遷移宮
『紫微斗数全書』巻二・安星起例と十二宮・原文と現代語訳
はじめに
この篇は『紫微斗数全書』巻二の、十二宮ごとに諸星の判断を並べた部分から取ったもので、遷移宮を扱います。外に出ること、遠くへ行くこと、よその土地での巡り合わせを見る宮です。遷移宮は命宮の対宮なので、「人から見た自分」「外の舞台」として読まれることもよくあります。
書き方は一つの星に一条ずつです。まず、その星が遷移宮にあるとき外に出てうまくいくかを言います。よく出る判断は「出外遇貴」(外で貴人に会う)、「動中則吉」(動いてこそ吉)、「不耐靜守」(じっとしていられない)、「在外發財」(外で財を得る)などです。次に、どの主星と同宮するとどうなるかを言い、最後に擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加わったときのことを言います。たいていは「在外多是非」「身不安靜」「少遂志」です。
よく出る言葉:「小人不足」「下人不足」は、つまらない人や目下の者が不満を持ち、足を引っぱること、「鬧中」はにぎやかで競争の激しい場、「巨商」は大商人、「優伶」は昔の役者や芸人、「提撕」は引き立てることです。この篇でいちばん重い句は廉貞星の条にあり、羊陀が加わって三方にも凶の煞星があれば「死於外道」、旅先の路上で死ぬ、とされます。訳文は原文の意味のまま訳しています。
底本では、第8段の太陰星の条の中に「太陰同欠寧靜」と同じ星がもう一度出てきて、誤りと思われます。第7段の「貴人扶,持同紫微」は読点の位置がずれています。どちらも校勘に書いてあります。
1紫微同左右出外貴人扶持發福,天府同出入通達,天相同在外發財,破軍同貴人見愛,小人不足,加羊陀火鈴空劫在外不安靜。
書き下し紫微左右と同じくすれば出外に貴人扶持して発福す、天府同じくすれば出入通達す、天相同じくすれば外に在りて発財す、破軍同じくすれば貴人に愛され、小人足らず、羊陀火鈴空劫を加うれば外に在りて安静ならず。
現代語訳紫微星が遷移宮にあって左輔星・右弼星と一緒なら、外に出ると貴人の引き立てがあり、福を得ます。天府星と同宮なら、出入りがすべて順調です。天相星と同宮なら、外で財を得ます。破軍星と同宮なら、貴人には気に入られますが、つまらない人には不満を持たれます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、外で落ち着きません。
- 小人不足
- つまらない人が不満を持ち、足を引っぱること。
遷移宮は命宮の対宮で、二つの宮の星は向かい合って照らし合います。ですから遷移宮を読むことは「命宮の向かいの宮」を読むこと、つまりその人の外での姿を読むことです。紫微星が遷移宮にあると、命宮の向かいに帝王の星がいるので、外では顔が立ち、貴人にも恵まれます。左輔星・右弼星と一緒なら外で貴人の引き立てがあり、天府星と同宮なら出入りが順調、天相星と同宮なら外で財を得ます。破軍星と同宮なら「貴人見愛,小人不足」、上からは認められ、下からはねたまれる形です。紫微星が遷移宮にあるときも参照してください。
2天機出外遇貴居家有是非,巨門同動中則吉,天梁同出外稱意,太陰同忙中吉,加羊陀火鈴在外多是非身不安靜。
書き下し天機は出外に貴に遇い、家に居れば是非有り、巨門同じくすれば動中は則ち吉、天梁同じくすれば出外に意に称う、太陰同じくすれば忙中に吉、羊陀火鈴を加うれば外に在りて是非多く身安静ならず。
