同宮すれば、一生災いはありません。
文昌星が一つだけで疾厄宮を守れば災いが少なく、煞星が加われば多く、吉星と同宮すれば一生災いがないとされます。ここの「獨守」は、文昌星が主星のない疾厄宮に一つだけでいることです。全書の疾厄宮での文昌星の条はとても簡単で、吉か凶かの二つに分けるだけで病の種類を挙げていません。昔の人は文昌星を病をつかさどる星とは見ていなかったことがわかります。
16文曲災少加吉星一世無災,加羊陀火鈴空劫,坐陷宮災有。
書き下し文曲は災少なし、吉星を加うれば一世災無し、羊陀火鈴空劫を加え、陥宮に坐すれば災有り。
現代語訳文曲星が疾厄宮にあると、災いは少ないです。吉星が加われば一生災いはありません。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加わり、しかも落陥の宮に坐れば、災いがあります。
文曲星は災いが少なく、吉星が加われば一生災いなく、煞星が加わって落陥の宮にあれば災いがあるとされます。巻三の表は文曲星の落陥を寅・午・戌とし、星格は巻二の廟旺の表に従って午と戌だけを落陥とし、寅は平和としています。文昌星の条と同じ組み立てで、「陷宮」という条件が一つ増えています。文曲星は水に属し、後世には泌尿器や腎と結びつける人もいますが、全書はそうは書いておらず、ここでは災いの有無を言うだけです。
17左輔獨守平和,加吉星災少,見羊陀火鈴空劫常有災。
書き下し左輔独守すれば平和、吉星を加うれば災少なし、羊陀火鈴空劫を見れば常に災有り。
現代語訳左輔星が一つだけで疾厄宮を守れば、穏やかです。吉星が加われば災いは少ないです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星を見れば、いつも災いがあります。
左輔星が一つだけで守れば穏やかで、吉星が加われば災いが少なく、煞星を見ればいつも災いがあるとされます。補佐の星が疾厄宮で果たす役割は「面倒を見てくれる人がいる」ことで、具合が悪いときに手を貸してくれる人がいる、ということです。頼れる人がそばにいるので、体調を崩したときにも早めに手を打てる配置です。
18右弼獨守逢災有救,見羊陀火鈴空劫災多。
書き下し右弼独守すれば災に逢うも救い有り、羊陀火鈴空劫を見れば災多し。
現代語訳右弼星が一つだけで疾厄宮を守れば、災いに逢っても救いがあります。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星を見れば、災いが多いです。
右弼星が一つだけで守れば「逢災有救」です。右弼星は全書を通して煞星に持ちこたえる星として書かれていて、疾厄宮では、病んでも救いがあり、災いに遭っても助けてくれる人がいることを表します。煞星を見れば災いが多くなります。左輔星の条と並べて読むと、右弼星の「有救」は左輔星の「平和」より一歩積極的な言い方です。
19祿存少年多災,加吉星災少,見羊陀火鈴四肢必傷殘,加空劫玫暗疾延生。
書き下し禄存は少年に災多し、吉星を加うれば災少なし、羊陀火鈴を見れば四肢必ず傷残す、空劫を加うれば暗疾を玫(いた)して生を延ぶ。
現代語訳禄存星が疾厄宮にあると、若いころに災いが多いです。吉星が加われば災いは少ないです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星を見れば、手足が必ず傷つき不自由になります。地空星・地劫星が加われば、隠れた病を得て、それによって命を延ばします。
- 延生
- 命を延ばすこと。古書では、傷や病があることでかえって長生きするとよく言います。
校勘 「玫暗疾」の「玫」は「致」とすべきところです。
禄存星は疾厄宮で、若いころに災いが多く、吉星が加われば少なく、羊陀火鈴を見れば手足の傷残、空劫が加われば隠れた病を得てかえって命を延ばす、とされます。これも全書の「病で災いを防ぐ」という考え方です。禄存星が疾厄宮にあるとき、擎羊星と陀羅星は必ず財帛宮と遷移宮にあって疾厄宮を挟むので、「見羊陀」はほとんど決まっていることになり、本当の条件は火星・鈴星と空劫です。
20陀羅幼年災,磨唇齒頭面,有傷破方可延壽。
書き下し陀羅は幼年に災あり、唇歯頭面を磨す、傷破有りて方に寿を延ぶべし。
現代語訳陀羅星が疾厄宮にあると、幼いころに災いがあり、唇や歯、頭や顔がすり減ります。傷を負ってはじめて命を延ばせます。