現代語訳天機星が遷移宮にあると、外に出れば貴人に会い、家にいると面倒ごとがあります。巨門星と同宮なら、動いているときは吉です。天梁星と同宮なら、外に出れば思いどおりになります。太陰星と同宮なら、忙しい中で吉です。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば、外で面倒ごとが多く、身が落ち着きません。
天機星は遷移宮で「出外遇貴,居家有是非」、家にいるより外のほうがよいとされます。天機星は動きをつかさどるので、遷移宮では外に出たり環境を変えたりするのに向いています。巨門星と同宮(卯酉)なら動いてこそ吉、天梁星と同宮(辰戌)なら外に出て思いどおり、太陰星と同宮(寅申)なら忙しい中で吉です。どれも「動く」ことを強調していて、天機星の人は同じ場所にとどまると考えこみやすく、外に出るとかえって物事がうまく回ります。天機星が遷移宮にあるときも参照してください。
3太陽宜出外發福不耐靜守,太陰同出外忙中吉,巨門勞心,加羊陀火鈴空劫在外心身不清閑。
書き下し太陽は出外して発福するに宜しく、静守に耐えず、太陰同じくすれば出外に忙中吉、巨門は心を労す、羊陀火鈴空劫を加うれば外に在りて心身清閑ならず。
現代語訳太陽星が遷移宮にあると、外に出て福を得るのがよく、家でじっとしていられません。太陰星と同宮なら、外に出て忙しい中で吉です。巨門星と同宮なら気苦労があります。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、外で心も体も休まりません。
- 不耐靜守
- じっとしていられない、家に落ち着いていられないこと。
太陽星は遷移宮で「宜出外發福,不耐靜守」です。太陽星はもともと外へ向かって照らす星なので、遷移宮はいちばん収まりのよい場所です。太陰星と同宮(丑未)なら外で忙しくして吉、巨門星と同宮(寅申)なら気苦労があります。ここでも太陽星の輝度は大事で、廟旺なら外で名が上がり、落陥(亥子)なら外で苦労しても報われにくいとされます。今なら、人前に出る仕事、外回り、出張、海外での仕事に向いています。太陽星が遷移宮にあるときも参照してください。
4武曲鬧忙中進少不宜靜守,貪狼同作巨商,七殺破軍同身心不得靜守,加羊陀火鈴在外招是非。
書き下し武曲は鬧忙の中に進むこと少なく、静守に宜しからず、貪狼同じくすれば巨商と作る、七殺破軍同じくすれば身心静守するを得ず、羊陀火鈴を加うれば外に在りて是非を招く。
現代語訳武曲星が遷移宮にあると、にぎやかで忙しい中で財が入りますが、入りは少なく、家でじっとしているのはよくありません。貪狼星と同宮なら大商人になります。七殺星・破軍星と同宮なら、身も心もじっと落ち着いていられません。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば、外で面倒ごとを招きます。
- 鬧忙中進少
- 言葉が簡略です。おおよそ、にぎやかで忙しい中で財が入るという意味です。「少」は次の句に付けて「少不宜靜守」と読むこともできます。
- 巨商
- 大商人。
武曲星は遷移宮で「鬧忙中進少,不宜靜守」、外で忙しくしても入ってくるものは多くない、と読みます。貪狼星と同宮(丑未)なら「作巨商」で、財の星に欲の星が重なるので、遷移宮では大きな商いをし遠くまで出向く商人になります。七殺星・破軍星と同宮(卯酉・巳亥)なら身も心も落ち着きません。武曲星が遷移宮にあると、命宮の向かいに財の星があるので、家にいるより外のほうが稼ぎやすいと読むことがよくあります。武曲星が遷移宮にあるときも参照してください。
5天同出外遇貴人扶持,巨門同勞心,太陰同辛苦,天梁同貴人見愛,加羊陀火鈴空劫在外少遂志。
書き下し天同は出外に貴人の扶持に遇う、巨門同じくすれば心を労す、太陰同じくすれば辛苦す、天梁同じくすれば貴人に愛さる、羊陀火鈴空劫を加うれば外に在りて志を遂ぐること少なし。
現代語訳天同星が遷移宮にあると、外に出れば貴人の引き立てに会います。巨門星と同宮なら気苦労があります。太陰星と同宮なら苦労します。天梁星と同宮なら貴人に気に入られます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、外では思いどおりになることが少ないです。
- 遂志
- 思いどおりになること、志を遂げること。
天同星は遷移宮で、外に出れば貴人の引き立てに会うとされます。天同星は福の星なので、外では人に好かれ、面倒を見てもらえます。巨門星と同宮(丑未)なら気苦労、太陰星と同宮(子午)なら苦労、天梁星と同宮(寅申)なら貴人に気に入られます。天同星と天梁星が遷移宮にある形は、後世の機月同梁の格局でいう「外に蔭がある」姿です。外で築く人とのつながりが、この人の財産になります。天同星が遷移宮にあるときも参照してください。
6廉貞出外通達近貴,在家日少,貪狼同鬧中立腳,七殺同在外廣招財,天相同動中則吉,加羊陀並三方有凶殺死於外道。
書き下し廉貞は出外に通達して貴に近づき、家に在る日少なし、貪狼同じくすれば鬧中に脚を立つ、七殺同じくすれば外に在りて広く財を招く、天相同じくすれば動中は則ち吉、羊陀を加え並びに三方に凶殺有れば外道に死す。
現代語訳廉貞星が遷移宮にあると、外に出れば物事が順調に運び、貴人に近づき、家にいる日は少ないです。貪狼星と同宮なら、にぎやかで競争の激しい中で足場を築きます。七殺星と同宮なら、外で広く財を招きます。天相星と同宮なら、動いているときは吉です。擎羊星・陀羅星が加わり、しかも三方に凶の煞星があれば、旅先の路上で死にます。
- 死於外道
- よその土地や旅の途中で死ぬこと。
廉貞星は遷移宮で「出外通達近貴,在家日少」です。貪狼星と同宮(巳亥)なら競争の中で足場を築き、七殺星と同宮(丑未)なら外で広く財を招き、天相星と同宮(子午)なら動いてこそ吉です。後半がいちばん重く、羊陀が加わり三方にも凶の煞星があれば「死於外道」とされます。七殺星を問う篇にも「會囚耗於遷移,死於道路」(七殺星の主るところは)とあり、廉貞星の化気は「囚」なので、「囚」が遷移宮にあるのは昔の人がもっとも嫌った組み合わせの一つでした。今この条を読むなら、外出や移動のときの安全に特に気を配りたい配置です。廉貞星が遷移宮にあるときも参照してください。
7天府出外遇貴人扶,持同紫微發福,廉貞武曲鬧中取財作巨商。
書き下し天府は出外に貴人の扶持に遇う、紫微と同じくすれば発福す、廉貞武曲は鬧中に財を取り巨商と作る。
現代語訳天府星が遷移宮にあると、外に出れば貴人の引き立てに会います。紫微星と同宮なら福を得ます。廉貞星・武曲星と同宮なら、にぎやかで競争の激しい中で財を取り、大商人になります。
校勘 「出外遇貴人扶,持同紫微發福」は読点の位置がずれていて、「出外遇貴人扶持,同紫微發福」とすべきところです。
天府星は遷移宮で、外に出れば貴人の引き立てに会い、紫微星と同宮(寅申)なら福を得、廉貞星(辰戌)・武曲星(子午)と同宮なら競争の中で財を取り大商人になるとされます。天府星が遷移宮にあるとき、命宮には必ず七殺星が入ります。七殺星が命宮にあって向かいに天府星がある形で、七殺朝斗などの格局の骨組みです。命宮は突き進み、外には財庫が控えて支えます。外に資源と後ろ盾があるので、よその土地で仕事を広げるのに向いています。天府星が遷移宮にあるときも参照してください。
8太陰入廟出外遇貴發財,陷宮招是非,太陽同極美,太陰同欠寧靜,天同同在廟旺地出外白手生財成家。