陀羅星は疾厄宮で、幼いころに災いがあり、唇・歯・頭・顔がすり減り、「有傷破方可延壽」とされます。陀羅星は遅れとすり減りをつかさどるので、疾厄宮では、長引いて繰り返す小さな傷を表します。これも「破相して寿を延ばす」という考え方で、小さな傷が大きな災いを防ぐ、という意味です。日々の暮らしに引き寄せると、歯や口の手入れを小さいうちから続けておきたい配置です。
21擎羊有頭瘋之症,或四肢欠力,頭面破相延壽,加吉星災少。
書き下し擎羊は頭瘋の症有り、或いは四肢力を欠く、頭面破相すれば寿を延ぶ、吉星を加うれば災少なし。
現代語訳擎羊星が疾厄宮にあると、頭風の病があるか、手足に力が入りません。頭や顔に傷を負えば命を延ばします。吉星が加われば災いは少ないです。
擎羊星は疾厄宮で、頭風か手足の力のなさがあり、頭や顔に傷を負えば命を延ばし、吉星が加われば災いが少ないとされます。擎羊星は刑の星、刃の星で、疾厄宮では外傷や刃物による処置を表します。擎羊星が疾厄宮にある人は、一生のうちにけがをする機会が多めとされるので、身の安全に気を配り、体の様子をこまめに確かめておくのがいちばん現実的な向き合い方です。
22羊鈴主一生災少,身體健旺伶俐。
書き下し羊鈴は一生災少なきを主る、身体健旺にして伶俐なり。
現代語訳鈴星が疾厄宮にあると、一生災いが少ないことをつかさどります。体は丈夫で、利発です。
校勘 底本は「羊鈴主一生災少」です。擎羊星はすでに前の段にあり、この段は火星・鈴星の位置に置かれているので鈴星の条のはずで、おそらく「鈴星」とすべきところです。この篇には火星の条もないので、「火鈴」の誤りという可能性もあります。訳文は「鈴星」として訳しています。
校勘に従って、この条は鈴星として読みます。一生災いが少なく、体が丈夫で利発、という意味です。煞星が疾厄宮にあるときの評価としては、全書では珍しく前向きです。鈴星は火に属し、火は活力をつかさどるので、疾厄宮ではかえって元気があふれていることを表します。校勘が言うとおり、原文はもとは「火鈴」だったかもしれず、この篇には実際に火星の条が欠けています。今の言葉で言えば、元気いっぱいな反面、働きすぎには気をつけたい配置です。
23斗君遇吉身心安寧其年無災。遇凶殺本生人有畏忌其年多災。
書き下し斗君吉に遇えば身心安寧にしてその年災無し。凶殺に遇えば本生の人畏忌有りてその年災多し。
現代語訳斗君が疾厄宮に来て吉星に遇えば、身も心も安らかで、その年は災いがありません。凶星や煞星に遇えば、生まれつき恐れ忌むものを持つ人は、その年に災いが多いです。
- 斗君
- 流年で正月にあたる宮。ここから流月を数えはじめます。
斗君が疾厄宮に来る年は、吉なら身も心も安らかで、凶なら「本生人有畏忌」、生まれつきの命盤にもともとある病の傾向が、その年に引き出されるとされます。夫妻宮の篇の斗君の条と同じく、生まれつきの土台が流年の出来事の重さを決めることを強調しています。流年が疾厄宮に来て、しかも煞星や化忌を見る年は、予定を詰めすぎず、体を休める時間を先に確保しておくとよい年です。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
紫微斗数の疾厄宮はどう見ますか?
『紫微斗数全書』は、まず命宮の星が落陥していないか、擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・化忌が守ったり照らしたりしていないかを見て、次に疾厄宮の星の善し悪しと廟旺・落陥を見て、両方を合わせて判断するとしています。疾厄宮で見るのは、体、病気、災厄です。
疾厄宮で全書が「災少」とする星はどれですか?
全書は、紫微星、天府星、入廟の天同星、天相星、一つだけで守る文昌星、文曲星が疾厄宮にあると「災少」としています。太陰星は廟旺なら「無災」、天府星は「臨災有救」、一つだけで守る右弼星は「逢災有救」です。羊陀火鈴空劫が加わると、たいてい災いが多くなるか、傷残になります。
疾厄宮で目の病と結びつけられている星はどれですか?
全書では、天機星に擎羊星・火星が加わって落陥の宮にあると目の病、太陽星と太陰星が同宮して化忌・羊陀が加わると目に傷があり、落陥の宮でも目の病とされます。廉貞星と貪狼星が落陥の地にあれば目の病で災いが多く、七殺星と廉貞星が同宮すれば目の病、破軍星と武曲星が同宮すれば視力の病、巨門星に化忌が加われば耳と目の憂いがあるとされています。古書の分類としての話で、診断ではありません。
この篇に出てくる主星