書き下し太陰入廟すれば出外に貴に遇いて発財す、陥宮なれば是非を招く、太陽同じくすれば極めて美し、太陰同じくすれば寧静を欠く、天同同じくして廟旺の地に在れば出外に白手にして財を生じ家を成す。
現代語訳太陰星が遷移宮にあると、入廟なら外に出て貴人に会い、財を得ます。落陥の宮なら面倒ごとを招きます。太陽星と同宮なら、とてもよいです。「太陰星と同宮なら」落ち着きに欠けます。天同星と同宮して廟旺の地にあれば、外に出て裸一貫で財を生み、家を興します。
校勘 太陰星の条の中でまた「太陰同欠寧靜」と言っていて、同じ星が重なっています。ほかの宮の書き方から見て、おそらく〈天機同欠寧静〉とすべきところです。
太陰星は入廟なら外に出て貴人に会い財を得、落陥の宮なら面倒ごとを招きます。太陽星と同宮(丑未)ならとてもよく、天同星と同宮して廟旺の地(子)なら外で裸一貫から家を興します。条文の「太陰同欠寧靜」が天機星との同宮の誤りらしいことは校勘のとおりです。天機星と太陰星は寅申で同宮するので、天機星の動きが太陰星の落ち着きを奪う、と読めば筋が通ります。太陰星が遷移宮にある人は、外での人付き合いが細やかでやわらかい傾向があります。太陰星が遷移宮にあるときも参照してください。
9貪狼獨守在外勞碌,鬧中橫進財,廉貞同加四殺,在外艱難,武曲同作巨商,加羊陀火鈴空劫耗殺流年遭兵劫掠。
書き下し貪狼独守すれば外に在りて労碌し、鬧中に横に財を進む、廉貞同じくして四殺を加うれば、外に在りて艱難す、武曲同じくすれば巨商と作る、羊陀火鈴空劫耗殺を加うれば流年に兵の劫掠に遭う。
現代語訳貪狼星が一つだけで遷移宮を守ると、外で苦労して働き、にぎやかで競争の激しい中で思いがけない財が入ります。廉貞星と同宮して四煞が加われば、外で苦しみます。武曲星と同宮なら大商人になります。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星・耗星・煞星が加われば、その流年に兵に略奪されます。
- 橫進財
- 思いがけず、急に入ってくる財。
貪狼星が一つだけで遷移宮を守ると、外で苦労して働き、競争の中で思いがけない財が入るとされます。貪狼星が一つだけで入るのは子・午・寅・申・辰・戌で、向かいにはそれぞれ紫微星・廉貞星・武曲星のどれかが来ます。廉貞星と同宮(巳亥)して四煞が加われば外で苦しみ、武曲星と同宮(丑未)なら大商人で、武曲星の条と同じ言い方です。後半の「流年遭兵劫掠」は、戦乱の時代には現実の危険でした。今なら、外で盗みや詐欺、思わぬ損失に遭うことと読めます。貪狼星が遷移宮にあるときも参照してください。
10巨門出外勞心不安,與人不足多是非,加羊陀火鈴空劫愈甚。
書き下し巨門は出外に心を労して安からず、人と足らず是非多し、羊陀火鈴空劫を加うれば愈(いよいよ)甚だし。
現代語訳巨門星が遷移宮にあると、外に出ると気苦労があって落ち着かず、人とうまくいかず、面倒ごとが多いです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、いっそうひどくなります。
巨門星は遷移宮で「出外勞心不安,與人不足,多是非」です。巨門星の化気は「暗」なので、外での人付き合いに疑いや口論が多くなります。この条は同宮の星を挙げず、簡単な判断が一つあるだけです。巨門星が遷移宮にあると命宮の向かいが巨門星になり、外で誤解されやすい人、あるいは外での一言で人の気を損ねやすい人と読むことがよくあります。日々の暮らしでは、外では言葉を選び、話をはっきりさせ、記録を残しておくと安心です。巨門星が遷移宮にあるときも参照してください。
11天相出外貴人提撕,紫微同吉利,武曲同在外發財,廉貞同加羊陀火鈴招是非小人不足。
書き下し天相は出外に貴人提撕す、紫微同じくすれば吉利、武曲同じくすれば外に在りて発財す、廉貞同じくして羊陀火鈴を加うれば是非を招き小人足らず。
現代語訳天相星が遷移宮にあると、外に出れば貴人が引き立ててくれます。紫微星と同宮なら吉で利があります。武曲星と同宮なら外で財を得ます。廉貞星と同宮して擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば、面倒ごとを招き、つまらない人に不満を持たれます。
- 提撕
- 引き立てること、抜擢すること。
天相星は遷移宮で「出外貴人提撕」、外で引き立てられるとされます。天相星が遷移宮にあるとき、命宮には必ず破軍星が入ります。破軍星が命宮にあって向かいに天相星があるので、破軍星の突進力を、外で天相星が取りなし、保証してくれる形です。紫微星と同宮(辰戌)なら吉で利があり、武曲星と同宮(寅申)なら外で財を得、廉貞星と同宮(子午)して煞星が加われば面倒ごとを招きます。天相星が遷移宮にあるときも参照してください。
12天梁出外近貴貴人成就,天同同福厚,天機同藝術途中走。
書き下し天梁は出外に貴に近づき貴人成就す、天同同じくすれば福厚し、天機同じくすれば芸術もて途中を走る。
現代語訳天梁星が遷移宮にあると、外に出て貴人に近づき、貴人のおかげで事を成し遂げます。天同星と同宮なら福が厚いです。天機星と同宮なら、技芸を身につけて旅の道を走り回ります。
- 藝術
- 昔の意味は技芸や方術で、今の芸術のことではありません。
天梁星は遷移宮で「出外近貴,貴人成就」です。天梁星は蔭の星なので、外では年長者に目をかけてもらえます。天同星と同宮(寅申)なら福が厚く、天機星と同宮(辰戌)なら「藝術途中走」、技芸を携えて外を走り回ります。昔の「藝術」は技芸や方術のことです。諸星の同垣を論じた篇には「天梁加吉坐遷移,臣商高賈」(諸星同垣:天梁星)とあります。天梁星が遷移宮にあるときも参照してください。
13七殺在外日多,在家日少,武曲同動中則吉,廉貞同在外生財,紫微同在外多遂志,加羊陀火鈴空劫又操心不寧或流蕩天涯。
書き下し七殺は外に在る日多く、家に在る日少なし、武曲同じくすれば動中は則ち吉、廉貞同じくすれば外に在りて財を生ず、紫微同じくすれば外に在りて多く志を遂ぐ、羊陀火鈴空劫を加うれば又心を操りて寧からず、或いは天涯に流蕩す。
現代語訳七殺星が遷移宮にあると、外にいる日が多く、家にいる日は少ないです。武曲星と同宮なら、動いているときは吉です。廉貞星と同宮なら外で財を生みます。紫微星と同宮なら、外で多く志を遂げます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、気苦労が絶えず落ち着かないか、天の果てまでさすらいます。
七殺星は遷移宮で「在外日多,在家日少」です。七殺星が遷移宮にあるとき、命宮には必ず天府星が入ります。天府星が命宮にあって七殺星が外にあるので、落ち着いた人が外ではがむしゃらに働く、という形です。武曲星と同宮(卯酉)なら動いてこそ吉、廉貞星と同宮(丑未)なら外で財を生み、紫微星と同宮(巳亥)なら外で多く志を遂げます。煞星が加われば天の果てまでさすらいます。今の働き方に置き換えると、海外赴任、長期の駐在、長い出張が多い暮らしがよくある姿です。七殺星が遷移宮にあるときも参照してください。
14破軍出外勞心不寧,入廟在外崢嶸,加羊陀火鈴,奔馳巧藝走途中,加文昌文曲武曲相會優伶之人。
書き下し破軍は出外に心を労して寧からず、入廟すれば外に在りて崢嶸たり、羊陀火鈴を加うれば、巧芸もて奔馳し途中を走る、文昌文曲武曲を加えて相会すれば優伶の人なり。
現代語訳破軍星が遷移宮にあると、外に出ると気苦労があって落ち着きません。入廟なら外で抜きん出ます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば、手わざを頼りに各地を駆け回り、旅の道で暮らしを立てます。文昌星・文曲星・武曲星が加わって会えば、役者や芸人です。
- 崢嶸
- 山が高くそびえること。抜きん出ることのたとえ。
- 優伶
- 昔、芝居や歌舞を生業にした人。
破軍星は遷移宮で、外に出ると気苦労があって落ち着かず、入廟(子午)なら外で抜きん出るとされます。破軍星が遷移宮にあるとき、命宮には必ず天相星が入ります。羊陀火鈴が加われば「奔馳巧藝走途中」、昌曲・武曲が加われば「優伶之人」、役者や芸人で、昔は卑しい職業とされていました。今それに当たるのは芸能、舞台、巡業、各地を移動する技術職などで、社会的な位置づけはまったく違っています。破軍星が遷移宮にあるときも参照してください。
15文昌出外遇貴發達,小人不足,加羊陀火鈴空劫在外欠安寧。
書き下し文昌は出外に貴に遇いて発達す、小人足らず、羊陀火鈴空劫を加うれば外に在りて安寧を欠く。
現代語訳文昌星が遷移宮にあると、外に出て貴人に会い、身を立てますが、つまらない人には不満を持たれます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、外では安らかさに欠けます。
文昌星は遷移宮で、外で貴人に会って身を立てますが、「小人不足」、ねたむ人もいます。文昌星は文書と名声をつかさどるので、外では名が知られやすく、そのぶんねたまれやすいのです。煞星が加われば外で安らかさに欠けます。外での評判はよいので、同じ立場の人との張り合いや陰口には少し気を配っておくとよい配置です。
16文曲在外近貴,加吉星得財,加羊陀火鈴少遂志。
書き下し文曲は外に在りて貴に近づく、吉星を加うれば財を得、羊陀火鈴を加うれば志を遂ぐること少なし。
現代語訳文曲星が遷移宮にあると、外で貴人に近づきます。吉星が加われば財を得ます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば、思いどおりになることが少ないです。
文曲星は外で貴人に近づき、吉星が加われば財を得、煞星が加われば志を遂げることが少ないとされます。文曲星は弁舌をつかさどるので、遷移宮では、外で話がうまく人付き合いも上手なことを表します。営業や広報、渉外のように、外で人と話す仕事では、文曲星は強みになります。
17左輔動中貴人扶持發福,加羊陀火鈴下人不足多招是非。
書き下し左輔は動中に貴人扶持して発福す、羊陀火鈴を加うれば下人足らず多く是非を招く。
現代語訳左輔星が遷移宮にあると、動いている中で貴人の引き立てがあり、福を得ます。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星が加われば、目下の者が不満を持ち、面倒ごとを多く招きます。
- 下人
- 目下の者、使用人。
左輔星は遷移宮で「動中貴人扶持」、出歩いてこそ貴人に会えるとされます。煞星が加われば「下人不足,多招是非」、目下の者が不満を持ちます。全書の遷移宮での左輔星の条が強調しているのは、動くことと貴人の二つです。今の暮らしに引き寄せると、出かけて、人の集まりに顔を出すほど、人のつながりがそのまま機会になる配置です。
18右弼出外遇貴人扶持發達,不宜靜守,加羊陀火鈴空劫,在外與人有爭競。
書き下し右弼は出外に貴人の扶持に遇いて発達す、静守に宜しからず、羊陀火鈴空劫を加うれば、外に在りて人と争競有り。
現代語訳右弼星が遷移宮にあると、外に出て貴人の引き立てに会い、身を立てます。家でじっとしているのはよくありません。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、外で人と争います。
右弼星は外で貴人の引き立てに会い、「不宜靜守」で、煞星が加われば外で人と争うとされます。左輔星の条とほとんど同じで、家でじっとしているのはよくない、という一言が加わっています。諸星の同垣を論じた篇には「右弼左輔終身福厚」とあり、その注に「在命宮遷移是也」とあって(諸星同垣:魁鉞・左輔・右弼・禄存)、遷移宮は左輔星・右弼星にとって最良の位置の一つとされています。
19祿存出外衣祿遂心,會羊陀火鈴空劫與人多不足意。
書き下し禄存は出外に衣禄心に遂ぐ、羊陀火鈴空劫に会えば人と多く意に足らず。
現代語訳禄存星が遷移宮にあると、外に出れば衣食も俸禄も思いどおりです。擎羊星・陀羅星・火星・鈴星・地空星・地劫星に会えば、人に対して不満が多くなります。
禄存星は遷移宮で「出外衣祿遂心」です。禄存星を問う篇は「居遷移則佳」(禄存星の主るところは)と言い、その歌にも「祿存對向守遷移,三合逢之利祿宜」(同じ篇の歌)とあります。禄存星が遷移宮にあるとき、擎羊星と陀羅星は必ず疾厄宮と奴僕宮にあるので、「會羊陀」は決まっていることになり、条件として効くのはおもに火星・鈴星と空劫です。今の目で見れば、外での稼ぎが安定していて、よその土地で暮らしを築くのに向いた配置です。
20擎羊入廟在外衣祿遂心,加吉星鬧中發財,陷地有成下人多不足。
書き下し擎羊入廟すれば外に在りて衣禄心に遂ぐ、吉星を加うれば鬧中に発財す、陥地なれば成有れども下人多く足らず。
現代語訳擎羊星が遷移宮にあると、入廟なら外で衣食も俸禄も思いどおりです。吉星が加われば、にぎやかで競争の激しい中で財を得ます。落陥の地なら、成し遂げることはあっても、目下の者が多く不満を持ちます。
擎羊星は入廟なら外で衣食が思いどおり、吉星が加われば競争の中で財を得、落陥の地なら成し遂げても目下の者が不満を持つとされます。擎羊星が遷移宮にあると命宮の向かいが刑の星になり、外では人と張り合ったりぶつかったりしやすくなります。擎羊星の廟の地は辰・戌・丑・未です。外での競争には強いので、部下や仕事の相手との関係に気を配っておくとよい配置です。
21陀羅會吉星在外遇貴得財,陷地加羊火鈴星空劫多招是非下人不足。
書き下し陀羅は吉星に会えば外に在りて貴に遇い財を得、陥地にして羊火鈴星空劫を加うれば多く是非を招き下人足らず。
現代語訳陀羅星が遷移宮にあって吉星に会えば、外で貴人に会い財を得ます。落陥の地で擎羊星・火星・鈴星・地空星・地劫星が加われば、面倒ごとを多く招き、目下の者が不満を持ちます。
陀羅星は吉星に会えば外で貴人に会い財を得、落陥の地(寅申巳亥)で煞星が加われば面倒ごとを多く招くとされます。寅申巳亥は天馬星の位置でもあり、陀羅星と天馬星が同宮すると「折足馬」(天馬星の主るところは)で、遷移宮でいちばんはっきり出ます。動きたいのに思うように動けない形です。実際の暮らしでは、外での用事が遅れがちなので、予定にゆとりを持たせておくとよいでしょう。
22火星獨守出外不安,加吉星鬧中進財,加羊陀空劫招是非在外少遂志。
書き下し火星独守すれば出外に安からず、吉星を加うれば鬧中に財を進む、羊陀空劫を加うれば是非を招き外に在りて志を遂ぐること少なし。
現代語訳火星が一つだけで遷移宮を守ると、外に出ても落ち着きません。吉星が加われば、にぎやかで競争の激しい中で財が入ります。擎羊星・陀羅星・地空星・地劫星が加われば、面倒ごとを招き、外では思いどおりになることが少ないです。
火星が一つだけで遷移宮を守ると「出外不安」、吉星が加われば競争の中で財が入り、羊陀空劫が加われば面倒ごとを招くとされます。火星が遷移宮にあると、外では気が短く、動きも速くなります。車の運転や運動、旅行のときは一段と気をつけ、外で話をまとめるときは、ひと呼吸おいてから返事をするとよいでしょう。
23鈴星有吉星同在外吉,加羊火鈴空劫不足招是非。
書き下し鈴星は吉星の同じくする有れば外に在りて吉、羊火鈴空劫を加うれば足らずして是非を招く。
現代語訳鈴星が遷移宮にあって吉星が同宮すれば、外で吉です。擎羊星・火星・地空星・地劫星が加われば、人とうまくいかず、面倒ごとを招きます。
校勘 鈴星の条なのに「加羊火鈴空劫」と言っていて、「鈴」の字がこの条の星と重なっています。おそらく「陀」の誤りか、余計に入った字です。
鈴星は吉星があれば外で吉、煞星が加われば面倒ごとを招くとされます。「鈴」の字が重なっていて、おそらく「陀」であることは校勘のとおりです。鈴星と火星の遷移宮の条はほとんど同じです。今の言葉で言えば、外での重圧を口に出さずにため込み、長く積もると一度にあふれやすいので、外に出ているときこそ息抜きの余地を残しておきたい配置です。
24斗君過度遇吉動中吉,遇凶殺動中有口舌。
書き下し斗君過度して吉に遇えば動中に吉、凶殺に遇えば動中に口舌有り。
現代語訳斗君が遷移宮を通るとき、吉星に遇えば、動いている中で吉です。凶星や煞星に遇えば、動いている中で口論や面倒ごとがあります。
- 斗君
- 流年で正月にあたる宮。ここから流月を数えはじめます。
斗君が遷移宮を通るとき、吉なら動いて吉、凶なら動いて口論があるとされます。短い条で、要は「動く」ことです。流月が遷移宮に来た月に出かけるのがよいかどうかは、その宮の吉凶で見ます。旅行や出張、引っ越しの予定を立てるときは、流月が遷移宮に来ているか、そこに煞星や化忌があるかを参考にすることができます。
底本原文(ウィキソース、一部簡体字)
よくある質問
紫微斗数の遷移宮では何を見ますか?
遷移宮は命宮の向かいにあり、外に出ること、遠くへ行くこと、よその土地での巡り合わせを見ます。外での振る舞いや評価として読まれることもよくあります。『紫微斗数全書』は星ごとに、遷移宮にあるとき外でうまくいくか、貴人に会えるか、外で財を得られるか、動くのがよいかじっとしているのがよいかを書き、羊陀火鈴空劫に会うと是非が多く、落ち着かないとしています。
遷移宮で全書が「出外遇貴」とする星はどれですか?
全書は、左輔・右弼をともなう紫微星、天機星、天同星、天府星、入廟の太陰星、天相星、天梁星、文昌星、右弼星が遷移宮にあると、外に出て貴人の引き立てに会うとしています。廉貞星は「出外通達近貴」、文曲星は「在外近貴」、左輔星は「動中貴人扶持發福」です。
遷移宮に煞星があると全書は何と言っていますか?
全書の多くの条では、羊陀火鈴空劫が加わると「在外多是非」「心身不清閑」「少遂志」で、人と争うことになるとされます。いちばん重いのは廉貞星で、羊陀が加わり三方にも凶の煞星があれば「死於外道」です。貪狼星に羊陀火鈴空劫・耗・殺が加われば、その流年に兵による略奪に遭うとされます。
七殺星が遷移宮にあると全書は何と言っていますか?
原文は七殺星が遷移宮にあると「在外日多,在家日少」としています。武曲星と同宮なら動いてこそ吉、廉貞星と同宮なら外で財を生み、紫微星と同宮なら外で多く志を遂げます。羊陀火鈴空劫が加われば、心が休まらないか、天の果てまでさすらうとされます。
この篇に出てくる主星